フットボールでは選手育成に様々な道がある。ラミン・ヤマルやエステヴァン・ウィリアンのように類まれな才能を持ち、若くしてトップレベルで活躍する選手がいれば、完全に開花するまでに時間は必要な選手も。例を挙げるとすれば、ニック・ヴォルテマーデやエマニュエル・エメガなど、多くの選手は後者だ。本稿では過去の「Hidden Gems FC」で取り上げた選手を含め、これからさらに伸びそうな選手に注目し、ピックアップした。
文=Jordi Tomosowa、Lars Capiau
Getty/GOALフットボールでは選手育成に様々な道がある。ラミン・ヤマルやエステヴァン・ウィリアンのように類まれな才能を持ち、若くしてトップレベルで活躍する選手がいれば、完全に開花するまでに時間は必要な選手も。例を挙げるとすれば、ニック・ヴォルテマーデやエマニュエル・エメガなど、多くの選手は後者だ。本稿では過去の「Hidden Gems FC」で取り上げた選手を含め、これからさらに伸びそうな選手に注目し、ピックアップした。
文=Jordi Tomosowa、Lars Capiau
Getty/GOAL2021年10月のモナコデビューから着実に成長。だが、ここ18カ月でリーグ・アンの注目株としても注目されるようになると、フランス代表のディディエ・デシャン監督も熱視線を注ぎ、ワールドカップ予選で4キャップを積み上げている。ウインガーとしても、攻撃的MFとしても優れたプレーメーカーで、ドリブル能力や、把握能力も兼備。まだ23歳だが、卓越したフットボールIQの持ち主でもあり、パスワークとオフ・ザボール時のプレーにも秀でている。 ジネディーヌ・ジダン、アンドレス・イニエスタ、メスト・エジルといった選手がプレーモデルで、今やそうしたヒーローたちを追随する存在へとなりつつある。
Getty/GOAL8歳でのニューカッスル入りから10年後にトップチームデビュー。その後、ブリストル・ローヴァーズへのローン移籍を挟みなら、スキルを磨き、エディ・ハウ監督が率いるニューカッスルでサイドや攻撃的MFとして、目を引くカメオ出演を重ねていくようになった。そうして次のステップに進む準備が整い始めたなか、クラブは財政事情で売却を迫られ、ノッティンガム・フォレストに4000万ポンドで放出。額に懐疑的な声もあったが、パフォーマンスをもってしてすぐに黙らせ、2025年欧州選手権での優勝を経て、今やA代表入りも遂げた。現在はマンチェスター・ユナイテッドやチェルシーが目を光らせる模様だ。
Getty/GOALコソボで戦争が激化するなか、祖国を逃れてベルリンに定住した父のもとに生まれ、フットボーラーとしての才能を開花させたアスラニ。14歳でウニオン・ベルリンアカデミーの門を叩いてからはバイエルンの興味もあったが、2020年にホッフェンハイム移籍を決断した。以降はドイツ4部リーグのリザーブチームが主戦場で、オーストリア・ウィーンへのローン移籍も失敗に。だが、2024-25シーズンに状況が一変し、2部リーグのSVエルバースベルクへのローン移籍でブレイクし、33試合で18得点9アシストを記録した。ホッフェンハイムに戻ってからはその自信を胸に6ゴールをマーク中。改めてバイエルンの関心話が浮かぶ。
Getty/GOAL今季は言葉では表現できないほど素晴らしいシーズンとなっている。当初過ごしたアタランタのU-23チームで3部リーグでのプレーが続くはずだったが、本人も夢にも思わなかったことだろうが、それからわずか5カ月後にチャンピオンズリーグのパリ・サンジェルマン戦でトップチームのスタメンに抜擢。左サイドバックとしても、サイドアタッカーとしてもプレーできる上、テクニックに秀でた優れた左利きのプレーヤーで、足元の巧みさもある。アタランタで完全なレギュラー定着まで時間こそかかるものの、ピッチに入れば必ずと言っていいほどチームにインパクトを残せるのが魅力だ。
Getty/GOALボローニャでジョシュア・ザークツィーの名があっという間に忘れ去られるほど、セリエAに来てからいうもの、大きな話題をさらう。18歳で少年時代から過ごしたベレス・サルスフィエルドでトップチームデビューを果たしてから、2024年1月に1300万ユーロでボローニャに移籍。最初の半年間こそ慣らし期間だったが、そこからボローニャで存在感を放ち、2024-25シーズン以降は全大会で15得点9アシストを記録している。この活躍ぶりからインテルの興味も噂に。ルックスとプレースタイルの両方からラウタロ・マルティネスと比較されがちだ。
