20220728_Soma_Arai(C)Kenichi Arai

【サッカー日本代表:序列評価】W杯26名枠を争う候補選手たちを整理。「当確」はまだ7名…E-1で猛アピールの相馬勇紀に可能性

  • サバイバルに一区切り

     EAFF E-1サッカー選手権2022決勝大会の3試合を2勝1分けで終えて優勝を手にした日本代表。続く9月にはアメリカ代表、エクアドル代表との親善試合を戦い、11月下旬よりカタール・ワールドカップ(W杯)が開幕する。

     E-1では国内組のアピールに注目が集まったが、どの選手が好印象を残したのだろうか。W杯選手選考に向けたサバイバルに一区切りがついたこのタイミングで、日本代表取材を続けるサッカージャーナリストの河治良幸氏に、W杯予選を戦ったメンバーを含む全体の候補選手の序列を整理してもらった。【取材・文=河治良幸】

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  • 20220728_Tani(C)Kenichi Arai

    GK(3名) ※()内は想定登録人数

    当確:なし
    濃厚:権田修一、シュミット・ダニエル
    有力:川島永嗣、谷晃生
    当落線上:大迫敬介、鈴木彩艶


     森保監督が3人の構成をどう考えるかで、競争の意味合いが変わりうるポジションだ。正GKを争う権田修一とシュミット・ダニエルがリードしており、4度目のW杯を狙う川島永嗣も、いつでもゴールマウスを任せられる信頼感がある。吉田麻也とは違うタイプのメンタルリーダーであり、外すリスクもある。ただ、二人に割って入るにはストラスブールでポジションを掴むことが条件になるだろう。

     3枠目を選ぶ際に、森保監督が年齢や将来性をどこまで考えるかで、谷晃生、大迫敬介、鈴木彩艶の状況も変わりうる。その中でも韓国戦でカバーリング、ビルドアップともに高水準のパフォーマンスで無失点勝利を支えた谷が一歩リードしているが、大迫が広島を優勝争いに押し上げるパフォーマンスを見せたり、鈴木が浦和でポジションを掴む、あるいはAFCチャンピオンズリーグ(ACL)で大活躍するなど“ブレイク”すれば逆転可能な差だ。

  • 20220728_Yoshida(C)Getty images

    DF(8~9名)

    当確:冨安健洋、板倉滉、吉田麻也
    濃厚:酒井宏樹、山根視来、長友佑都
    有力:谷口彰悟、中山雄太
    当落線上:畠中槙之輔、中谷進之介、佐々木翔、小池龍太、伊藤洋輝、植田直通、菅原由勢、橋岡大樹


     基本的には本職でCBとSBを合わせて8人程度か。26人枠ということで、マルチロールでもう一枚加わる可能性もある。

     冨安健洋と板倉滉は順当ならCBのファーストセットになりうるが、キャプテンの吉田麻也も新天地のシャルケで継続的にプレーできれば、前回の6月シリーズよりはるかに良いコンディションで本番に臨める。酒井宏樹も実績、実力ともに本来「当確」だが、ここ最近の代表活動に参加できていないことから、伊東純也との連係なども含めて、再チェックはされるはずだ。山根視来も極めて「当確」に近い「濃厚」だが、韓国戦を欠場したこともあり、韓国戦で活躍した小池龍太や欧州組の菅原由勢、CBもこなせる橋岡大樹などとの競争は改めて求められるかもしれない。

     CBの4人目はE-1選手権でキャプテンを担った谷口彰悟が二歩ぐらいリードしている。ただ、やはり9月のシリーズでアメリカ、エクアドルという身体能力の高いFWを相手にどこまでやれるか。欧州組で対人戦にめっぽう強い植田直通なども、状態次第で逆転の芽が残されている。

     左SBは経験豊富で、右サイドでも計算できる長友佑都が有力だ。左SBには6月シリーズで台頭した伊藤洋輝もいるが、イングランド2部のハダーズフィールドに移籍した中山雄太が新天地でどう経験を積んでいくかで、序列に影響が出るかもしれない。E-1で韓国のアタッカーを封じ、セットプレーから得点を決めた佐々木翔にも十分に食い込む余地はある。

     9枚目があるとするなら、右SBが本職ながらボランチも可能な菅原や小池、CBとSB、3バックならアウトサイドにも対応可能な橋岡にもチャンスがある。

  • 20220728_Mitoma(C)Getty images

    MF(10~11名)

    当確:遠藤航、伊東純也、三笘薫、南野拓実
    濃厚:守田英正、田中碧、鎌田大地、堂安律、原口元気
    有力:久保建英、柴崎岳、旗手怜央、相馬勇紀
    当落線上:藤田譲瑠チマ、岩田智輝、脇坂泰斗、川辺駿、水沼宏太、宮市亮、橋本拳人


