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ルヴァンカップ8強チームの現在地 | 実力者獲得の神戸、好調の横浜FM&浦和、川崎Fはここが“踏ん張りどころ”

  • 夏の中断期間後の激突

     JリーグYBCルヴァンカップは、プライムステージ準々決勝の第1戦が8月3日、第2戦が同10日に開催。セレッソ大阪と川崎フロンターレ、サンフレッチェ広島と横浜F・マリノス、ヴィッセル神戸とアビスパ福岡、名古屋グランパスと浦和レッズが準決勝進出を争う。

     夏の明治安田生命J1リーグ中断中に補強に動いたクラブもあれば、チームの熟成にフォーカスしたクラブもあり、シーズン仕切り直しとなるこのタイミング。各クラブの取り組みの成果にも注目が集まるルヴァン杯準々決勝に向けて、現状を整理した。【文=林遼平】

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  • 20220803_Levain_Satoki_UEJO(C)Getty images

    セレッソ大阪

    [チーム状況]

     昨年のファイナリストが目指すのは頂点だけだ。名古屋グランパスと対峙した決勝は0-2で敗戦。その悔しさを晴らすべく挑んでいる今年のルヴァン杯は、グループステージを2位通過すると、プレーオフを勝ち進み、プライムステージへと進出した。

     昨季途中から指揮する小菊昭雄監督の下、チームはこれまで以上にハードワークを徹底。前線からのプレッシングで相手のミスを誘えば、守備から攻撃への移行がスムーズで、スピード感ある攻撃を繰り出していける。7月は公式戦4勝2分と好調を維持。リーグ戦では4位に浮上と、まさに勢いに乗っている。

     また、直近7試合連続で途中出場の選手が得点を奪うなど、どこからでも得点を奪えるのが今季の強み。過密日程の中、選手起用の難しさがあるルヴァン杯だが、どんな選手を起用してもチームの力を引き出せるはずだ。

    [注目選手:上門知樹]

     そういった意味でも鍵を握るのは上門知樹だ。ここまでのルヴァン杯ではプレーオフを含め、最多の7試合に出場。得点は一つだけだったが、どのタイミングで試合に出てもチームにスイッチを入れることができるのを証明した。直近のリーグ戦でも得点を奪っているだけに、ここからさらなる活躍に期待したい。

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    川崎フロンターレ

    [チーム状況]

     AFCチャンピオンズリーグ(ACL)と天皇杯に敗退し、残すタイトルが2つとなった川崎Fとしては、ルヴァン杯は何としても優勝までたどり着かなければいけない大会だ。

     ただ、直近のチーム状況は芳しくない。前半戦こそ勝負強い戦いを披露できていたが、中盤戦に入り新型コロナウイルスの影響もあってなかなかメンバーが揃わず。チームとしてもプレッシングがなかなかハマらないことで、相手にスムーズにボールを運ばれるなど、攻守に相手を圧倒できるような戦いを見せることができていない。

     J1第17節の北海道コンサドーレ札幌戦からポゼッションサッカーの復調に一役買っていた大島僚太も再び負傷。ジェジエウや登里享平といった怪我人が戻ってきたとはいえ、厳しい状況が続いていることは否めない。ここでひと踏ん張りできるかが注目される。

    [注目選手:脇坂泰斗]

     今大会を勝ち進んでいく上でキーマンとなるのは、先日のEAFF E-1サッカー選手権大会にも出場した日本代表の脇坂泰斗だ。大島が負傷した中、インサイドハーフに入る脇坂にかかる期待は大きい。チームの攻撃を循環させるだけでなく、勝利に導く結果をいかに残せるか。リーグ戦ではいまだ2ゴール。目に見える数字が欲しい。

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    横浜F・マリノス

    [チーム状況]

     今季、リーグ23試合を消化時点で首位を走る横浜FMが目指すのは、2001年以来のルヴァン杯制覇だ。2018年には決勝進出を果たしたが、その時は湘南ベルマーレに敗れて準優勝。それから指揮官交代などありながらチームとして大きく成熟した今季、タイトルを狙う準備は整った。