Getty/GOALカナダ、クロアチア、アメリカ、マルタなどのクラブを渡り歩いたキャリアからして、まさに不屈の精神の体現者と呼ぶにふさわしい。母親にフットボーラーとしての夢を諦めるよう説得されたりもしたが、22歳の今、ついにトップレベルで頭角を現し始めている。エストニアで結果を出した後、ダヴィドはユニオン=サン・ジロワーズに移籍すると、ストライカーとしての地位を確立。ロメル・ルカクを彷彿とさせるプレーでリーグ優勝にも大きく貢献した。これまで通算66試合で35ゴール。今季はチャンピオンズリーグでもゴールを決めるなど、その実力を発揮している。自国でのワールドカップが迫るカナダ代表にも呼ばれるようになるなか、去就を巡ってもプレミアリーグ勢の関心が取り沙汰されているところだ。
Getty/GOALブリュッセルのフットボール場でスキルを磨き、13歳になるまで主にフットサルをプレー。「常に狭いスペースでプレーすることでより賢く走る術を身につけたよ。それが間違いなく役に立っているね」と本人が語るように、コントロール力とスペース把握力は目を見張るものがある。まだ15歳だったなか、アンデルレヒトのアカデミーを離れ、ヘンクに映った当時は裏切り者のレッテルを貼られたが、この移籍がトップチームでの出場機会に繋がり、わずか18歳で2022年ワールドカップのモロッコ代表に選出。それ以降もリーグで最も才能ある若手として頭角を現し、2000万ポンドでレスター・シティに移籍した。プレミアリーグではうまくいかなかったが、シュトゥットガルトで飛躍。ここまで20試合で10得点1アシストの活躍を披露している。
Getty/GOALベルギーのジュピラー・プロリーグには金を出してでも観たくなるような選手が数多くいて。この選手もその1人。右サイドバックが主戦場で、抜群のスタミナと驚異的な推進力をもってしてのパワフルさがあり、今季も4得点2アシストというゴール関与がそれが物語る。モロッコ代表に招集歴があるものの、国際Aマッチ出場はまだ。同じポジションにはアクラフ・ハキミやヌサイル・マズラウィらがライバルとしてそびえ立つだけに、アントワープ生まれということでベルギー代表でのプレー選択もありうる。
Getty/GOAL17歳だった当時はカメルーンの小規模な育成チーム、ギャラクティックFCのユース部門でプレーしたエヨン。その頃はヤヤ・トゥーレに憧れを持つMFだったが、5年が経ち、ヨーロッパで最も注目されるストライカーの1人と化す。2022年にスペインへと渡り、カディスとビジャレアルでプレーした後、8月に昇格組のレバンテに加入。それからというもの、本格的にブレイクを遂げ、ラ・リーガ12試合で5ゴールを記録している。そこまで特筆すべき数字ではないが、苦戦続きのチーム下で際立った活躍を披露しており、バルセロナがロベルト・レヴァンドフスキの後釜として獲得を検討しているとの報道もある。
Getty/GOAL2024年7月、レンジャーズはモロッコ人若手FWハムザ・イガマネの潜在能力に賭けた。母国のASファールから加入した彼は、それまで1シーズンで2桁得点を記録したことがなかった。 しかしこの若者は、スコットランドでのデビューシーズンに全大会通算16得点を挙げる活躍でアイブロックスの注目を集め、リールが今シーズン開幕前に1150万ユーロで獲得する決め手となった。
イガマネは夢のようなスタートを切り、ロリアン戦でデビュー戦2得点を記録。その後17試合でさらに7得点を重ねている。スピードと技術に長けたストライカーである彼は、一度走り出すとボールを奪い返すのが困難だ。23歳のモロッコ代表選手が近い将来、再び移籍する運命にあることは、すでに必然のように思われる。
Getty/GOALアトレティック・クルブほど、地域のアマチュアチームと深く結びついたプロクラブは世界に存在しない。バスク地方出身の選手のみという純血主義を重んじ、160以上の地元チームと正式な提携関係を築いている。しかしながら、才能ある若手だからといって、すぐにスカウトされるわけでもなく、この選手が入団したのは2021年。幼なじみのウナイ・ゴメスがクラブのアカデミーに入団してから約10年後のことだったが、2024年のトップチームデビューからは地位を確立している。スペインの6番らしい守備的MFで、ゲームインテリジェンスと活動量により、エルネスト・バルベルデ監督の信頼を鷲掴み。最近ではチェルシーやアストン・ヴィラらの関心話とも紐づいている。
