January winners and losers GFXGetty/Goal

冬の移籍市場の勝者と敗者。人員整理に成功したアーセナル、失敗したバルセロナ…

1月の移籍市場が終了した。大型移籍こそ非常に少なかったものの、世界中の興味をそそる移籍は多くあった。

さて、有益な移籍ができたのは誰だったのだろうか。そして、最悪の1月を過ごしたのは…。『Goal』では、冬の移籍ウィンドウでの「勝者」と「敗者」をまとめてみた。

  • Martin Odegaard Arsenal 2020-21Getty

    勝者:アーセナル

    数か月前と比べると、アーセナルはピッチ内外で各段に素晴らしい状態になってきている。

    ミケル・アルテタはここ6週間でチームを上向かせることに成功し、ピッチ外でもここ数週間の移籍交渉はワクワクするものばかりだった。

    1月のウィンドウで最も注目を浴びたのは、メスト・エジルの将来についてだ。アーセナルは元ドイツ代表MFの放出で資金を得ることはできなかったが、エジルの移籍先がフェネルバフチェに落ち着いたことで、エミレーツ・スタジアムで繰り広げられた厄介なサイドストーリーはようやく幕を閉じた。

    エジルと同様チームから外されていたソクラティス・パパスタソプロスもオリンピアコスに移籍することで落ち着いた。シュコドラン・ムスタフィはデッドラインデーにシャルケへの移籍が決定し、セアド・コラシナツとゲルゼンキルヘンで合流。これでアルテタの下で明らかに余剰人員となっていた4人の受け入れ先が確定したことになる。

    ウィリアン・サリバ(→ニース)、ジョー・ウィロック(→ニューカッスル)、エインズリー・メイトランド=ナイルズ(→ウェスト・ブロムウィッチ)の3人も期限付き移籍で放出したことで、膨れ上がったスカッドの人員整理に成功。3人ともシーズン後半から新天地でプレー時間が増えることが期待されている。

    余剰人員の放出によりで得た費用で、アルテタはスカッドの穴埋めをするチャンスを得た。最も注目すべきは、レアル・マドリーから期限付き移籍で獲得したマルティン・ウーデゴールだ。

    このノルウェー代表は昨シーズン、レアル・ソシエダで驚くべき活躍を見せていた。もしアーセナルで同様のクオリティを見せることができれば、シーズン前半から悩みの種であった前線の創造性の問題は過去のものになるかもしれない。

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  • PSG-Tottenham-DeleAlli-202101260900(C)Getty images

    敗者:デレ・アリ

    プレミアリーグの移籍ウィンドウでアーセナルが「勝者」だとすれば、ノースロンドンのライバルの状況は全く逆だ。

    トッテナムは期間中に新加入選手を一人も迎えることができなかった。リーグ戦ここ10試合でたった2勝しか挙げられず、タイトル争いから脱落しつつあるにも関わらずだ。

    今回のウィンドウでの成果にジョゼ・モウリーニョは不満を持っているだろうが、デレ・アリに関してはより大きな苛立ちを抱えているだろう。モウリーニョの下で冷遇され、先発出場は全コンペティションで6試合しかない。

    マウリシオ・ポチェッティーノがパリ・サンジェルマンで新監督に就任したことで、アリがパルク・デ・プランスと連絡を取っていたとしても驚きではなかった。だがスパーズは代わりの選手を獲得できなかったため、移籍の道は断たれてしまった。

    試合のメンバーにすら入れない選手の代わりをなぜ欲しがったのか。誰もが疑問に感じるところだが、この決断によってアリはさらに6か月間ピッチの外で過ごすことになってしまいそうだ。

  • Luka Jovic Eintracht Frankfurt 2021Getty Images

    勝者:ルカ・ヨヴィッチ

    レアル・マドリーで定位置を得られずサンティアゴ・ベルナベウから離れた選手はウーデゴールだけではない。ルカ・ヨヴィッチもマドリーから期限付きで離れた選手の一人だ。

    レアル・マドリーが2019年6月、アイントラハト・フランクフルトに7000万ユーロ(約87億5000万円)を支払い、ヨヴィッチは鳴り物入りでチームに加わった。だが、ブランコスで32試合に出場したものの、記録した得点はわずかに「2」。スペインでの挑戦は明らかな失敗に終わり、多くのマドリディスタを失望させていた。

    23歳のヨヴィッチにはまだ猶予があったはずだが、自身が最高クラスの選手であることを証明するためには、マドリーから一時的に離れた方が有意義な時間を過ごせることは確かだった。

