2019_12_27_Jleague(C)J.LEAGUE

月ごとに振り返るJリーグ!トーレス引退、湘南に激震、久保が超名門へ…2019年も悲喜こもごも

  • 2019_12_27_Jleague1(C)J.LEAGUE

    1月

    ■楢崎&中澤が同日引退発表

     新年早々の1月8日、Jリーグと日本代表として長く活躍してきた楢崎正剛(名古屋スペシャルフェロー)と中澤佑二(解説者)が揃って現役引退を発表した。2018年末に川口能活(U-22日本代表GKコーチ)や小笠原満男(鹿島アカデミーアドバイザー)ら同世代のビッグネームが続々とユニフォームを脱ぐなか、日本の守備陣を支えてきた彼ら2人もピッチを去ることになった。

     川口や楢崎の背中を追い続けた川島永嗣(ストラスブール)は「ナラさんから『やめる』とメールをもらって泣きました。『お疲れ様』とかそういう言葉が出てこないほどでした」と明かしたが、多くの現役選手がショックを受けたことだろう。J創成期からの1つの時代の終焉、新時代突入を印象づける大きなニュースだった。

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  • 2019_12_27_Jleague2(C)J.LEAGUE

    2月

    ■J開幕…神戸・鳥栖のスペイン流両軍が想外の低迷

     2月22日のセレッソ大阪対ヴィッセル神戸戦から2019年Jリーグが開幕した。ジョゼップ・グアルディオラ監督(マンチェスター・シティ)の片腕と言われたリージョ監督体制が昨年10月に始動し、今シーズンから本格的にスタート。ルーカス・ポドルスキ、アンドレス・イニエスタ、ダビド・ビジャの大物助っ人トリオと山口蛍、西大伍ら日本代表クラスの日本人の共演が実現した神戸に注目が集まった。ところが、開幕戦はC大阪に0-1で敗北。そこからなかなか調子が上がらず、序盤戦は生みの苦しみに直面することになった。

     神戸と同じスペイン人指揮官のルイス・カレーラス監督が指揮を執り、フェルナンド・トーレスやイサック・クエンカなど大物FWを揃えたサガン鳥栖も低迷。開幕から想像をはるかに超える得点力不足に陥り、最下位争いを強いられる羽目に。スペイン流を日本で形作ることがどれだけ難しいか、痛感させられる2チームの停滞だった。

  • 2019_12_27_Jleague3(C)J.LEAGUE

    3月

    ■大分快進撃!藤本が得点王争いをリード

     アンデルソン・ロペス(札幌)やアデミウソン(ガンバ大阪)、ディエゴ・オリヴェイラ(FC東京)ら外国人FW陣とともに今季序盤の得点ランキング上位を争ったのが、“J1昇格組”大分トリニータの10番・藤本憲明(現神戸)だった。開幕・鹿島アントラーズ戦の2発に始まり。第3節・ジュビロ磐田戦で3点目、続く第4節の横浜FM戦でも2発、さらに第6節・札幌戦でもゴールと4月頭の段階で得点ランクトップに立った。JFLから始まりJ3、J2、J1とステップアップし、全カテゴリーでゴールを決め続けてきた男は、夏には神戸に引き抜かれた。

     本人も「J1初挑戦ということで、あまり何も考えずにプレーできたのがよかった。『自分のやるべきことに集中できてる』という感覚が大きかった」と語る。そんな伏兵のブレイクは多くの人々に夢と希望を与えた。さらに、大分の快進撃の原動力になったことも事実。今季の大分は昇格組ながら一度もJ1残留に巻き込まれずに1ケタ順位をキープ。片野坂知宏監督の手腕も高く評価された。

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  • 2019_12_27_Jleague4(C)J.LEAGUE

    4月

    ■FC東京、広島が絶好調

     この時期のJ1をリードしたのがFC東京とサンフレッチェ広島だ。長谷川健太監督体制2年目のFC東京はハードワークと組織的守備に磨きをかけ、D・オリヴェイラと永井謙佑の両得点源を急成長した17歳・久保建英が巧みに操る。その攻撃陣の安定感も結果につながり、開幕から12戦無敗、4月のリーグ戦は4戦全勝と圧倒的強さを印象付けた。

