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【J1序盤評価】サプライズor期待外れの注目クラブは? W杯後のシーズンでスタートダッシュに明暗

 2023シーズンの明治安田生命J1リーグは3月の代表活動による中断期間までに5試合を消化。まだまだ最序盤ではあるが、ここまででサプライズを巻き起こしているクラブと、反対に期待値を下回っているクラブを分析する。【文=河治良幸】

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    サプライズ | 京都サンガF.C.

    今季成績:3勝2敗、8得点4失点(5位)

     曺貴裁監督のチームというとハードワークや攻守のトランジションの早さが注目されるが、注目したいのはその中身だ。試合ごとの走行距離やスプリント回数を見ると、他会場の試合よりも両チームのデータを引き上げつつ、京都の方が上回っている。要は“走り合い”という自分たちの得意な土壌に相手を引っ張り込んでいるとも言えるが、ただ走るだけでなく、4-1-2-3というシステムの中でも位置関係、距離感、ブーストのかけどころを選手たちが共有し、タイトな守備とダイナミックな攻撃に結びつけている。一方で90分のオーガナイズとして4-1-2-3にこだわりはなく、試合経過や相手の出方を見ながら3-4-2-1、守備局面では5-4-1とも取れる形で逃げ切ることもできる。J2時代を含めて3年目、チームの完成度の高さを感じる。

     J1残留という基準で見れば、5試合で勝点9というのは大きなアドバンテージだが、それで満足する段階にはない。十分に上位を狙えるポテンシャルはある。ただ、やはり夏場や連戦になってくると、走行距離やスプリント回数と言ったデータ面は確実に下がってくる。基本的な戦い方を帰る必要はないが、エネルギーの出しどころを明確にして、うまく時間を使うところは使うといった割り切りも大事になる。またルヴァン杯のFC東京戦では0-5の大敗を喫しており、選手層はやはり問われてきそうだ。

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    サプライズ | 名古屋グランパス

    今季成績:3勝1分け1敗、5得点1失点(2位)

     長谷川健太監督が2年目となり、いわゆる“ケンタ・サッカー”の色合いが明確になってきた。昨シーズンは3バックの強度を頼りに、攻撃面でビルドアップの立ち位置を模索したりもしていたが、今シーズンは開幕から良い意味でシンプルさが出て、名古屋の選手たちが持っている縦の推進力を押し出しており、永井謙佑やマテウス、新戦力のキャスパー・ユンカーといった選手が鋭さを発揮して、相手ディフェンスの脅威になっている。

     基本的には縦に速いスタイルでありながら、左右のアウトサイドに森下龍矢、内田宅哉、甲田英將、和泉竜司の誰が入るのかで左右のバランスやメカニズムが変わってくるので、相手側も対応しにくい。ここから優勝争いを続けていくための課題はさらに対策をされた状況で、一本調子になってしまわないかどうか。それでもマテウスのような選手が個人でゴールをこじ開けるようなシーンもあるかもしれないが、「個人を生かすこと」が「個人に頼ること」にすり替わってはいけない。

     もっともディフェンス陣に複数の大きなケガなどのアクシデントがない限り、守備が崩壊することは考えにくいので、最低でも終盤までACL争いから脱落する不安は大きくないと見る。

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    期待外れ | 柏レイソル

    今季成績:2分け3敗、3得点8失点(17位)

     ネルシーニョ体制の5年目ということで、チームとしては成熟期にあるはずだが、主力選手のスペシャリティを生かしていく監督だけに、主力選手が入れ替わっていくことでの影響が他クラブより大きいのは確かだ。そうした中でも昨シーズンはマテウス・サヴィオ、細谷真大など攻撃のタレントをうまく生かす形で前半戦は一時、首位争いを演じるなど躍進した。後半に失速した原因をチームなりに分析した結果として、マテウス・サヴィオや細谷が封じられた時に、攻撃が手詰まりになってしまう傾向を問題視して、山田康太、仙頭啓矢と言ったクリエイティブなMFを獲得し、前の人数を増やすために4バックを導入した。

     しかし、守備のバランスをうまく見出せないまま、第4節の名古屋戦から3バックに戻し、より守備的な役割を担える高嶺朋樹と椎橋慧也を同時起用するなど、何とか調整を図っているが、今のところ結果につながっていない。新外国人の長身FWフロートやU-20アジアカップから復帰したDF田中隼人など、ここから新たな主力になりうるタレントもおり、システムと選手起用のより良いマッチングは見出せるかもしれない。ただ、チームは生き物なのでケガ人だったり疲労、バイオリズムの変化は起きうる。いかなる状況でもブレないベースがやや薄いというのは終盤戦まで安定感を欠く原因になるかもしれない。

