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カール・エッタ・エヨン:まさに「隠れた宝石」? リーガ得点ランクでエンバペ、アルバレスに次ぐレバンテスコアラー【Hidden Gems FC パート7】

今季のラ・リーガも得点ランキング上位リストに11試合で13ゴールのキリアン・エンバペをはじめ、お馴染みの顔ぶれがずらり。エンバペの後ろにフリアン・アルバレス、ヴィニシウス・ジュニオール、フェラン・トーレスらが続いているが、そうした有名選手のなかで、ほぼ無名の状態から欧州ビッグクラブも目を光らせ始める存在と化す選手がいる。その選手こそがエヨンだ。まさに「隠れた逸材」と言っていい。

文=ラース・カピアウ

  • 始まり

    エッタ・エヨンはカメルーンのドゥアラ市で育った。この地は若き日のサミュエル・エトーも少年時代を過ごした場所で、17歳だった頃のエヨンも首都ヤウンデの小規模なユースチーム「ガラクティックFC」にて、砂地のピッチでプレーした。

    ヤヤ・トゥーレに憧れて育ったエッタ・エヨンはまだ10代の頃にバルセロナのユニフォームを着た姿で撮った写真が拡散され、話題に。そんな自身もやがてスペインを主戦場とすることになるが、カタルーニャの強豪チームでプレーするほどではなかった。その代わりにカディスのスカウトの目にとまり、19歳で加入。まずアカデミーチームでプレーした後、すぐにリザーブチームに昇格し、そこでフォワードとしての才能を開花させていった。

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  • ブレイクのきっかけ

    エッタ・エヨンがトップチームデビューしたのは2024年1月に行われたラ・リーガのアラベス戦に途中出場したとき。だが、この試合がカディスでの唯一となるトップチームでの出場で、夏に移籍金150万ユーロでビジャレアルに移籍した。その後は再びリザーブチームが主戦場となるが、移籍直後の起こった予期せぬ出来事がエッタ・エヨンのキャリアを変える。

    「ビジャレアルでのラストシーズン、別のストライカーが負傷したんだ。そこで監督が僕を見て『FWでプレーできるか?』と聞き、僕は『やれる。問題ない』と返した」

    『Canal+』でそう振り返ったエッタ・エヨンはその後が物語るように、ビジャレアルBながら30試合で19得点6アシストをマークした。そして、シーズン終盤にはトップチームでの出場機会が巡り、ジローナ戦でラ・リーガ初得点となる劇的な決勝ゴール。サポーターにもその存在を強く印象づけた。

    このゴールを皮切りに2025年夏のプレシーズンで目覚ましい活躍を披露すると、開幕からマルセリーノ・ガルシア・トラル監督がレギュラーに抜擢。エッタ・エヨンはこのチャンスを逃さず、開幕戦でレアル・オビエド相手に得点を決めると、その後も好調を維持し続けた。

  • Karl Etta Eyong Levante 2025-26Getty Images

    その後

    だが、ビジャレアルは今夏マーケット最終日にリヨンからジョージズ・ミカウタゼの獲得で多額を投じたことで、貴重な戦力の一人を売却せざるをえなくなった。そこで、新たに昇格したレバンテは前線補強の好機として手を挙げ、エッタ・エヨンをわずか300万ユーロという破格の移籍金で獲得した。

    エッタ・エヨンは移籍して間もなくフィットしてみせ、レバンテでのデビュー戦から3試合連続でゴール。その後の4試合でも2得点を積み上げ、10月にカメルーン代表として重要なワールドカップ(W杯)予選でいきなりの先発で代表デビューにも漕ぎつけた。

    今季のラ・リーガではここまでエンバペとアルバレスに次ぐ6ゴールを記録。一方で、レバンテは開幕から9試合でわずか2つの勝ち星しか掴めておらず、残留争いを強いられるシーズンとなる様相を様相を呈している。

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  • Getafe CF v Levante UD - LaLiga EA SportsGetty Images Sport

    強み

    エッタ・エヨンは自身のプレースタイルについて、エトーだけでなく、ディディエ・ドログバにも倣ったものと明かしている。相手守備陣の苦し方においても両者に共通点がみられる。エッタ・エヨンは極めて優れた身体能力を誇り、空中戦に強く、驚異的なスピードも武器だ。

    オフ・ザ・ボールの動き出しも特筆すべき点で、的確なポジショニングと相手選手を欺くボディフェイントで常にスペースを作り出せる。さらに、元MFとあって守備的な役割もいとわず、今後により攻撃的なスタイルのチームへと移籍した際にも大いに武器となるはずだ。

  • 今後は?

    レバンテのテクニカルディレクター(TD)であるエクトル・ロダスはエッタ・エヨンに対する他クラブからの関心を認める。『Las Provincias』で「彼のような選手はそう多くなく、その資質と年齢ゆえに注目を集めている。我々は彼を楽しみ、この調子を維持してくれたらと願うべきで、そうすれば残留という目標に近づける」と話している。

    エッタ・エヨンの契約においては3000万ユーロの解除条項が含まれ、バルセロナ、レアル・マドリー、マンチェスター・ユナイテッド、アーセナルなどが次なる移籍先候補として取り沙汰されている。エッタ・エヨンがレアル・マドリー移籍となれば、同じくドゥアラ出身の父親を持つエンバペと同じチームメイトになる。9月のレバンテvsレアル・マドリー(レアル・マドリーが4-1で勝利)では両者ともにゴールを決め、試合後にユニフォームを交換。エッタ・エヨンは交流したエンバペについて「とても親しみやすく、素晴らしい人物だ」と印象を語っている。

    とはいえ、より現実的な移籍先はバルセロナか。エッタ・エヨンがバルセロナのファンとして育ったという点だけでなく、バルセロナも8月に37歳となり、契約最終年に入ったロベルト・レヴァンドフスキの長期的な後継者を探しているためだ。バルセロナからすれば、経験不足というリスクこそあるものの、移籍金が比較的安く抑えられる点を鑑みると、賭け的な要素を抑えつつ、見返りも見込める選択肢といえるだろう。

    そんなエッタ・エヨンは現時点でレバンテが掲げる残留に集中しているところだが、近い将来、さらに大きな舞台で成功を収める運命にありそうだ。わずか3年前、エッタ・エヨンがカメルーンの砂地のピッチでプレーしていた頃、これほどのキャリアを歩むと想像できた者などいなかっただろう。

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