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ガルナチョ、ホイルンド、メイヌーはマンチェスター・Uに輝かしい未来をもたらす――トップ4フィニッシュの可能性は?

今シーズン、マンチェスター・ユナイテッドのファンには笑っていられない理由が数多くあった。だが、今や、どんなに悲観的なサポーターであっても、ウェストハムに3-0で快勝した試合で、オールド・トラッフォードの広告掲示板の前に並んだアレハンドロ・ガルナチョ、コビー・メイヌー、ラスムス・ホイルンドを見て、ニヤニヤしない人はいないだろう。

この試合、マンチェスター・Uの2点目を決めたガルナチョは、ひとりで、クリスティアーノ・ロナウドの「セレブレーション」を真似してもよかったかもしれないが、ホイルンドとメイヌーが得点したガルナチョに駆け寄った姿は、マンチェスター・Uの輝かしい若い新世代の絆の強さを物語っていた。

この3人は、今シーズンのマンチェスター・Uで最高の試合のひとつだった日曜の試合で、特に素晴らしいプレーを――残念ながら負傷してしまったリサンドロ・マルティネスとともに――見せてくれた。彼らなら赤い悪魔を素晴らしいチームにしてくれると本気で思わせてくれる存在だ。彼らがいるから、エリック・テン・ハーグ監督のチームは、こんなみじめなシーズンでも上位で終われると確信できる。

それより3日前、4-3で勝ったウルブス戦でもホイルンド、メイヌー、ガルナチョは活躍した。11日のアウェイのアストン・ヴィラ戦でもマンチェスター・Uはこの三銃士に注目が集まるだろう。最終的にトップ4に入り、チャンピオンズリーグに復帰するという希望もかなえられるかもしれない。

  • Alejandro Garnacho - Rasmus Hojlund - Kobbie MainooGETTY

    「我々が必要としているもの」

    テン・ハーグ監督は、ユルゲン・クロップ監督や、派手なガッツポーズで喜ぶミケル・アルテタ監督やペップ・グアルディオラ監督のように、喜びを爆発させるタイプではないかもしれない。だが、3人の若者が人生を謳歌している姿を見て、『不思議の国のアリス』に出てくる猫のようにニタニタしないではいられないはずだ。

    「あの写真は多くのことを示していると思う。3人が一緒にいるとき、それこそが、我々がこのようにサッカーをしたいと思う様子であり、あんな風にチャレンジしたいと思う」と、監督は言った。「あの喜び方、あれは好きだ。我々が一体感をもってサッカーをしていることを示している。彼らは試合ごとに成長しているように見えるし、よりうまくなり、より高いレベルに適応していっている。これこそがマンチェスター・ユナイテッドで我々が必要としているものだ」。

    DFに当たってゴールに入ったガルナチョのシュートは、それだけで大きなセレブレーションを巻き起こし、マンチェスター・Uに2点のリードを与えた。アルゼンチン代表のガルナチョは3点目にして最後の得点をホイルンドのアシストから決め、記憶に残るべき日を締めくくった。ホイルンドはスコット・マクトミネイとともにウェストハムのサイドからボールを奪ったのだった。2人のフォワードによる素晴らしいパフォーマンスを称えるのは当然のことだが、メイヌーも同じだ。

    10代のMFメイヌーは、ウルブス戦の97分に見事な決勝点を決めていたが、ウェストハム戦では成熟した大胆なプレーを見せていた。カゼミーロが深く引いて4バックをカバーしていたおかげで、自由に動きまわることができ、マンチェスター・Uのプレーをつかさどっていた。

    「あのゴールは、若い選手たち、とても若い選手たちについて、多くを語っていると言っていいだろう。彼らはプレミアリーグの基準に慣れてきて、それができるようになっている」と、テン・ハーグ監督は言った。

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  • Erik ten Hag Alejandro GarnachoGetty

    冒険心をもってプレーする

    マンチェスター・Uは常に若い選手が大いに成長できるチームである。1950年代から1960年代には「バスビー・ベイブス」と呼ばれる選手たちがいたし、その後の、デビッド・ベッカム、ライアン・ギグス、ポール・スコールズ、ネヴィル兄弟がいた「クラスオブ’92」は有名だ。

    テン・ハーグ監督は最近の若い選手たちの躍進を導くのにうってつけの監督で、アヤックスの監督時代には、マタイス・デ・リフト、フレンキー・デ・ヨング、ドニー・ファン・デ・ベークといった才能ある10代選手を育て、チームをチャンピオンズリーグ決勝まであと少しというところまで導き有名になった。

    当時のアヤックスにはデイリー・ブリントやドゥシャン・タディッチといったベテラン選手もおり、テン・ハーグ監督は、現在のマンチェスター・U最新の黄金世代を最大限活用できるかどうかは、カゼミーロやキャプテンのブルーノ・フェルナンデスらにかかっていることを知っている。