     一方の広島も開幕7戦無敗、4月中旬の時点で首位に立っていた。こちらも城福浩監督体制2年目でパトリックやドウグラス・ヴィエイラら得点源が好調。大迫敬介や森島司、松本泰志らU-22世代の若手も成長し、チームとしての伸びしろを感じさせた。

    ■リージョ監督解任

     ビッグスターを集結させてタイトルを狙いに行った神戸だったが、4月に入って松本山雅FCと広島に連敗。リージョ監督が突如として更迭された。その後、吉田孝行監督が後を引き継いだものの、浮上の兆しが感じられず、5月に入ってフィンク監督が就任。そこからようやくチーム立て直しの成果が見られるようになってきた。夏に酒井高徳や飯倉大樹ら即戦力の日本人を補強し、古橋享梧のブレイクもあって最終的には上位浮上を果たしたが、チーム全体が揺れ動いた4月が最も苦しい時期だったのは確かだ。
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    5月

    ■鳥栖、清水、浦和…監督解任ラッシュ

     時代が平成から令和へと移行した5月は監督交代が次々と起きた時期でもあった。

     まず、開幕から低迷した鳥栖のカレーラス監督が4日の大分戦でベンチから外れ、5日に退任が正式発表された。前年に続いて金明輝コーチが監督に昇格。攻守両面の見直しを図り現実的な戦いにシフトしたことで、徐々に結果が出るようになった。

     続いて12日、清水エスパルスのヨンソン監督が電撃退任し、篠田善之コーチが暫定監督に昇格した。ヨンソン監督は前年は清水を8位に躍進させる手腕を発揮したものの、白崎凌兵(鹿島)やフレイレ(湘南ベルマーレ)の移籍によって生じた穴を埋められなかった。篠田体制でもずっと下位に低迷したが、ドウグラスの復調や大卒ルーキー・西澤健太の成長によって何とかJ1に踏みとどまった格好だ。

     そして28日には、浦和レッズのオズワルド・オリヴェイラ監督が解任され、前年4月に暫定指揮官を務めた大槻毅コーチが再登板することになった。かつて鹿島をJ1・3連覇へと導いた名将も浦和では成功を収められなかった。その後、大槻体制の浦和はACLでは勝ち進んだが、リーグ戦の方は残留争いというアンバランスな状況が続き、最後までチグハグ感が否めなかった。

  • 2019_12_27_Jleague6(C)Getty images

    6月

    ■久保建英がレアルへ。若手が続々と海外に羽ばたく

     日本代表が2019年コパアメリカ(ブラジル)に参戦していた6月14日、久保建英のレアル・マドリード移籍が正式発表された。かつてバルセロナのカンテラでプレーしていたという数奇なキャリアなうえ、日本人選手がプロとしてレアルの一員になったのは史上初(育成組織には中井卓大が在籍)。本人はコパ期間中もFC東京での壮行セレモニーでもレアルに関してほとんど口を開かなかったが、「(コパのレベルでも)自分の持ってるものを出せなかったら絶望しちゃうだろうけど、そんなのは全然なかった」と自信を持って堂々と世界最高峰クラブへ挑んでいった。

     直後には、同じくコパ参戦組の安部裕葵がバルセロナへ移籍。U-22世代の菅原由勢(AZ)や食野亮太郎(ハーツ)らも続々と欧州挑戦へ踏み出すなど、日本人の若手大量移籍時代が到来したことを印象付けた。若手の空洞化が進むなか、この先のJリーグがどうあるべきかを考えさせられる良い機会にもなった。

  • 2019_12_27_Jleague7(C)J.LEAGUE

    7月

    ■磐田・名波監督が辞任決断

     7月に入るや否や、J2降格危機に瀕していた磐田の名波浩監督が辞任を決断。2014年9月から足掛け5年間も続いた長期政権にピリオドが打たれた。名波体制では2015年にJ1復帰を決め、2016年は13位、2017年は6位に躍進。しかし、2018年はケガ人続出の影響もあってJ1参入プレーオフを戦った末に残留を決める状況だった。そして今季も大がかりな補強ができず、戦力的な上積みが叶わなかったこともあり、最悪の結末を招いている。

