2026 World Cup TrophyGetty Images

「量は質を薄める。予選も意味ない」ワールドカップ64カ国開催案、そのメリット&デメリットは?著名記者分析

イギリスの著名記者ヘンリー・ウィンター氏は、2030年のワールドカップ拡大案について持論を展開した。

史上初の大会開催から100周年の記念大会となる2030年ワールドカップ。FIFA(国際サッカー連盟)はすでにモロッコ、ポルトガル、スペインの3カ国共同開催を決定、そして第1回の開催国であるウルグアイ、さらにアルゼンチンとパラグアイで開幕戦3試合を行うという異例のフォーマットとなっているが、さらに出場チームを64カ国まで拡大する案も浮上しており、大きな注目を集めている。

64カ国への拡大案は各大陸連盟から賛否の声が上がっている状況だが、イギリス『The Times』などにも寄稿する著名記者ヘンリー・ウィンター氏は、自身のSNSでそのメリットについて持論を展開した。

「メリット:誕生日パーティー。CONMEBOL(南米サッカー連盟)の提案だ。熱狂的なこの大陸が100周年記念大会となる2030年に開幕数試合を開催しただけで、ワールドカップ開催の大陸間ローテーションによる今後2大会の開催権を失うのは不公平だ。この提案では、ウルグアイを含む3カ国でより多くのグループステージを開催できる」

「そして計算してみれば、トーナメントは48チームよりも64チームのが簡単だ。ラウンド32にスムーズに移行でき、48チームのように3位から進出するチームもない。いわゆる『小規模国』の選手やサポーターにも素晴らしい機会となる。アフリカやアジアは賛成だろう」

さらにデメリットについて、大会全体のクオリティや選手の負担増加などを指摘している。

「デメリット:量は質を薄める。ワールドカップは世界で最も重要なスポーツイベントであり、才能や肉体、メンタルの祭典だ。出場権を得るのは困難であるべき。それがスポーツの本質、つまり競争だ。CONMEBOLの提案を支持する人は『FIFAランキング48位と64位のチームに差はない』と主張するが、たしかに違いはある。現在の48位ペルーはワールドカップの歴史があるが、64位のブルキナファソにはない。さらに大陸ごとの出場国の割当を考えると、さらに下位のチームも出場権を得ることになる」

「FIFA加盟国210チーム中30%が出場できる大会では、スポーツとしての誠実さは一体どこにあるんだ? 弱いとされる国が惨敗すれば、グループステージのドラマ性や視聴率に大きな影響を及ぼす。グループステージには緊張感が必要だ。48チームでも多すぎるのに、64チームではなおさらだろう」

「トップレベルの選手はすでに負担が大きい。FIFAは選手を守るべきであり、クラブワールドカップによる戦力低下に悩まされるクラブや選手の経験から学ぶべきである。そして拡大すれば、予選の意味がほぼ無くなるだろう。CONMEBOLはそれを考えたのだろうか? 現時点で6.5/10が出場するが、全く意味がない」

そのうえで、「この提案はFIFAではなくCONMEBOLのものだが、FIFAとフットボールと金銭の関係を知っている人であれば、間違いなく内部からも求める人間が出る」としつつ、「夏はゆっくり過ごそう。他のスポーツに報道の機会を与えよう。フットボールに夢中な人でさえ、休息は必要だ。要するに……やるべきではない」と締めくくっている。

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