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ラヤがラムズデールを抑えてアーセナル正守護神に君臨すべき理由:タイトル挑戦へのラストピースに

7年ぶりにチャンピオンズリーグの舞台へと戻ってきたアーセナルの初陣は、これ以上ないくらいに華々しいものとなった。満員のホームスタジアムで選手全員が躍動し、PSVに4-0で快勝した。

とはいえ、すべてが完璧にいったわけでもない。枠内4本を含む12本のシュートを許している。しかし、そのすべてを守護神ダビド・ラヤがストップ。さらにボックス内からDFラインを指揮し、危険なクロスにも見事に対応。さらに素晴らしいビルドアップで攻撃のスタートを担っている。

夏にブレントフォードから加入したばかりのスペイン代表GKは、開幕直後は出番を待たなければならなかった。しかし直近2試合はアーロン・ラムズデールを抑えて先発し、連続でのクリーンシートに貢献している。仮に24日のトッテナムとのノースロンドンダービーで先発した場合、アーセナルの正守護神は彼になることがほぼ確定するだろう。

確かにラムズデールは、アーセナルがトップ4に復帰するためには不可欠な存在だった。だからこそ、本当にセカンドGKへ降格するとすればフラストレーションが溜まるのは当然だ。しかし次のレベルへ到達するために、ミケル・アルテタは冷酷でなければならない。そしてこの決断は、正しいものと言えるはずだ。

文=ジェームズ・ウェストウッド

  • Raya-Arteta-Man-UtdGetty

    「ローテーションの問題ではない」

    ラヤが初めて先発したエヴァートン戦(1-0)後、アルテタは会見で「就任した3年半で少し後悔もある。そのうちの1つが、これまでの2試合で60分と85分にGKを変えるべきと思ったが、そうしなかったことだ。そうする勇気がなかった」とし、さらに「なぜ(GKを交代)してはいけないんだい? 流れを変えるためにそうしたいならするべきだし、彼らは競争に関係なくプレーしなければならない」と語っている。

    だが、アーセナルのレジェンドであるティエリ・アンリが指摘したように、アルテタが正守護神の交代に踏み切ったのは初めてではないのだ。

    「アルテタが監督であり、彼がラヤをリーグ制覇を狙えるGKと見ている。ベルント・レノを売却したときも、彼はラムズデールをトップ4入りに貢献できるGKと見た。ビッグクラブでプレーする以上、競争が起こるものだ」

    「ローテーションの問題ではないし、アルテタはローテーションを望んでいないだろう。彼はリーグ優勝を狙えるGKを獲得したんだ。そこにローテーションはないし、レノの時も同じだった。彼はラヤをタイトルを目指せるGKと見ているのだと思う」

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  • David Raya - Aaron RamsdaleGETTY

    最高のオールラウンダー

    ラヤは昨季プレミアリーグ最多セーブ(154)を記録し、ブレントフォードをトップハーフに導いた。そのセーブ率は「77%」。対するラムズデールは「68.6%」だった。ラムズデールが残したスタッツも優れており、これだけでは誤解を招くかもしれない。ブレントフォードはアーセナルよりもはるかに多くのシュートを浴びており、それも影響していることは間違いない。

    だが、アルテタが求めるビルドアップ能力に関する数字は圧倒的だ。ラヤは昨季1475本のパスを成功させ、そのうち1047本が前方へのパスだった。これは驚異的な数字である。対するラムズデールは1276本中572本。また、ラヤはラムズデールより600回以上のタッチ数を記録しており、ビルドアップにおいてはるかに大きな影響力があったことを示している。

    アーセナルがエヴァートン戦やPSV戦で、より強力で流動的なチームに見えたのは偶然ではない。ラヤは最高のオールラウンダーなのだ。

  • Aaron Ramsdale David Raya Arsenal 2023-24Getty/GOAL

    ラムズデールの弱点

    アーセナルはラムズデールがNo.1を務めた4試合で3勝1分けと、順調なスタートを切っていた。しかし唯一勝ち点を落としたフラム戦(2-2)、開始1分の失点ではラムズデールのポジショニングの悪さも目立った。87分の2失点目もシュートに対する角度が甘かったとの指摘もある。

    ラムズデールはかねてより、間違ったタイミングでゴールマウスから離れてしまうことが問題だった。彼の最大の弱点は失点に直結する場面も多く、これがイングランド代表の正守護神争いにも影響してしまっている。

    一方のラヤだが、加入会見でも「チームが後方からプレーを開始し、自信を持って相手を支配することが僕が完璧にフィットする方法なんだ」と語るなど、ボール保持に対する圧倒的な自信を持っている。それが守備陣にも波及し、チームが落ち着きを取り戻している。

  • Ramsdale-ArsenalGetty

    ラムズデール移籍の選択肢

    ラムズデールはこれまでの貢献が評価され、2026年までの新契約を結んでいる。しかしそれから半年が経過し、彼のアーセナルでの将来は決して確実とは言えない。ラヤが今後のビッグマッチでもゴールマウス守るのであれば、1月に移籍の道を探さざるを得ないだろう。イングランド代表正守護神を狙うのであれば、レギュラータイムのプレー時間が必要だ。とはいえ、選択肢に事欠かないだろう。

    『デイリー・メール』の報道によると、チェルシーとバイエルン・ミュンヘンが動向を注視しているという。

    おそらく高額な移籍金が必要になるが、チェルシーが動揺することはない。過去1年間で10億ポンドを投じてきたトッド・ベーリーにとって、金は問題にならない。ロベルト・サンチェスは決して満足できるパフォーマンスではなく、移籍すればラムズデールはすぐさまNo.1となれるかもしれない。しかし、アーセナルファンの反発も間違いないだろう。

    一方、37歳マヌエル・ノイアーの長期的な代役を探すバイエルンでも、加入すればそのまま正守護神を任されるはずだ。ラムズデールにとって、どちらの選択肢もプラスになるように見える。

  • Mikel Arteta Arsenal Nottingham Forest 2023-24 Premier LeagueGetty

    ラストピース

    アルテタはこれ以上無冠で終わるわけにはいかない。2019年12月の就任から大きな成長に導いてきたのは大きな称賛に値するが、目に見える形では1度のFAカップ優勝だけだ。昨季も240日近くプレミアリーグ首位にいたが、春の失速で最終的にマンチェスター・シティに敗れている。

    だが、今季は春まで同じような調子を維持できれば、心身ともに昨季よりもタイトルへ挑戦する準備は整っているはずだ。今夏の積極補強により、チームはさらに充実している。デクラン・ライス、カイ・ハヴァーツ、ユリエン・ティンバーの補強は見事だ。

    そして、ラヤはラストピースになる。アルテタはGK部門での改善の余地を認知しており、ワールドクラスのGKが市場に出たタイミングを見逃さなかった。来夏2700万ポンドの買い取りオプションを行使するのは確実で、トッテナム戦の先発にふさわしい。彼がまたも力強いパフォーマンスを披露できれば、ライバルへの強烈なメッセージになる。

    一方でラムズデールは、その能力に疑いの余地はなく、年齢的にも成長するポテンシャルは十分だ。しかし、全盛期をベンチで過ごす意味はない。もちろんトッテナム戦の起用法はアルテタにしかわからないが、前進するアーセナルとともに、彼も前進する時なのかもしれない。