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サッカー日本代表、W杯選考サバイバル | E-1招集の国内組が勝負するポジションを整理。新戦力の台頭が期待されるのは?

  • E-1は国内組のみが招集

     11月に開幕を迎えるカタール・ワールドカップ(W杯)では、登録メンバー数が従来の「23」から「26」に拡大されることが正式に決定。欧州組が大部分を占めてきた日本代表だが、6月のキリンチャレンジカップ、キリンカップを終え、7月のEAFF E-1サッカー選手権2022決勝大会には国内組のみが招集されている。

     7月以降は本大会までに9月の親善試合2試合が予定されているが、新たな国内組が登録メンバー入りを果たすためにはE-1選手権での活躍が必須だ。今回の招集メンバー間だけではなく欧州組も含めての競争という観点から、代表取材を継続するジャーナリストの河治良幸氏に、選考サバイバルの見どころを整理してもらった。

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    GK

    E-1招集選手:大迫敬介、谷晃生、鈴木彩艶


     3人の構成を見ると、東京五輪に参加した谷晃生、大迫敬介、鈴木彩艶で占められている。W杯は単純に実力で上から1、2、3と決めるのではなく、年齢バランスなども考えて3人が選ばれると想定するならば、常連メンバーの権田修一、シュミット・ダニエル、川島永嗣から2人、今回のE-1メンバーから1人という構成になるかもしれない。

     現状は谷晃生と大迫敬介がリードしているが、浦和レッズでは控えながら、U-23アジアカップでパリ五輪世代の守護神としてポテンシャルの高さを見せた鈴木彩艶が、一気に序列を覆す可能性もある。大迫が京都戦から中1日となる香港戦は谷か鈴木になりそうだが、1試合ずつチャンスをもらうのか、固定されるのかも注目点だ。

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    DF

    E-1招集選手:佐々木翔、谷口彰悟、山根視来、畠中槙之輔、小池龍太、中谷進之介、荒木隼人、大南拓磨、杉岡大暉


     CBは冨安健洋、板倉滉、そしてドイツ1部のシャルケに加入したキャプテン吉田麻也が、よほどコンディションに問題がない限り、最終メンバーに選ばれるだろう。本職はあと1枚と考えられるが、森保一監督がE-1のキャプテンとして指名する谷口彰悟が、現状の本命だろう。そこに久々の代表復帰となった畠中槙之輔、中谷進之介、荒木隼人が挑む。

     右のSBとCBをマルチにこなす大南拓磨、左で杉岡大暉や佐々木翔も選ばれている構成を考えると、どこかで3バックをテストする可能性もある。ただ、サンフレッチェ広島勢が京都サンガF.C.戦から中1日で香港戦に出る可能性は低く、準備の時間も無いため、最初は4バックのセンターに谷口と畠中あるいは中谷が起用されるはず。ピークは3試合目の韓国戦だろう。香港戦と中国戦でほぼ満遍なくチャンスを与えられ、韓国戦でスタメンに起用された選手が、サバイバルへのアピールチャンスを与えられたと考えられる。

     SBは国内組でもW杯経験者の酒井宏樹と長友佑都が“免除”された。彼らも当確ではないが、コンディションが良好なら最終メンバーに選ばれる可能性が高い選手たちだ。欧州組では中山雄太や伊藤洋輝も有力だが、確定的ではない。そんな中でE-1メンバーがいかにアピールできるか。右は常連の山根視来に小池龍太、CBもこなす大南拓磨が挑む構図だ。ただ、小池は左SBもこなせるので、左右のマルチという意味では長友にも挑む形になる。左は佐々木翔とコパ・アメリカ以来のA代表となる杉岡大暉だが、状況によっては小池の左もありそうだ。

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    MF

    E-1招集選手:水沼宏太、宮市亮、橋本拳人、野津田岳人、脇坂泰斗、相馬勇紀、岩田智輝、森島司、満田誠、藤田譲瑠チマ


     DFと違いボランチも二列目も、正直に言うと国内組に“空き”は無い。それどころか欧州組でも所属クラブで活躍しながら、入り込めていない選手がいるぐらいだ。つまり、今回のE-1メンバーは圧倒的なパフォーマンスを見せて隙間をこじ開けていく必要がある。