     最近の横浜FMには隙がない。選手一人ひとりが的確な立ち位置を取り、ハイラインをキープしながら高いポゼッションを維持しつつ、敵陣にあるスペースをことごとく突いていく。速攻、遅攻、中央攻撃、サイド攻撃と満遍なく繰り出すことができ、なおかつボールを奪われた後の攻守の切り替えも早く、相手に攻撃のチャンスを与えない。過密日程でもローテーションを繰り返してきたことで、途中から出る選手も特徴を発揮でき、チームとしての練度はかなり高いものがあると言っていいだろう。リーグ戦では9試合連続複数得点を記録。圧倒的な攻撃力はまさに脅威だ。

    [注目選手:岩田智輝]

     攻守のキーマンとなるのは岩田智輝。中盤の底に入る選手は、守備面だけでなく、技術力の高いパスで攻撃にもテンポを与えることができる。日本代表にも選ばれ、さらに責任と覚悟の意識を持ち、チームをもう一つ上のレベルへと押し上げる。

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    サンフレッチェ広島

    [チーム状況]

     ドイツ人指揮官であるミヒャエル・スキッベ監督の下、リーグトップクラスと言っていいほどのハイプレスとショートカウンターで勝利を積み重ねてきているのが今季の広島だ。ルヴァン杯ではグループ首位通過を果たすと、プレーオフでも札幌を相手に完勝。勢いそのままにプライムステージに挑む。

     チームとしては序盤戦こそ新たな戦術に慣れるのに時間がかかったが、中盤戦以降は猛烈なプレッシングが機能。ひとたびスイッチが入ると、連動したプレッシングで相手に襲い掛かり、奪っては素早いショートカウンターやロングカウンターを発動させてゴールを奪い切る。このスタイルにマッチした満田誠や藤井智也、森島司といった選手たちが一気にブレイク。ここ最近はプレッシングを研究され、かわされた背後を突かれる場面こそ増えているが、再び修正しながらさらに強靭なチームを作ろうとしている。

    [注目選手:森島司]

     キーマンは先日の日本代表にも選出された森島司。3バックシステムの2列目に入る森島は、スピード感ある攻撃の中でも一瞬のアイディアで変化を付けることができる。J1第23節・FC東京戦の強烈なミドルに象徴されるように、ゴールから離れていても怖い選手だけに、チームの攻撃をどれだけけん引できるか注目だ。

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    ヴィッセル神戸

    [チーム状況]

     シーズン前こそ大きな注目を集めたが、今季はここまで期待を裏切るパフォーマンスを続けている。ここまで指揮官を二人交代。なかなかチームとしての形を作ることができないまま、リーグ戦でも17位と低迷しており、ここからどれだけチーム状況を改善していけるかがポイントになる。

     ただ、復調の兆しが出てきているのも間違いない。吉田孝行監督が就任して以降、攻守の役割が整理され、徐々にプレッシングやポゼッションの形も浸透。一人ひとりの特徴も発揮しやすい環境が整ってきており、第23節の柏レイソル戦こそ敗れたが、その前まで5試合負けなしという結果を手にすることができた。

     あとはもっと連動した攻撃を繰り出すことができれば、より多くのゴールが生まれてくることだろう。今夏には小林祐希や飯野七聖といった実力者を獲得。彼らがチームにフィットしてくれば、ルヴァン杯の制覇も不可能ではない。

    [注目選手:大迫勇也]

     神戸の攻撃をけん引するのは大迫勇也だ。11月のカタールW杯へ向け、コンディションを上げている男は、7月に入ってゴールを量産。ここぞでの勝負強さを発揮してチームに勝ち点をもたらしている。カップ戦では一つのゴールが大きな意味を持つ。エースのゴールに期待したい。

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    アビスパ福岡

    [チーム状況]

     グループステージを2位通過し、鹿島アントラーズとのプレーオフをアウェイゴールの差で勝利し福岡が、2016以来の決勝トーナメントに挑む。ここまでの最高成績はベスト8。一歩一歩、前に進むことで、初のタイトル獲得を目指していく。

     昨季8位と躍進した福岡は、今季も長谷部茂利監督の下で手堅いサッカーを志向。対戦相手をしっかり分析した上で、守備からリズムを作り、素早い攻撃で敵陣を攻略していく。特に攻撃から守備への切り替えが早く、ゴール前に壁を築くことで、ここまでの失点数はリーグ最少。序盤戦こそ勝ち切れない試合が続いたが、少しずつ勝星を重ねて現在は10位と中位を維持している。

