Kamara Lingard Ake Wijndal Newcastle signings GFXGetty/Goal

サウジ資本買収のニューカッスル。新オーナーが1月に迎え入れるべきおすすめの人材とは?

先週、ニューカッスルが買収されたことは世界中で大きな話題を呼んだ。買収先はパブリック・インベストメント・ファンド(サウジアラビアの政府系投資ファンド)、PCPキャピタルパートナーズ、RBスポーツ&メディアの合弁会社であった。

批判の矛先はサウジアラビアの人権問題に関わる実績や、現在進行中のイエメンとの戦争に向けられた。マグパイズを3億500万ポンド(約479億5000万円)で購入したことは、「スポーツウォッシング」(スポーツビジネスを介した資金洗浄)の最たる例だと指摘されている。

クラブのレジェンドであるアラン・シアラーは『The Athletic』で相談は受けていない。我々に選択肢はなかったんだ。我々にあるのは、ちゃんとした態度でこれに臨むという責任だ」とコメントしている。

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こうした状態でフットボール業界は目まぐるしく動いており、ニューカッスルの次なる動向に注目が集まっている。

スーパースターがセント・ジェームス・パークにやってくるなどと言われているが、実際はより慎重なアプローチが取られることになるだろう。また、クラブはしばらくの間残留争いに巻き込まれる可能性が高く、今シーズンの残留は一切保証されていない状態だ。

■迎え入れるべき2人

Lucien Favre Ralf Rangnick GFXGetty/Goal

シーズン開幕から8戦未勝利で、リーグワーストチームのひとつとなってしまっているニューカッスル。少なくとも1月まではいくつかの障害を乗り越える必要があり、まずは結果を出さないといけない。プレースタイルを大きく変える新監督、サウジアラビアの関与に怒るライバルファンからの敵対心、自分の将来の可能性はよそのチームにあるのではないかと考える選手たち…クラブはこれだけ多くの障害を抱えてしまっている。

そのため、これからの2か月半は計画を作り上げることに費やすことになるだろう。その最初のステップはスポーツディレクター(SD)と新監督を雇うことだ。

仮に候補を挙げるとするならば、その中でも最良の選択肢は、ユルゲン・クロップやトーマス・トゥヘルも尊敬する戦術家ラルフ・ラングニックをSDとして迎え、リュシアン・ファーブルを監督として雇うことだ。

ファーブルは2020年12月にボルシア・ドルトムントを離れて以来現場から遠ざかっているが、母国スイスで監督を務めた頃からフランス時代やドイツ時代に至るまで、どのクラブでも成功を収めている。

そして、ファーブルとラングニックは戦術面で自然とフィットする組み合わせだ。ファーブルのスタイルは、RBライプツィヒ時代のラングニックがドイツで行ったハイプレス戦術に比較的近いのだ。

ニューカッスルがこの2人を迎え入れることができれば、今度は1月に補強するべきポジションをいくつか視野に入れて動いていくことになる。

■獲得すべき選手像は?

Amanda Staveley NewcastleGetty

報道によると、新オーナーはビッグネームを獲得したりはせず、2000万〜2500万ポンド(約31億4000万〜39億3000万円)の範囲で数人の選手獲得を目指しているとのことだ。

共同オーナー、アマンダ・ステーブリー氏はキリアン・ムバッペへのアプローチをすでに否定しており、『BBC』がソーシャルメディアで話題にした、ラヒーム・スターリングやフィリペ・コウチーニョを迎えるという憶測も非常に的はずれなものだろう。

ニューカッスルが賃金込みで支払えるのはおそらく最大でも2億ポンド(約314億4300万円)と思われる。この時点で、移籍を希望しているヨーロッパのスターたちや、(例えばアントニー・マルシャルのような)莫大な賃金が必要な選手の大多数は即座に除外されることになる。

これはマグパイズのファンにとっては安心できることに違いない。徐々にチームを構築するほうが賢明だからだ。

だが実際のところ、来る残留争いに即座に影響を与えることができ、かつトップ10にチームを押し上げるためのキープレーヤーとなるような選手をクラブは獲得しなければならない。言い換えれば、浮き沈みの激しい過渡期を乗り越えることができる、能力の高い選手を求めている。

