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上級のスペクタクル、セリエA最大のサプライズ。6連勝で躍進のウディネーゼが今、面白い

 昨シーズンの王者ミラン、2位インテル、そしてユヴェントスと優勝候補のビッグクラブ勢が揃って出足で躓き、混戦模様となっている今シーズンのセリエA。その中で首位に並ぶナポリ、アタランタとわずか1ポイント差の勝ち点19で3位につけているのがウディネーゼだ。

 ミランと撃ち合いを演じた開幕戦こそ2-4で落としたが、続くサレルニターナ戦を退場者を出しながらも0-0で乗り切った後は、第3節から一気に6連勝。ローマを4-0で一蹴したかと思えば、インテルにも3-1で完勝するなど、格上の強豪すらも圧倒するその躍進ぶりは、セリエA序盤戦最大の驚きと言えるだろう。

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    躍進の歴史

     イタリア北東部のはずれ、スロヴェニアとの国境に近い人口10万人の小都市ウディネに本拠を置くウディネーゼは、「プロヴィンチャーレ」(イタリア語で「地方の」の意)と呼ばれる中小クラブの中でも、長年に渡って健全経営とピッチ上の結果を両立させてきたという点で、アタランタと並ぶ優等生。それを象徴するのは、95-96シーズン以来25年にわたって一度も降格することなくセリエAに定着しているという事実だ。なにしろ、これより長くセリエAに留まっているのはミラン、インテル、ローマ、ラツィオの4チームだけなのだ。

     その25年の間には、何度か歴史に残る大躍進も果たしている。アルベルト・ザッケローニ監督の下でオリヴァー・ビアホフやマルシオ・アモローゾが活躍した90年代末(97-98に3位)、ルチャーノ・スパレッティ監督がマレク・ヤンクロフスキやダヴィデ・ピザーロを擁する攻撃的な3-4-3システムで4位に入りクラブ史上初のCL出場権を勝ち取った04-05、そしてフランチェスコ・グイドリン監督の下でアントニオ・ディ・ナターレやアレクシス・サンチェスがゴールを量産した2010年代前半(10-11から3年連続で5位以内)。

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    低迷

     しかしその後、2010年代半ばから現在までの7~8年は、降格こそしないものの順位表の上半分に顔を出すこともないまま2桁順位の「ぬるま湯ゾーン」に停滞するという、ぱっとしない時期を過ごしてきた。これは、オーナーのポッツォ家が2012年に買収し、ウディネーゼのセカンドチーム的な位置づけとしていたワトフォード(当時イングランド2部)が、2015年にプレミアリーグに昇格したことが大きな理由。セリエAと比べてビジネス規模がずっと大きいプレミアでの生き残りが優先課題となった結果、ウディネーゼは逆にワトフォードのセカンドチーム的な位置づけに格下げされる格好になったのだ。

     プレミアリーグに定着を果たしたワトフォードを横目で見ながら過ごした2010年代後半のウディネーゼは、毎年のように監督が変わるばかりか途中解任までが年中行事になって、セリエA残留以外に何の収穫も残らないという、いつ降格してもおかしくない「並のプロヴィンチャーレ」に成り下がってしまったようにすら見えた。

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    変化

     それが少しとはいえ上向き始めたのは、2020年代に入ってから。19-20シーズン途中にイーゴル・トゥドル監督(現マルセイユ)解任を受けて助監督から内部昇格したルカ・ゴッティが、続く20-21を経て昨シーズン(21-22)途中まで足かけ3シーズン、80試合以上にわたって指揮を執り、クラブの伝統とも言える3-5-2システムを土台とする堅守速攻スタイルで、チームに一定の継続性をもたらした。

     とはいえ、勝つことよりも負けないことを優先した手堅い、しかし受動的でスペクタクル性に欠けるサッカーで、最低限の義務である残留だけは確保できるがその先は見えないという状況が、クラブにとって満足のいくものではなかったことも確かだ。その意味で大きな転換点となったのは、昨シーズン途中の12月、16試合で3勝しかできず降格争いに巻き込まれかけるという状況の中で、ゴッティを解任して助監督だったガブリエーレ・チョッフィ(現ヴェローナ)を内部昇格させるという決断だった。

     「見る者を楽しませる能動的でアグレッシブなサッカーをしたい」と語るチョッフィは、ナウエル・モリーナ(現アトレティコ)、デスティニー・ウドジエという左右のウイングバックが誇る強力な推進力、前線で自らにボールを集めて決定機を演出するジェラール・デウロフェウの優れた戦術眼を活かした、縦志向の強いスピードに乗った攻撃で、チームに新たな活力をもたらした。