    「我々はチームを構築中だ。若い選手たちと契約し、チャンスを与えている」と付け加えた。「アップダウンがあるのは当然のことで、これをやり遂げなければならない。ベテラン選手たちは若手を助けてくれるだろう。我々には彼らが必要であり、彼らは若い選手たちのプレーを手助けしてくれるだろう」。

    「マンチェスター・ユナイテッドの未来は非常に明るい。このチームには高い可能性がある。チームが一丸となって、冒険心をもって楽しみながらサッカーをしたい」

  • Rasmus Hojlund Alejandro GarnachoGetty

    強い絆を作りあげる

    テン・ハーグが言うところの、ホイルンド、メイヌー、ガルナチョの「一体感」は、今やピッチ上で見られるものであるが、ピッチ外での親しい関係からの産物である。メイヌーとガルナチョは4年近く前からの知り合いで、ストックポート育ちのMFメイヌーは、9歳でマンチェスター・Uのアカデミーに入った。

    ガルナチョがメイヌーとともにマンチェスター・Uのユースの先発に選ばれたのは2020年9月で、2人の絆は、その次のシーズンにFAユース・カップを勝ち進み、優勝したことで強くなった。2人とも、後半のオールド・トラッフォードで行なわれたすべての試合で先発した。モリニュー・スタジアムでメイヌーが決勝点を決めた際には、サブとしてベンチにいたガルナチョが猛スピードでサイドラインを越え、ピッチ上で親友を称えた。

    ホイルンドはアタランタから7,300万ポンド(約137億円)で加入したばかりだが、メイヌーやガルナチョと親しくなるのに時間はかからなかった。「一緒に楽しく時間を過ごしているよ。若手で小さなグループを作って、お互いにおしゃべりをしたりしている。チームの中に他にも若い選手たちがいて、とても良い」と、ウルブス戦での勝利の後、語っている。

    「クラブの新しい時代を作りだせればいいと願っているし、長く一緒にいたいと思っている。良いプレーができれば年齢は関係ないし、いいことだと思う。僕らにはここでやるべきことがある」

    ホイルンドとガルナチョの絆は、ウェストハムを倒した後の試合後のインタビューで、2人がハグする姿からも見受けられた。

  • Rasmus Hojlund Manchester United 2023-24Getty Images

    実力を発揮するホイルンド

    ウェストハム戦、ホイルンドは見事なドリブルからペナルティーエリアに入ってすぐ、決定的なシュートを放った。ギターを弾く真似をしたセレブレーションは、出遅れからようやく檜舞台に立てた若者の喜びを表していた。高額移籍からプレミアリーグでの初得点まで、4か月以上かかったが、ヴィラ戦で試合終了間際に挙げた決勝点と同じくらい価値のあるゴールであった。

    ホイルンドはチャンピオンズリーグで活躍しており、5得点を奪っているが、国内では得点することができず、彼はまだ磨かれていないダイヤモンドであり、若さや経験不足にも関わらずマンチェスター・Uの攻撃陣をリードする役割を与えるのは重荷なのではないかと思われていた。

    ホイルンドは、ケガが長引いているアントニー・マルシャルのバックアップとしては活躍できていない。センターフォワードとしてでは楽しくプレーできず、そのポジションではむしろ成果がでないことは、マーカス・ラッシュフォードによって明らかにされていた。

    実際、直近でマンチェスター・Uが負けたノッティンガム・フォレスト戦では、ホイルンドは体調不良でプレーできず、彼に依存するのは不健全であることを示していた。ラッシュフォードの体調が安定して復帰したことで、ピッチ外での軽率な行動さえなければ、ホイルンドの定着に役立っているが、ガルナチョとの強い結びつきのほうが、より可能性を感じさせる。

    「僕は常に自分を信じている。調子が出始めてきたところだ」と、ホイルンドは言う。「1得点できれば、2得点できる。少し勢いがついてきたし、チームメイトともうまくいきはじめた。1カ月くらい前、ガルナと僕はピッチの上で話をして、僕らについては得点できていないことばかりが言われるけど、僕らは若いんだって、ガルナは言ってた」

  • Alejandro Garnacho Manchester United 2023-2024Getty

    ガルナチョは才能と信念の持ち主

    4日に21歳の誕生日を迎えたホイルンドは、3人の中では少し年上だ。ガルナチョは7月に20歳になるが、まだ生意気なところもあり、男性バンドに入ってもおかしくないルックスの持ち主だが、他の面では急速に成長している。

    ガルナチョは去年父親になり、コパ・アメリカに出場するアルゼンチン代表に選ばれれば、夏には初めて国際大会でプレーできる。去年の11月にはリオネル・スカローニ監督から声がかからなかったが、早々に招集されるだけの活躍はしている。ピッチ上ではどんどん成熟しているようにも見える。