    フランクフルトにとって、2018-19シーズンに27得点を稼ぎだした選手と再び契約することは幸せ以外の何物でもなかった。そして、古巣復帰が実現したというわけだ。

    フランクフルトのユニフォームに袖を通してからヨヴィッチは4試合に出場し、3ゴールをたたき出した。慣れた環境に戻り、すでに復活を遂げたようだ。

    マドリーがつけた価値に見合う選手になれるかどうかは未知数だが、ヨヴィッチとフランクフルトの両者にとって今回のウィンドウが助け船になったことは間違いない。

  • Messi Granada Barcelona Copa del Rey 03022021Getty

    敗者:バルセロナ

    マドリーがローンで選手を放出した一方で、バルセロナは静かな移籍ウィンドウを送っていた。

    ピッチでのパフォーマンスは向上した一方で、ブラウグラナはまだ危機的な状況にある。財政難とリオネル・メッシとの展望が3月の会長選に暗い影を落としているからだ。

    メッシとの契約期間が残り6か月を切ったが、1月にバルセロナを離れるそぶりは全くなさそうだった。しかし、他の高給取りたちを冬に放出することができなかったせいで、アルゼンチンのスターが夏に「クラブに残りたい」と言ったとしても再契約することは財政的に難しくなってしまった。

    加入選手の話題としては、負傷者が相次ぐセンターバックをカバーするために獲得しようとしていたエリック・ガルシアとの契約が、1月に成立する可能性があると期待された。移籍金はおよそ300万ユーロ(約3億7500万円)で合意したと報道されており、ガルシア自身も夏のEUROに向けてスペイン代表監督であるルイス・エンリケにアピールしたいとの思いから、少年時代を過ごしたクラブに手を挙げ、自分の給料は差し置いて加入したいという意思を見せていた。

    だが、この20歳はフリートランスファーでのカンプ・ノウ復帰は夏までお預けに。バルサは新加入選手も迎えられず、クラブ最高の選手を来季残すことができる望みもないまま、シーズン後半を迎えることになってしまった。

  • Demarai Gray Leicester CityGetty Images

    勝者:レヴァークーゼン

    金額に見合う契約ができたクラブといえば、レヴァークーゼン以上に印象に残るウィンドウを過ごしたクラブはヨーロッパ中を探しても数えるほどしかないのではないだろうか。

    セルティックのDFジェレミー・フリンポン、レスター・シティのウインガー、デマライ・グレイ、マンチェスター・ユナイテッドのDFティモシー・フォス=メンサーを合計1800万ユーロ(約22億5000万円)で獲得し、ピーター・ボスのチームはCL出場圏内を狙っていくこととなる。

    中でも、グレイの加入は興味深い。プレミアリーグ優勝経験のあるグレイはまだ24歳。ベストコンディションを維持できれば間違いなくどんな相手でも攻略できる力を持ち合わせている。

    クラブは数多くの優秀なウイングを擁しているだけに、まずはスタメン争いに勝たなければならないが、レスター以降の自身のキャリアを復活させるだけの才能を持っていることは確かだ。

  • Erling Haaland Mohamed Salah Kylian MbappeGetty

    敗者:移籍市場ファン

    1面を飾るほどの大きな移籍が先月いくらかあったものの、今年の冬市場は期待を下回るものであった。

    元々1月は大きな契約を成功させるには難しい時期ではあるが、パンデミックの中で厳しい財政的な現実にフットボール界全体が直面し続けている。そのため今回はこれまで以上にビッグネームの移籍が少なかった。

    ヨーロッパの5大リーグでは今回2億2000万ポンド(約308億円)が動いた。これは昨年夏のウィンドウでチェルシーが注ぎ込んだ資金と同額だ。

    総額は昨年の8億1000万ポンド(約1134億円)と比べて減少。しかも、最も高額な5つの移籍のうち3例はウィンドウが開いた1月1日よりも前に合意に達していたものだ。

    これほど静かな1月であったということは、次の夏は近年で最も大きな動きが見られる可能性が高まったということだ。例えばメッシ、キリアン・ムバッペ、ポール・ポグバ、アーリング・ハーランドといった選手の未来は、6月上旬にはまだはっきりしていないだろう。

    移籍ショーはまたすぐにやってくる。今回の4週間半に比べていくらかサプライズが増えることを期待して、その時が来るのを待つことにしよう。