     そんな福岡だが鍵となるのは攻撃力だ。得点数の「17」はリーグ最少。期待されたルキアンがここまで3ゴールとインパクトを残すことができていないだけに、この状況を打開するアタッカーの活躍が必須となるのは間違いない。

    [注目選手:山岸祐也]

     注目はチーム内得点王となる6得点を奪っている山岸祐也。スピード感ある抜け出しとゴール前の嗅覚を生かして得点を量産するストライカーは、プレーオフでもチームに勝利をもたらす2ゴールを奪取した。プライムステージでもその勝負強さを発揮することで、福岡をさらに上へと導きたい。

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    名古屋グランパス

    [チーム状況]

     昨季まで堅実で守備の硬いチームだった名古屋は、今季から長谷川健太監督を招聘し、堅実かつ攻撃でも違いを作れるチームへと変化を目指した。

     ただ、リーグ戦22試合を終えて「18」という総得点はワースト2位の数字。守備の堅実さは光っているが、攻撃面ではいまひとつ成果が出ているとは言い切れない。それは成績にも反映されており、1試合消化が少ないとはいえ、現在降格圏となる17位の神戸と勝点差5の12位。リーグ戦は直近7試合で1勝と苦しい状況が続いている。

     この現状を打破するため、今夏には積極的な補強を敢行。前線にはブラジル人ストライカーのレオナルド、快速アタッカーの永井謙佑を獲得し、中盤には実績のある永木亮太や重廣卓也を加えた。短い期間でどれだけフィットできるかがポイントになるが、力のある選手の加入でどんな変化が起こるか注目したい。

    [注目選手:相馬勇紀]

     キーマンとなるのはE-1選手権で大会MVPと得点王に輝いた相馬勇紀。代表帰りとなった第23節の札幌戦でも強烈なミドルでゴールを襲うなど、WBながらゴールに向かう積極的な姿勢を見せた。こういった姿勢がチームを押し上げていくだけに、大胆な仕掛けを見せることでゴールをこじ開けていきたい。

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    浦和レッズ

    [チーム状況]

     リーグ戦直近8試合負けなしで3連勝。ここ4試合はすべて複数得点と、現在リーグで最も好調なチームの一つと言っていいのが浦和だ。就任2年目となるリカルド・ロドリゲス監督の下、今季は指揮官の考えるポジショナルサッカーに見合う選手たちを積極的に補強。序盤戦はなかなか結果が出なかったが、目の前の結果に下を向くことなくやり続けたことが現在の勢いに繋がっている。

     特に大きいのは、今季の浦和の懸念材料となっていた点取り屋の不在が解決されつつあること。キャスパー・ユンカーがケガがちなこともあってなかなか前線が決まらなかったが、最近は松尾佑介が存在感を発揮。得点を奪うだけでなく、前線からの守備でも変化を生み、チームに好影響を与えている。今夏の目玉だったブライアン・リンセンが負傷したことは痛手だが、そういった状況の中でいろいろなオプションが生まれていることはポジティブに考えていいだろう。

    [注目選手:岩尾憲]

     そんな浦和において攻守の要となるのは岩尾憲だ。チームの心臓であり、ピッチ上の指揮官は、ビルドアップの中心となり攻撃を円滑化。加えて、自分自身が前線に出ていくことで、先日は初ゴールを記録した。彼がカップ戦を勝ち上がっていく上で重要な存在となることは間違いない。

  • ルヴァンカップ準々決勝 日程

    8月3日(水)/第1戦

    • 19:00 セレッソ大阪 vs 川崎フロンターレ(ヨドコウ)
    • 19:00 サンフレッチェ広島 vs 横浜F・マリノス(Eスタ)
    • 19:00 ヴィッセル神戸 vs アビスパ福岡(ノエスタ)
    • 19:30 名古屋グランパス vs 浦和レッズ(豊田ス)

    8月10日(水)/第2戦

    • 19:00 川崎フロンターレ vs セレッソ大阪(等々力)
    • 19:00 横浜F・マリノス vs サンフレッチェ広島(ニッパツ)
    • 19:00 アビスパ福岡 vs ヴィッセル神戸(ベススタ)
    • 19:30 浦和レッズ vs 名古屋グランパス(埼玉)
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