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    期待外れ | セレッソ大阪

    今季成績:1勝2分け2敗、6得点7失点(13位)

     5試合を終えて勝ち点5というのは昨シーズン5位のチームとしては不本意だろう。ただ、もともと堅実な守備をベースに、小菊昭雄監督が5枚の交代カードを活用して、粘り強く接戦を制してきたチームだ。今シーズンも開幕から敗戦も含めてすべて1点差か同点で、1勝1分のルヴァン杯も同じ状況になっている。つまりは最後に勝ちを拾えるか拾えないかという差が出ているに過ぎないが、5試合7失点というのはC大阪のコンセプトからすると失点数が多いのは確かだ。

     第3節の浦和レッズ戦はオウンゴールで先制しながら逆転を許した試合だが、終盤は失点の他にも押し込まれるシーンが目立ち、2人のセンターバックもペナルティエリア内に吸収されてしまっていた。逆転を許した失点の場面ではディフレクションの不運があったとはいえ、ボックス内でGKを除いて3対4になってしまっている。スタートから、できるだけ高い位置で守備をしてショートカウンターを狙う姿勢は昨シーズンより上がっているが、後半30分以降だけで4失点という耐久力不足に影響しているかもしれない。

     ただ、ここまで思うような結果が出ていないからといって、スタートから自陣に引きこもるような戦い方は停滞を生みかねない。基本的な姿勢は変えずに守備の強度が下がり、相手がフレッシュなアタッカーを繰り出してくる終盤にどう向き合っていくか。今シーズンも引き続き、勝っても負けても接戦続きが予想される中で、勝ちに持ってくるための方策は見出していけるはず。あとは北野颯太のような若手の爆発的な成長も結果を左右しうる。

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    その他の注目クラブは?

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     カタール・ワールドカップ(W杯)後のシーズンということで、次回の北中米W杯に向けた新たなサイクルのスタートであり、選手のモチベーションを高める要因になっているのは確かだろう。また日本代表だけでなく、改めて世界の基準を目の当たりにした選手や監督が、もっとJリーグを挙げて強度を上げていく必要があると感じたはずだ。

     そうした影響も感じられる中で、まだ5試合で何か結論付けることはできないが、やはり主力選手のコンディションが良く、自分達がやりたいことをストレートに出せているチームは上位に来ている。

     ヴィッセル神戸はエースの大迫勇也が好調なことに加えて新戦力の齊藤未月がフィットし、22歳の泉柊椰や23歳の佐々木大樹が成長を見せていることで、チーム内の競争力が高まっている。菊地流帆など守備的なポジションにケガ人もいるが、大迫をはじめ武藤嘉紀、山口蛍、酒井高徳という中核の“カルテット”が堅調なら、このまま上位争いに残っていく期待はある。ただ、浦和のように神戸の強みを分析して対策を立ててくるチームには苦戦しており、特に4月は上位対決が続くので、シーズンの今後に向けた資金石になりそうだ。

     昇格組のアルビレックス新潟も比較的、自分達がやりたいことをストレートに発揮できているが、やはり浦和との試合では攻撃の中心を担う伊藤涼太郎を完全に消されて、持ち前の躍動感が鳴りを潜めてしまった。そうした意味でも、筆者が今最も注目しているのは浦和で、ポーランド人のマチェイ・スコルジャ監督が、チームの基本スタイルと相手の対策のバランス感覚を備えているので、チームを成長させながら、並行的に勝ち点も伸ばしていける可能性は高い。

     横浜F・マリノスは決してチーム状態が絶好調とは言い難いが、それでも5試合で勝ち点10を獲得しているのはさすがで、上島拓巳や井上健太と言った新戦力も試合を重ねながらケヴィン・マスカット監督の要求を満たせるようになれば、ここから上昇気流になる原動力になりうる。ジュビロ磐田から期限付き移籍で杉本健勇を引き抜いたことも、前線のオプションを増やすだけでなく、エースのアンデルソン・ロペスはもちろん、ルヴァン杯のサガン鳥栖戦で移籍後の初得点を記録した植中朝日にも良い刺激を与えるかもしれない。

     一方で複数のポジションにケガ人が出るなど、台所事情の苦しいスタートとなった川崎フロンターレだが、そうした状況だからこそチャンスを得ている選手たちが、結果としてチームの競争力を引き上げることになれば、後々にはプラスに働く期待もある。ただ、キャンプから仕込んでいたという可変性の高いビルドアップなどはまだ攻撃に確かなプラスをもたらしているとは言い難い。従来の4-3-3に必ずしも向かないタレントもいる中で、柔軟なシステムチェンジも浮上の鍵になってくるかもしれない。