Getty/GOALこの夏にサウジアラビアからオファーが舞い込んだ際は移籍を悩んだが、母の説得もあり、2023年に少年時代から過ごしたマルメを退団して以来、プレーし続けるフランクフルトにとどまったラーション。10代の頃にチェルシー移籍を断り、900万ユーロでフランクフルト行きを選択したが、この額はスウェーデンリーグ史上最高として記憶される。ドイツに渡ってからはその移籍金に見合うだけの力を発揮しており、昨夏にまことしやかながらレアル・マドリーの関心話も。ウーゴ・エキティケらをはじめ、数多くの選手が大金を残してフランクフルトを離れていったが、ラーションは次の選手になるかもしれない。
Getty/GOALリヨンアカデミー出身だが、トップチームでのプレー経験がなく、フランスの下部リーグを転々とした後、アンジェでリーグ・アンの舞台に。そこでの18カ月間で特に目立った活躍こそなかったが、レンヌが2025年夏に1350万ユーロで獲得すると、その投資が身を結び、古巣相手にデビュー戦でゴールを決めるなど、今季のここまで16試合で9得点3アシストを記録している。今季のリーグ・アンにおいて、この選手よりもゴールに関与しているのはメイソン・グリーンウッドのみだ。
Getty/GOALクラブ・ブルッヘにとって、これからの6カ月間が大きな試練となりそうだ。複数の主力選手がヨーロッパのトップクラブから関心を集めているからだ。このナイジェリア代表選手も例外ではなく、2022年に加入して以来、ブルッヘの中盤に欠かせない存在と化す。ボールタッチに優れ、視野も広く、デュエルにも積極的な完成度の高い守備的MFだ。ジュピラーリーグを離れる準備が整った24歳はプレミアリーグとブンデスリーガのクラブが関心を示すと噂されている。
Getty/GOALオニェディカ同様、こちらも2022年にクラブ・ブルッヘ入りしたが、今季がクラブでのラストシーズンになると予想される。まだ21歳だが、守備陣に欠かせぬ存在となり、ベルギーですでに100試合以上の出場数を誇る。驚異的なフィジカルの持ち主で、デュエルではほぼ無敵と言えるだろう。また、足元でのボールコントロールも非常に優れている。チェルシー、リヴァプール、パリ・サンジェルマン、ドルトムントといったクラブの関心が囁かれるのも無理ない。
Getty/GOALまだ21歳だが、ポルトガル全土で数カ月前から評価が上昇中だ。父も元選手で、ポルトで84試合に出場。パブロはその才能の遺伝子が受け継ぐ者としての才能を証明しており、育ったブラジルでのデビューを経て、昨季の初めにジル・ヴィセンテにレンタル加入した。23試合で5ゴールにとどまったが、2025年4月のボアヴィスタ戦に出場すると、10分間でハットトリック。その後に買い取りが決まった。最近、負傷で離脱したが、今季もその勢いを続け、ここまでのリーグ戦11試合で8ゴールをマークしている。
Getty/GOALアイルランド代表として伝説的なハットトリックをやってのけたほか、2026年ワールドカップ出場に望みを繋ぐ活躍ぶりで国民的ヒーローと化すパロット。こうした活躍で世界に名を知らしめたが、オランダのファンは23歳の才能をよく深く理解している。AZによってトッテナムから400万ユーロで買われ、移籍初年度から20ゴールを記録。今季も19試合で15ゴールと記録的な勢いだ。クラブレベルでも、代表レベルでも、活躍ぶりからして注目されるのはいくらで移籍するかだ。
Getty/GOAL早くから才能を見抜き、11歳のにテネリフェのアカデミーから獲得したレアル・マドリー。2023年にトップチームの練習に参加し始めた時点で特別な才能の持ち主であるのは誰の目にも明らかだった。トニ・クロースからトップチームに残すべきとの声もあったが、クラブは選手枠の関係から2024年夏に600万ユーロで売却を決断。売却先はコモだった。だが、セスク・ファブレガス監督のもと、ヨーロッパで最もエキサイティングかつクリエイティブに富んだMFとして台頭を遂げ、レアル・マドリーは2026-27シーズン開幕前に900万ユーロで買い戻す見込み。この夏にはトッテナムの動きもあったが、コモにとどまり、その今季もここまで5得点5アシストと活躍中だ。アルゼンチン代表でも居場所を掴みつつある。