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    ソッティル体制へ

     昨シーズンの成績は、ゴッティ体制下の16試合が3勝7分6敗(勝ち点16)だったのに対し、チョッフィの下で戦った22試合は8勝7分7敗(勝ち点31)。最終順位こそ14位から12位と同じ2桁台前半に留まったが、得点は1試合平均1.31から1.81へ、失点は同1.69から0.95へと大きく改善、内容の向上は誰の目にも明らかだった。

     しかしそのチョッフィは、クラブが提示した1年の契約延長という条件に同意せず、2年契約を提示したヴェローナのオファーを受諾してウディネを去る。その後任として今夏迎えられたのが、これがセリエA初挑戦となるアンドレア・ソッティル監督だった。

     かつて屈強なCBとしてウディネーゼで4年間(1999年から2003年まで)プレーしたこともあるソッティルは、引退後の11-12に監督としての道を歩み始めてから11年間、セリエC、セリエBという下部リーグでキャリアを重ねてきた。20-21シーズン途中から率いたセリエBのアスコリでは、前年残留回避がやっとだったチームを続く昨シーズンに6位まで躍進させるという手腕を見せて、ウディネーゼの目に留まったというわけだ。

    「ウディネーゼは本当に率いてみたかったチームのひとつ。現役時代にここでプレーしたというだけでなく、私がやりたいサッカーにぴったりの戦力が揃っている。優れた運動能力を持ち高いインテンシティを保てる、しかもクオリティも備えた選手たちだ」

     就任会見でそう語ったソッティル監督は、3-5-2という構造は維持しながらも、グラウンダーのパスを縦へ縦へとスペースにつないで前進し、敵陣深くに5人、6人、時には7人を送り込んで一気にフィニッシュする、スピードとダイナミズムに富んだ攻撃を武器とする、昨シーズンよりもさらにフィジカルでアグレッシブなチームへとウディネーゼを進化させた。

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    多士済々

     基本布陣は、ゴッティ監督時代からの中堅、ベテランにここ2シーズンに加わった若手がミックスされた、バランスの取れた顔ぶれ。鋭い飛び出しを得意とするGKシルヴェストリの前を固める3バックは、高い攻撃性能も備えたブラジル人ベカオ、今シーズン新加入したスロヴェニア代表の大型CBビジョル、スピードと闘争心を備えたアルゼンチン代表N・ペレスという構成。3人揃って高いテクニックを備え、ビルドアップはもちろん思い切った敵陣への攻め上がりでも攻撃に貢献する。

     中盤はアンカーとして最終ラインをプロテクトするバランサータイプのウォラス、ダイナミックなボールハンターのマケンゴという強靭なフィジカルを備えた2人の守備的MFと、縦の攻め上がりを武器とするテクニカルな新戦力ロヴリッチが中央で逆三角形を作る。サイドを縦に長くカバーするウイングバックは、右に本来テクニカルな攻撃的MFであるベテランのペレイラ、左には爆発的なスピードを武器とする19歳のU-21イタリア代表ウドジエという、タイプの異なる2人。ウドジエは、今夏トッテナムが1800万ユーロで保有権を買取り、レンタルという形でウディネに留まったイタリア期待のタレントだ。

     そして前線は、かつてバルセロナで超絶ドリブラーとして神童扱いを受けたこともあるデウロフェウ、194cmの巨漢ながら突進力も備えたポルトガル人CFベトの2トップ。デウロフェウはバルセロナからエヴァートン、セビージャ、ワトフォードなどを転々とする中でその輝きを失ったかのように見えたが、ここウディネーゼでウイングではなくセカンドトップとして開眼、前線を幅広く動き回ってパスを引き出し、そこからの仕掛けと創造性溢れるラストパスで数多くの決定機を作り出すセリエA屈指のチャンスクリエーターへと変貌を遂げている。

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    コンセプト

     ここまで8試合の平均ボール支配率47.8%が示す通り、ポゼッションで主導権を握って相手を自陣に押し込め、攻め立てるタイプのチームではない。守備も、アグレッシブなハイプレスで激しく相手に襲いかかるというよりは、コンパクトな陣形を保ってのミドルプレス、時にはロープレスで(最終ラインは相手によって異なる高さに設定される)相手の攻撃を受け止め、守備ブロックの中に入ってきたボールを激しく争って奪う形が多い。しかし、そうしてボールを奪った瞬間から始まるカウンターアタックは、文字通りのスペクタクルだ。

