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なでしこジャパンが勝ち抜くために。熊谷紗希が語る「割り切り」と「頭の整理」

 20歳で経験した2011年の女子W杯ドイツ大会での世界制覇。15年アメリカ大会では準優勝、19年フランス大会を経て、今回のオーストラリア&ニュージーランド大会は熊谷紗希にとって4度目のW杯となる。

「初戦が大切」と語っていた熊谷だが、22日のグループステージ第1節・ザンビア戦は5-0で圧勝。決めるべき選手が決めるとともに、熊谷は先を読んださすがの守備で相手をシュートゼロに抑えた勝利に貢献した。今大会に臨むなでしこジャパンでは、23名中14名が初のW杯。そんなチームのなかで熊谷の果たす役割は大きい。

■言いたいことを言い合えるチーム

 2017年以来、キャプテンマークを巻く。自身は今のチームを「言いたいことを言い合える雰囲気」があるという。

「仲が良いだけではなく、全員が話せる雰囲気ができているチーム。年代も含めてところどころにしっかりバランスを取れる選手がいて、小さなグループをまとめながら、大きなグループとしてまとまって戦えていると思います」

 チームをまとめるために意識していることは「普段からいろんな選手とコミュニケーションを取ること」だ。自らコミュケーションを図ることによって、若い選手たちも「多分、私自身を恐れることなく、話すことができていると思います」と語る。

■必要なのは戦い方のオプション

 グループステージ第1節は22日にザンビア(FIFAランク77位)に5-0で圧勝。同組のスペイン(同6位)を得失点差で上回ってグループC首位に立っており、26日にコスタリカ(同36位)、31日にスペインと対戦する。気を抜く試合など一つもないが、FIFAランク11位のなでしこジャパンにとって、第3節に控えるスペインが警戒すべき相手であることは間違いない。

 スペイン女子代表は昨年秋、代表体制の不備を理由に、選手15名が代表入りを辞退。ここ1年ほどトラブルが続いていた。しかし女子W杯に向けては、バルセロナのスター、アイタナ・ボンマティ、アレクシア・プテジャスを含む多くの選手が代表に戻り、本来の力を見せられる陣容は整っている。

「スペインはどちらかというと、自分たちと同じようなサッカーを目指すチームだと思っています。どんなフォーメーションで来るかは分からないですが、『やりたいこと』という意味ではミラーゲームのような感じになるのかなと感じていて。攻撃でも守備でもどちらが先手を取れるかが重要になると思います」

「自分たちがやってきたことを出さなければいけない相手です。キーになる選手は絶対いて、もちろんいろいろと内部であったようですが、メンバーを見ると入るべき選手はしっかり入っています」

「自分たちがスペイン戦までに2戦あるように、スペインにも2戦あります。その戦い方を見ながら、自分たちも準備を変えていかなければいけない。『いろんなこと』に対応できるプランを持てるチームでなければいけない。その幅を合宿の中で広げながら、質をさらに上げていくことが重要だと思っています」

「戦う相手によって割り切りも必要になってくることは絶対にあります。戦い方のオプションというか、その数は絶対持たなければいけないので。監督も指示してくれると思いますし、どういった戦いになるかを自分たち自身も頭で理解して、戦いに出なければいけないと思います。頭の整理は絶対必要になってきます」

 国際Aマッチ出場は136試合を重ねた(大会開幕前時点)。現在のチームで2011年ドイツ大会の優勝を経験した選手は熊谷ただ一人。W杯出場経験のある選手は9名であり、2大会以上の経験を持つのもまた熊谷のみだ。その経験と存在感は、若いチームが勝ち抜いていくうえでの力となる。

「2011年(の優勝)を見てサッカーを始めましたというような選手がついに現れてしまって」 

 そう言葉を結んだ熊谷。初戦で見せたなでしこジャパンの姿は、中堅の選手と若手選手がうまく融合し、また海外組も増えたことで世界に物怖じしないプレーが随所に光った。ここからさらに次世代に繋げてゆくためにも、今大会でのなでしこジャパンに懸かる期待は大きい。

聞き手:佐々木バーンズ千尋 構成:吉村美千代/GOAL編集部【協力】FIFA+

【なでしこジャパン試合予定】

7月22日(土)16時 5-0 ザンビア女子代表 ハイライトはこちら
7月26日(水)14時 vs コスタリカ女子代表 NHK BS1(生)
7月31日(月)16時 vs スペイン女子代表 NHK 総合(生)

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