Getty/GOAL母国オランダのNECナイメヘン時代から素晴らしい才能の持ち主と評されてきたが、2023-24シーズンは元バルセロナ選手であるヤスパー・シレッセンのサブに。それによって出番が限られたが、強烈なインパクトを残し、ば2025年のU-21欧州選手権でオランダ代表に選出。そこでの活躍がサンダーランドを振り向かせ、NEC史上最高額となる1300万ユーロでの移籍が実現した。イングランドでは今季におけるバーゲン選手として称賛されているところだ。
Getty/GOALエールディビジで25歳になろうとするなかで、欧州の強豪行きがありうる選手がいるとすれば、間違いなく彼だ。2024-25シーズンは時折懸念の声もあったが、ここ数カ月は絶好調。このモロッコ代表選手はフィジカルが強く、ゴール前で冷静さも保てるようになってきている。その結果、今季はすでに11ゴールを記録。さらにアシストも4つとチームプレーヤーとしての評判も高い。10月にはフェイエノールトを相手に見事なハットトリックを達成。国外クラブのスカウト陣も注目したはずだ。だが、彼の目標はまずアフリカネイションズカップでの優勝だ。
Getty/GOALサウサンプトンから放出されたりもしたが、イングランド8部リーグのガーンジーFCで10代の頃に注目を集め、再びチャンスが到来。2023年夏にブリストル・シティから2500万ポンドでボーンマスに加わると、プレミアリーグでの初シーズンこそ怪我で棒に振ったが、着実に印象的な若手MFとして伸び、2025年にU-21イングランド代表でEURO優勝に貢献し、11月にフル代表入りも果たしている。
Getty/GOAL様々なアマチュアチームを渡り歩くなかで、アーセナル、トッテナム、クリスタル・パレス、フラム、ミルウォールなど、多くのロンドンクラブからトライアルのオファーを受けた過去を持つセメンヨ。1年間のブランクもあったが、叔父にもう一度挑戦するよう促されると、スウィンドンのウィルトシャー・スポーツ・アカデミーで最後のチャンスを掴んだ。そこではMFとして50ゴール以上を記録。最終的にブリストル・シティ移籍の扉を開いた。その後も武者修行を繰り返しながら力を発揮する必要があったが、2023年1月にボーンマス移籍が実現。こうしてプレミアリーグで最も危険なアタッカーの1人へと成長を遂げていき、今季のここまで7得点3アシストをマークしている。来年1月にはリヴァプールか、マンチェスター・シティへの移籍話が噂に。両クラブに6500万ポンドの契約解除金を支払う意思があるかどうか注目どころだ。
Getty/GOALまさに今季のエールディヴィジにおける掘り出し物と言えるだろう。このモロッコ代表選手は2月にフェイエノールトに移籍。ル・アーヴルからわずか45万ユーロの移籍金額だった。守備的MFは当初こそ怪我に苦しんだが、今季はスタメンに定着した。守備強度が強く、スタミナも抜群で、常にボールを呼び込める態勢をとる。さらに、技術力の高さもロビン・ファン・ペルシー監督のお眼鏡に適った選手と言える。来夏のフェイエノールトがより高い金額で売却したとしても驚きではない。
Getty/GOALチームとして満足のいくシーズンを過ごせてはないが、攻撃面で大きく貢献するツォリス。2025-26シーズンの折り返し地点に差しかかった現在、すでに全大会で11得点12アシストを記録しており、ノリッジ・シティ時代に慣れ親しんだプレミアリーグ復帰が噂される。PAOKアカデミー出身で、その後はドイツ2部リーグのデュッセルドルフ移籍を経験。そこからブルッヘに600万ユーロで移った。現在3000万ユーロの契約解除金が設定されるといわれ、買い手が見つかれば、ブルッヘは巨額の利益を得ることになる。
Getty/GOAL幼少期は勉強不足で先生や母親を困らせることがよくあったというウォートン。だが、数学とコンピューターサイエンスに関しては勉強せずとも最高の成績を収めたといい、その個性はセントラルMFとして評価を高めるプレミアリーグでのプレーにも表れていそうだ。ポジショニングに優れつつ、パサーとしてのセンスも光るこの選手はブラックバーンで頭角を現した後、2024年1月にパレスへ。その夏のEUROでイングランド代表に初めて呼ばれた。それからの18カ月間、怪我も影響してなかなか代表に定着できなかったが、来夏のワールドカップでプレーできない、あるいはチャンピオンズリーグレベルのクラブに移籍しないとなれば、もはや驚くべきことだ。