    去年11月のエヴァ―トン戦では、バイシクル・キックで得点を決め、12月のヴィラではスリリングな復活を遂げた。ボールのないところでの動きは、シーズン前には懸念材料であり、11月までレギュラーの先発メンバーになれなかった理由のひとつでもあったが、目覚ましい成長を遂げている。そのことは、賢い兄のような存在のフェルナンデスも絶賛している。

    ガルナチョは間違った方法で他人を怒らせてしまう可能性があり、アルゼンチン代表で同僚のアンヘル・ディ・マリアから、クリスティアーノ・ロナウドを真似するのはやめろと忠告されているが、その忠告は露骨に無視されている。それでもガルナチョの自信満々さは歓迎されるべきだろう。マンチェスター・Uでプレーすることは恐るべきことであり、才能だけでなく人格も問われる。ガルナチョはその両方をふんだんに持っているようだ。

  • Kobbie Mainoo Manchester United 2023-24Getty

    期待を超えるストーリー

    メイヌーはまだ18歳だが、年齢以上の期待を超えることに慣れている。ユース・カップ優勝チームの最年少メンバーのひとりであり、昨年、カラバオ・カップのチャールトン・アスレティックFCで、わずか17歳でのシニア・デビューを果たした。

    今シーズン、より大きな役割を課せられていたが、レアル・マドリーとのプレシーズン・マッチで足首が変形するケガを負ってしまった。長く試合に出られなかったが、エヴァ―トン戦でプレミアリーグ初の先発を果たすと、素晴らしい活躍を見せた。FAカップでのウィガン戦とニューポート・カウンティ戦の勝利に大いに貢献し、ニューポート・カウンティ戦ではシニア初ゴールを決めた。

    メイヌーは3人の中で最も物静かで控えめに見えるが、ピッチの上でやることすべてに自信をもっていることは間違いない。ウルブスの見事なゴールが躍進の始まりで、チームが彼を最も必要としている時に、自ら違いを生み出せる能力を発揮した。

    「彼は落ち着き払っている。リラックスしてボールを扱っている。ボールの扱いが非常にうまい。サッカーで得点を決められることも示しはじめている」と、ホイルンドはメイヌーについて語った。「彼は完璧な選手だ。とてもリラックスしていて、落ち着いていて、自分の能力をよく知っている。ひとたびピッチに立てば、どうプレーすればいいか、わかっている。チームのみんながわかっているし、他の人たちもそれを目の当たりにしている。彼はトップクラスの選手だ」

    マンチェスター・Uの元ウイング、リー・シャープですら、メイヌーは将来のキャプテン候補だとまで言っており、モリニュー・スタジアムでの見事なゴールは、リオネル・メッシやC・ロナウドを思い起こさせたと語った。

  • Alejandro Garnacho Manchester United Aston Villa Premier League 26122023Getty Images

    若手の台頭

    マンチェスター・Uの若手の台頭は、今シーズンの大事な時期に重なっている。トップ4でのフィニッシュとチャンピオンズリーグへの復帰が危ぶまれていたチームにとって最後のチャンスだ。

    4位のヴィラとの日曜の試合は、マンチェスター・Uにとってシーズンが終わるか、躍進できるかの瀬戸際となるだろう。ウナイ・エメリ監督のチームは、マンチェスター・Uとの勝ち点差が8あり、ホームで勝利すれば、赤い悪魔の、すでに消えかかっているトップ4フィニッシュの希望を事実上終わらせることができる。だが、マンチェスター・Uが勝てば、勝ち点差は5に縮まり、チームの心臓を電気ショックでよみがえらせることが出来るかもしれない。そうなれば、ルートンやフラムというやりやすい相手との対戦を経て、マンチェスター・シティとの大一番に向かうことができる。

    マンチェスター・Uは、5位になっても、イングランドのチームにもうひとつ席が与えられれば、拡張したチャンピオンズリーグに出場することができるかもしれないが、それは、マンチェスター・C、アーセナル、ヴィラ、ブライトン、リヴァプールが今シーズンのチャンピオンズリーグで勝ち進めば、の話である。そもそも、マンチェスター・Uは現在、5位のトッテナムとの勝ち点差が6あり、今後はシーズン終了までのすべての試合が重要になってくる。

    今シーズンのマンチェスター・Uは、なかなか夜明けが訪れなかった。12月にはチェルシーに値千金の勝利をあげながら、ボーンマスには悪夢のような敗戦を喫した。アンフィールドでは根性のあるところを見せながら、ウェストハム戦ではもたもたしたプレーで敗れている。しかし、ホイルンド、ガルナチョ、メイヌーは、3人とも、自身の型を見つけようとしている優秀な選手のように思える。彼らの生き生きとしたパフォーマンスは、チームの他の選手たちを鼓舞する力をもっている。

    マンチェスター・Uは闇雲な賭けに出なくとも、今や、あの3人が、よりよい明日への確実な希望を示している。