     その後、鈴木秀人コーチが指揮官に昇格する形となったが、その体制も長く続かず。8月にはスペイン出身のフェルナンド・フベロ監督が引き継ぐ形となった。終盤にはチーム状態が上向き、若い藤川虎太朗らのブレイクもあったが、最終的には踏みとどまることができずじまい。2度の監督交代のダメージはやはり大きかった。

    ■宇佐美&井手口が欧州から帰還

     若手大量移籍の傍らで、欧州挑戦から日本に戻ったのが宇佐美貴史と井手口陽介(ともにG大阪)だ。

     欧州で悔しい結果に終わった両ガンバ勢はゼロからの再出発を強いられた。「今回は潔いくらい『ゼロからの再出発』だと思っている」と宇佐美が言えば、井手口も「この1年半はホントにいろいろ考えた。今のガンバでは若い方では経験のある選手なんでプレーで引っ張っていければいい」と発言。それぞれに新たな意欲を持って古巣で復活を期した。

     復帰直後はパフォーマンスが上がらず「2人とも実戦感覚がやや失われている」と宮本恒靖監督も苦言を呈したほどだったが、徐々に調子を復調。宇佐美は終盤にゴールラッシュを見せ、7得点を挙げた。井手口も日本代表復帰を果たすほどで、来季は彼らがガンバとJ1の看板になってくれそうだ。

  • 2019_12_27_Jleague8(C)J.LEAGUE

    8月

    ■湘南に激震走る

     2018年YBCルヴァンカップ王者の湘南に激震が走ったのが8月。2012年から8年間チームを率いてきた曹貴裁(チョウ・キジェ)監督のパワハラ疑惑が浮上し、調査のために指導を自粛することが決まった。その後、高橋健二コーチが暫定的に指揮を執ったものの、8月17日のサガン鳥栖戦から勝てなくなり、11月30日の広島戦まで10戦未勝利という長いトンネルに迷い込むことになった。

     その間の10月には調査報告書がJリーグから明らかにされ、曹監督のパワハラが認定されると同時に辞任が決定。浮嶋敏U-18監督が就任して立て直しを図り、J1参入POの末に何とか残留を果たしたが、チーム全体が過去にないほどの激震に見舞われた。指導者のパワハラ問題はサッカー界全体にも影響を及ぼし、コーチの指導のあり方を見直す契機になった。

    ■フェルナンド・トーレス、引退

     スペイン代表として2008年・2012年欧州選手権連覇、2010年南アフリカ・ワールドカップ優勝を経験し、2018年8月からサガン鳥栖でプレーしていた偉大な点取り屋、フェルナンド・トーレスが8月23日の神戸戦で現役を退いた。

     鳥栖・ベストアメニティスタジアムで行われたラストマッチでは、盟友・イニエスタと直接対決。そのイニエスタにゴールを許し、鳥栖は1-6で大敗を喫することになったが、トーレスにとって思い出に残るキャリア最終戦になったことは間違いない。「本当に最後の最後まで、すべてのことにありがとう」という引退セレモニーでの発言は、多くのチームメートやサポーターを感極まらせただろう。

  • 2019_12_27_Jleague9(C)J.LEAGUE

    9月

    ■名古屋が風間監督を解任

     さまざまな監督交代があったJ1で最もショッキングだったものの1つが、9月の風間八宏監督の解任だ。今季は上位躍進を期待されながら、5月~8月にかけて10戦未勝利と停滞。その時点でも監督交代の噂は出ていたが、動きはなかった。

     ところが、ラスト8戦となった9月23日、突如として監督更迭が発表され、サッカー界全体が驚きに包まれた。後任にはFC東京や鳥栖を率いた経験のあるマッシモ・フィッカデンディ監督が就任。ボールを支配して敵を凌駕するスタイルから一転、守備的スタイルを志向する監督に代わったことでチーム内外から戸惑いの声が上がった。最終的に名古屋は最終節で残留を決めることになったが、今後に向けて一抹の不安も感じさせた。