      相手と状況に応じて5+3あるいは4+4の、縦横両方向にコンパクトな2ラインが敷かれる守備ブロックの前方では、ベト、デウロフェウという2トップが攻め残ってポジティブトランジション(守→攻の切り替え)に備えている。とりわけデウロフェウはピッチ上の状況を俯瞰の視点で読み取る優れた戦術眼を備えており、味方がボールを奪うと見るや巧妙な動きでマークを外してスペースに飛び出してボールを引き出すと、力強いドリブルで前方のスペースを突き進む。それに合わせて周囲の味方も4人、5人が一斉にスタートを切り、怒濤のように敵陣に殺到していく。ローマから奪った3点目、4点目のゴール、インテル戦の開始直後、6人を敵ゴール前に送り込んだ速攻などは、その典型というべき場面だろう。

     ソッティル監督はこう言う。「私のチームが持つべき主要な特徴はインテンシティと縦への志向性だ。ボールを持ったら一気にゴールに向かわなければならない。攻撃の基本となるコンセプトは、スペースをアタックすること。それによって相手を押し下げ間延びさせ、多くの人数をボールのラインよりも前に送り込む。ボールを失ったらすぐに奪回し、間髪を入れず縦に攻撃を展開する」。

     もちろんウディネーゼは、カウンターアタックだけのチームではない。自陣からのビルドアップにおいても、強い縦指向で前方のスペースを絶え間なくアタックするスピードあふれる攻撃を見せる。高いテクニックを備えた3バックによるパス回しで敵のプレッシャーを誘い、そこからサイドに展開すると、ウイングバック、インサイドハーフ、さらには前線のデウロフェウがボールサイドに流れてきて数的優位を作り、素早くスペースにパスをつないで前進するというのが基本的な形。

     右WBのペレイラは、元々攻撃的MFが本職ということもあって、しばしば中央に入り込んで組み立てに参加し、そのまま2ライン間に進出していくことも少なくない。興味深いのは、それによってがら空きになった右の大外レーンには、3バックの右CBベカオがSBのように攻め上がり、敵のSBに対してしばしば数的優位を作り出すこと。「スペースをアタックして相手を押し下げ、多くの人数を敵陣に送り込む」というソッティル監督のコンセプトを地でいく動きである。

     攻撃の組み立てはこの右サイドからが多く、ペレイラ、デウロフェウというチームで最も高いクオリティを備えた2人の連携でペナルティエリア角手前からゴールに向かって仕掛け、それに合わせて3人、4人、さらには5人目までがゴール前に殺到していく。

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    デウロフェウの存在

     この攻撃の最終局面最大のみどころは、ほとんどの決定機に絡んでくるデウロフェウのプレー。ボールに絡んでいれば、エリア内の状況を的確に読み取って味方をフリーにする絶好のラストパスを送り込み、ボールから離れていればゴール前のここというポイントを見極め、オフ・ザ・ボールで入り込んでパスを呼び込む。

    「僕は成熟したと思う。監督やチームメイトが何を求めているかを理解して、チームのためにプレーできるようになった。経験を通して獲得したクオリティだ。この10年で僕は大きく変わった。大事なのは、チームメイトや監督が何を求めているかを知ること、そして何よりサッカーを理解すること。10年前にサイドでプレーしていたジェラールは、まずボールを受けてそれから何をするか考えていた。でも今のジェラールはパスを受ける前から何をすべきかわかっている」

     昨シーズンの終わり、伊DAZNのインタビューで語ったこの言葉は、そのままの形でピッチ上に表現されている。昨シーズンは13得点5アシストとキャリアハイを更新する数字を記録し、今シーズンはここまで8試合でまだ得点はゼロだが早くも6アシスト。ゴールがないのはシュートの精度がいまひとつという元々抱える限界による部分が大きいが、シュート数27本(枠内6本)、ドリブル試行数と成功数(23/11)、シュートチャンス創出数(43)など、ラスト30m攻略にかかわる数値はいずれもチームでダントツ。かつての「単機能ドリブラー」とは別人のような成熟を果たしたデウロフェウのプレーを観賞するためだけでも、ウディネーゼの試合を見る価値は十分にある。もちろん、怒濤のカウンターアタックもまたそれにも劣らぬスペクタクルだ。

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    サプライズ

     他のチームとはレベルが明らかに違うインテンシティと爆発力で、ミラン、インテル、ローマといった格上の強豪とも互角以上に渡り合うウディネーゼが、今シーズン序盤のセリエAで最も興味深いサプライズなのは間違いない。折しもこの週末の第9節(日本時間日曜午後10時)は、アグレッシブなマンツーマンのデュエルを武器に、近年のセリエAのみならずCL、ELでヨーロッパの舞台も席巻してきたジャン・ピエロ・ガスペリーニ監督のアタランタをホームに迎えてのガチンコ勝負が控えている。ウディネーゼ対アタランタがセリエAの首位攻防戦になるというのはそうそうないことだけに、ぜひとも見届けたい一戦と言えるだろう。

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