現実的な路線は、チームで課題のあるポジションをいくつかに絞り込み、下位3チームでシーズンを終えることのないよう、具体的な意図をもってアプローチしなければならない。つまり、セントラルMF、センターバック、右ウイング、左サイドバックに焦点を当て、それぞれのポジションに一人ずつ選手を獲得するということだ。

■リンガード、アケらが候補に

Newcastle Possible XI GFXGoal

この中で最も華々しいポジションである右ウイングから議論したい。守備を重視し、カウンター攻撃を基本とするスティーブ・ブルースのアプローチによって、スピードのあるアタッカーを多く抱えるニューカッスルだが、ラインの間でプレーできる選手がほとんどいない。つまり、中央に入り、攻撃時に中盤のつなぎができる選手がいないのだ。

アラン・サン=マクシマン、ミゲル・アルミロン、ライアン・フレイザーは生粋のウインガーだ。一方、夏に契約したジョー・ウィロックは創造性の高いMFというよりは、ボックス・トゥ・ボックスの選手だ。

所属するマンチェスター・ユナイテッドで最近好調であることを考慮すれば、ジェシー・リンガードがこの役割に最も適した選択肢だろう。もし獲得にあたってウェスト・ハムの方が有利な立場にあるのであれば、ニューカッスルはノリッジのトッド・キャントウェルに方針転換してもよいだろう。夏にサウジアラビアに移籍したマテウス・ペレイラもよいかもしれない。移籍の理由が金額面だったからだ。サウジアラビアの新たなオーナーたちは、確実に彼をプレミアリーグに連れ戻すために説得にかかるはずだ。

センターバックについては、ブルースが好んで起用してきた選手のほとんどが、単純にクラブの新たな戦術に合っていない。高いDFラインからのアタッキングフットボールに切り替えようとしているニューカッスルには、スピードがあり、かつボールを持った時の質が高い選手が必要だ。

ジェームス・タルコウスキーは補強リストの中でも上位に位置していると思われているが、それ以外にももっとよさそうな選択肢があるのは確かだ。マンチェスター・シティのナタン・アケにアプローチする可能性があるという。アケは2020年夏にボーンマスから加入して以来プレミアリーグで12試合にしか出場していないのだ。

ニューカッスルの戦術が変化したことでセントラルMFでは、ブルースやラファエル・ベニテスが行ってきた古いフォーメーションとは違って、一つのことしかできない選手から、ピッチの広いエリアをカバーできる敏捷性の高いオールラウンダーに入れ替えなくてはいけない。ニューカッスルのMFの役割は、ボールを持っているときもそうでないときも、さらに幅広く、ダイナミックになっているのだ。

ブバカル・カマラは最近プレミアリーグへの移籍が噂されているが、マルセイユとの契約期間が残り6か月となるため、1月には低価格で獲得できる。センターバックから転向したカマラは、アイザック・ヘイデンのいる中盤の底を著しくアップグレードできるだろう。

デクラン・ライスは、ニューカッスルが獲得すべきだとリオ・ファーディナンドが提案した選手だが、値段的には到底手が届かない。代わりにオリオール・ロメウの獲得を考えるべきだろう。現在はポテンシャルを十分に評価されていないが、プレミアリーグでの実績があることは残留争いにおいて大きな財産になるだろう。サウサンプトンの選手からもうひとり、ジェームズ・ウォード=プラウズもよい候補だ。

左サイドバックでは、ウィンガーのマット・リッチーが代役を務めて非常に長い時間が経っている。このポジションは、非常に評価の高いオランダ代表オーウェン・ワインダルを獲得できれば完璧だろう。この21歳はすでに12か月前にオランイェ(オランダ代表の愛称)でデビューを果たし、11キャップを数える。AZアルクマールからのステップアップは近いと考えられている。

つまり、各ポジションに1人ずつ、4人の選手の獲得に総額1億ポンド(約157億2000万円)前後の移籍金を支払うことになる。この出費は比較的控えめなものだが、新オーナーがニューカッスルを魅力的なクラブに生まれ変わらせ、サウジアラビアをそのイメージに合わせていく旅を始めるにあたっては、現実的な第一歩だろう。

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