     4-3-3をベースとする場合、アンカーは橋本拳人と岩田智輝が香港戦のスタメンを競うことになるが、実質1日の戦術練習で森保監督がどう見極めるか。広島勢の野津田岳人はやはり中国戦からの登場となるが、左足のFKという強力な武器があるので、セットプレーのキッカーというアピール要素もある。藤田譲瑠チマもアンカーは可能だが、メンバーのバランスを考えると、やはりインサイドハーフの候補になりそうだ。

     脇坂泰斗と森島司はインサイドハーフのスペシャリストとして起用されそうだが、二人とも右足のFKやCKはフルメンバーに負けないものがある。右足のキッカーと言えば、水沼宏太も有力だ。彼の場合は専ら右ウイングで考えられるはずだが、伊東純也や堂安律ともタイプが違うので、今大会のパフォーマンス次第では欧州組に食い込むことも可能だ。

     満田誠は左のインサイドハーフと左ウイングの両睨みか。相馬勇紀は左だが、名古屋と同じ3-4-3を採用する場合のウイングバックとしてインパクトを残せれば、効果的なオプションとして最終メンバー割り込みの可能性も広がる。宮市亮は左右のサイドをこなせるが、ドイツやスペインを驚かせるという意味で、前田大然にも引けを取らない彼のスピードが加わるのは非常に魅力だ。

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    FW

    E-1招集選手:武藤嘉紀、西村拓真、町野修斗、細谷真大


     前回W杯のエースだった大迫勇也が今回は招集を見送られたが、古橋亨梧や前田大然、浅野拓磨、ベルギーのサークル・ブルッヘ移籍で合意した上田綺世など、欧州組の主力を含めても、国内組に割り込む余地があるポジションだ。森保監督も「MF/FW」としているように、明確な区分けは難しいが、センターフォワードをやる可能性のある選手、町野修斗と細谷真大に加えて西村拓真、武藤嘉紀を想定する。

     センターフォワードの候補としては町野と細谷の一騎討ちか。“領域展開”をキャッチフレーズとする町野は前からの守備、ポストプレーをこなしながらボックス内でJ1で8得点の決定力を発揮できる。大迫、上田の競争が予想されるセンターフォワードに町野が割って入ると面白いし、何より対戦相手のマークが薄いという強みもある。

     細谷、西村、武藤はサイドや2列目など、複数ポジションでの起用が想定される。ただし、細谷の推進力はできるだけ中央で生かしたいところだ。武藤は2トップがベストだが、ヴィッセル神戸でも1トップで幅を広げている。前回W杯の経験者では唯一のE-1選出で、豊富な国際経験はアドバンテージになる。

     西村は「MF/FW」という表記がふさわしい選手。前線やアウトサイドもできるが、やはり4-2-3-1を採用した場合のトップ下で見たい選手だ。走行距離14kmを計測する運動量とボックス内の決定力を兼ね備えたアタッカーは異色であり、“26番目”の候補にふさわしい。

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    過去にもE-1からW杯へ

     極論を言えば、GKとSBをのぞくと、欧州組だけで26人の枠が埋まってしまってもおかしくない。しかも、今回は酒井宏樹、長友佑都、大迫勇也の前回W杯組が対象外となったことを踏まえても、E-1組に用意されたカタールW杯の枠など存在しないと考えるべきだ。しかし、それをこじ開けていく権利があることも確かだ。23人から26人に増えることで、勝つためのオプションを加える余地もあり、そこに国内組も割り込む余地があるのではないか。

     振り返ると2013年に韓国で行われた東アジアカップ(現E-1)で、アルベルト・ザッケローニ元監督の率いる日本が優勝。アジア最終予選まで“メンバー固定”が取り沙汰された“ザックジャパン”だったが、東アジアカップ組から初招集5人を含む8人が、ブラジルW杯の最終メンバーに選ばれた。

     大会からW杯までの期間も欧州組の人数も違うので、最終予選に絡んでいなかった国内組にはより厳しい競争になるが、やはりチームとして優勝することが大きなアピールになることは間違いない。そのうえで、個としても欧州組を中心とした常連メンバーに無い特長を発揮できた選手が、まずは9月の欧州遠征に招集されるはず。チームとして勝つ前提で、ゴールに直結するプレーはもちろん、セットプレーのキッカー、一対一の強さなど、シンプルに武器を発揮してもらいたい。

    文=河治良幸

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