     遠藤航を筆頭に“欧州組”ですべて埋まってもおかしくない。今回「当落線上」に挙げた川辺駿のように、6月の招集から外れたものの、所属クラブで存在感を出している“欧州組”もいるほどだ。セルティックに所属する旗手怜央も、シーズン終盤は一時期の勢いがなくなったが、新シーズンで波に乗ってくれば、中盤に加えてウイング、SBもこなせるスーパーマルチとして浮上するだろう。

     しかしながら“国内組”も決して負けていない。E-1で大会MVPに輝いた相馬勇紀を筆頭に中盤の藤田譲瑠チマや岩田智輝、右サイドの水沼宏太、さらに脇坂泰斗もそれぞれの持ち味で存在感を出した。相馬を加えた場合のメリットは個人で仕掛ける選手が増えることで、伊東と三笘をどこかで休ませることもできるし、セットプレーのキッカーとしても重宝されそうだ。藤田、岩田、脇坂、水沼も当落線上のところには乗ってきたか。特に20歳の藤田は爆発力があり、ここから4カ月での伸びしろも期待できるので、一気に序列が覆る可能性もある。

     宮市は韓国戦で負傷交代したのは残念だが、サイドの推進力は伊東や三笘とまた違った鋭さがあり、流れを変えるには最適なキャラクターだ。早期に復帰し、ACLなどでアピールできれば26番目の“ラストピース”として名乗りをあげる可能性も。ただ、少なくとも9月の欧州遠征に招集されないと、そこの枠に滑り込む余地も限りなく小さくなる。

  • 20220728_Furuhashi(C)Getty images

    FW(4~5名)

    当確:なし
    濃厚:古橋亨梧、浅野拓磨
    有力:前田大然、大迫勇也、上田綺世
    当落線上:西村拓真、町野修斗、武藤嘉紀、オナイウ阿道、林大地


     未だ「当確」ラインの選手が存在しないが、最終予選や6月シリーズでも様々な形で起用されてきた古橋亨梧と浅野拓磨は「濃厚」であり、9月の2試合で「当確」に乗せてくる可能性がある。布陣にもよるがスタメン争いということで考えると基本1トップが狙うべきポジションになるため、ドイツ戦、コスタリカ戦、スペイン戦で、森保監督がそれぞれどういうタイプを前線に配置したいかでも変わってくる。

     ターゲットマンとしては大迫勇也が第一人者であることに変わりはないが、やはりしばらく代表活動から遠ざかっていることもあり、もし9月の欧州遠征から外れる、もしくは活躍できないことがあれば、最終メンバー入りに黄色信号が灯る。

     ベルギーのセルクル・ブルッヘに移籍した上田綺世は新天地でいきなりトップ下に起用された。あくまでオプションとしてなら良いが、ずっと続くとストライカーとしての感覚、さらに森保監督の評価にも影響が出るかもしれない。今後、注視して行きたいポイントだ。前田大然は現時点で主力と呼べる立場にないが、絶対的なスピードという武器があるので、今のところ「有力」としているが「濃厚」に近い位置付けにある。もちろん選ばれるだけでなく、主力に食い込むにはさらなるアピールが求められる。

     E-1では怪我で辞退した武藤嘉紀、初招集で3得点という結果を残した町野修斗で明暗が分かれた。西村拓真に関しては4-2−3-1で、点を取りに行く2列目でオプションとして滑り込みの希望がある。またMFの藤田や岩田が選ばれた場合、“トリコロールの三連星”のような形で、ユニットとして招集される可能性も。E-1で3得点の町野は現時点で「当落線上」だが、9月の欧州遠征に招集されたら大きくチャンスが広がる。

  • 20220728_Japan(C)Ayano Miura

    総括

     E-1に招集されたメンバーのうち、フルメンバーの常連はキャプテンを任された谷口彰悟と山根視来だけで、唯一、前回W杯の経験があった武藤嘉紀も負傷により不参加となった状況で、“川崎勢”の二人を除けば最終メンバーに一人も入らないことも考えられた。E-1で韓国を破り優勝を飾った現在も、その可能性があるのは変わらないが、MVPの相馬を筆頭にカタールへの狭き門をこじ開けていくためのアピールにはなったはず。

     実際、韓国戦後に森保監督は「欧州遠征に連れて行きたい選手がいるか? 」と聞かれて「います」と答えている。まだレギュラーが確立されていないFWも町野、西村というタイプの違うアタッカーが台頭した。左右のサイドアタッカーを含めた前線は従来の23人から26人に増枠する中で、ジョーカーも含めて滑り込むチャンスが大きいポジションだ。

     ただ、やはり得点は調子に左右されるとこもあり、代表活動で結果を出すだけでなく、日頃からゴールやアシストといった目に見える結果を出し続けることも評価や序列を上げるための重要なポイントだ。欧州組も含めて、現時点で「有力」以上にいる選手以外は9月の欧州遠征で招集されなかったら、最終メンバーに入る可能性は無きに等しいだろう。何人招集されるか不明だが、ここから残り1カ月でいかにアピールし、まずはそこのリストに入れるか。代表候補の選手たちにとって、キャリアを左右する大事な期間になる。

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