  • 2019_12_27_Jleague10(C)J.LEAGUE

    10月

    ■川崎悲願のルヴァン制覇!札幌も大健闘

     過去4度もJリーグカップ決勝の舞台に立ちながら、その度に苦杯を味わってきた川崎。その彼らが『5度目の正直』で悲願のタイトルを手にしたのが、26日に埼玉スタジアム2002で行われたルヴァンカップ決勝だった。

     ペトロヴィッチ監督の手腕で躍進した札幌は手ごわい相手だった。菅大輝が先制点を奪い、川崎に2点を奪われた後半ATにも深井一希が同点弾をゲット。試合は延長へともつれ込んだ。その延長戦でも札幌が先手を取ったものの、最後の最後にエースFW小林悠が起死回生の同点弾を奪取し、決着はPK戦に持ち越された。

     そこで存在感を発揮したのが守護神・新井章太。進藤亮佑のキックをストップし、ついに初戴冠を現実にした。中村憲剛は「ここまで来るのが長すぎた」と語ったが、本当に長い長い年月を経ての悲願のタイトル獲得となった。

  • 2019_12_27_Jleague11(C)J.LEAGUE

    11月

    ■J1昇格&残留争いが決着

     昇格争いの方は柏レイソルが1年でのJ1復帰とJ2優勝を果たし、ネルシーニョ監督の手腕の高さを再認識させた。今季27ゴールのオルンガ、19ゴールのクリスティアーノ、11ゴールの江坂任と点の取れる選手が揃っていたことが強さの最大の秘訣だった。

     2枠目は横浜FC。11月24日の最終節・愛媛FC戦では41歳の中村俊輔がボランチとして気の利いたプレーを見せ、終盤にはキング・カズが出場。13年ぶりの昇格に華を添えた。シーズン途中にタヴァレス監督が解任され、一時的には危機に陥ったが、下平隆宏監督がうまくチームをまとめ、大宮アルディージャらライバルを振り切った。

     J2降格の方は磐田と松本山雅の2チームに決定。磐田の方は2度の監督交代のダメージが大きく、終盤の巻き返しも及ばなかった。松本山雅は2015年に続く1年でのJ2降格。シーズン序盤から勝ち切れない試合が続き、夏場にU-22代表の前田大然が海外移籍。9月以降2トップにして攻撃に厚みを加え、少しずつ成果が出始めたものの、終盤の鳥栖との下位直接対決に敗れたのが致命傷になった。シーズン通算21得点という攻撃力の貧弱さが最後まで響いた。

  • 2019_12_27_Jleague12(C)J.LEAGUE

    12月

    ■横浜FMが15年ぶりJ1制覇!仲川がMVPと得点王に

     シーズン通して大混戦が続いたJ1優勝争い。12月7日のFC東京との直接対決を3-0で制した横浜FMが2004年以来15年ぶりのタイトル獲得で2019年を締めくくった。アンジェ・ポステコグルー監督2年目の彼らは前半戦は上位と中位を行ったり来たりとFC東京や広島に水を空けられていた。しかも夏場にエジガル・ジュニオが負傷し、天野純(ロケレン)と三好康児(アントワープ)も海外移籍。8月には清水、鹿島、C大阪戦の3連敗とトンネルに迷い込んだこともあった。しかしそこから抜け出した後は11戦無敗という凄まじい好調ぶりを披露。攻守両面の完成度の高さを見せつけ、王者にふさわしい戦いぶりでタイトルをつかんだ。

     MVPと得点王をダブル受賞した仲川輝人は、その中でも身長161㎝と史上最小兵。小柄な体躯をハンディキャップにせず、スピードと動き出しを磨き、DFの懐に入り込む術を身に着けた。そのうえで鋭いゴールを決められるのだから鬼に金棒だ。12月のEAFF E-1選手権2019(釜山)でも初めて代表入りを果たしたが、彼のブレイクは2019年日本サッカー界を象徴する大きな出来事だった。

    文=元川悦子

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