2018年ロシア・ワールドカップを目指す欧州列強の壮絶な戦いが終了した。今回の予選でも、歓喜から悲劇まで、数多くのドラマが生まれてきた。1年以上にも及んだ国のプライドをかけた戦いを振り返っていこう。
第1弾の「予選を突破したフットボール強国」に続く第2弾で、焦点を当てるのは「敗退した大国たち」だ。
W杯出場が叶わなかったイタリア、そしてオランダ。これまで時代を作ってきた大国たちは、なぜロシア行きの切符を逃してしまったのだろうか?
■誰もが耳を疑ったイタリアの敗退
今予選ではスペインと同じグループGに入ったイタリア。20年間に渡って代表を支え続けてきたGKジャンルイジ・ブッフォンが、「ロシアW杯で引退」を早々に宣言。偉大なキャプテンに最高の花道を用意するために、選手や国民の鼻息は荒かった。
第2節で、グループ最大のライバルであるスペインに1-1と引き分けたが、第6節まで5勝1分。ここまではグループ首位を走っていた。しかし、第7節の敵地スペイン戦で、0-3と完敗。結果だけではなく内容でも手も足も出ず、グループ2位に転落。スペインが残り試合を全勝したために、プレーオフに回ることとなった。
ここまでは想定していた人も多かっただろう。ジャンピエロ・ヴェントゥーラ監督も「プレーオフは想定の範囲内」と語っており、誰もがプレーオフ経由でのロシア行きを信じていた。というより、敗退するなんて考えてもみなかっただろう。
ヴェントゥーラ監督は、スウェーデンとのプレーオフ第1戦で、これまでこだわっていた4-2-4からシステムを3-5-2へ変更する。しかし、敵地での一戦を全く良いところなく0-1で落としてしまう。イタリア国内で最も評価の高かったFWロレンツォ・インシーニェをベンチスタートにし、高さのあるスウェーデン相手にサイドからのクロス攻撃を連発したことは、メディアから強烈に批判されることとなった。
そして迎えたホームでの第2戦。負ければ後がない試合で、選手たちは気迫を全面に押し出した。皮肉的なサポーターやメディアもこぞってチームをサポートした。前半はゴールを感じさせる戦いだっただろう。
しかし後半途中で、機能していたFWマノロ・ガッビアディーニをベンチに下げると、第1戦と同じような展開に。アディショナルタイムにはブッフォンも攻撃参加し、最後までゴールを目指すが、ネットを揺らすことはできず。60年ぶりに予選敗退となった。
昨年行われたEURO2016では、アントニオ・コンテ監督のもと決勝トーナメント1回戦でスペインを破り、ドイツを延長戦まで苦しめたイタリア。EUROではMFマルコ・ヴェッラッティが負傷で不参加であり、インシーニェやFWチーロ・インモービレがクラブでレベルの高いパフォーマンスをみせたことにより、今回の欧州予選のほうが選手層は厚かったはず。それだけに、今回の敗戦は大きなインパクトを与えた。
今回の敗退を受け、ブッフォンやDFアンドレア・バルザーリ、MFダニエレ・デ・ロッシら06年大会の優勝を知る選手たちが次々と代表引退を発表した。1つの時代が終わったイタリアは、このショックから立ち直ることはできるだろうか。
■時代の転換期を迎えたオランダ
グループAでフランス、スウェーデンら難敵と同居したオランダ。なかなか世代交代の進まないオランダは、EURO2016を逃したことにより、国民のW杯への期待は俄然高まっていただろう。
予選開幕4試合で2勝1分1敗と、まずまずのスタートを切ったものの、5節のブルガリア戦でまさかの敗戦。グループ4位に転落したことを受け、ダニー・ブリント前監督を解任。ディック・アドフォカード新体制のもとで、続くルクセンブルク戦では5-0で大勝したが、7節にはライバルフランスの前に手も足も出ず、0-4で敗れた。
この敗戦で厳しい立場に追いやられると、最後の3試合はすべて2点差をつけて勝利したものの、得失点差でスウェーデンに及ばず。予選をグループ3位で終え、プレーオフにすら進めず敗退することとなった。
予選全日程終了後には、チームを長年支え続けたFWアリエン・ロッベンが代表からの引退を発表。2010年大会では、決勝でスペインとの延長戦に及ぶ死闘を繰り広げたオランダだが、それ以降世代交代をうまくすすめることができず。EUROに続き主要大会を連続で逃すことになった代表チームも、時代の転換期を迎えるだろう。
PRO SHOTS■キーワードは「世代交代」
両国とも、チームを牽引してきた主力メンバーは、30歳を超えた経験豊富なベテラン選手たちだった。引退を発表した選手たちも含め、2020年大会まで代表でのプレーを続ける選手は多くないだろう。
イタリア、オランダともに予選終了後に指揮官が退任。1つの時代が終わった両国にとって、「世代交代」は急務となる。もし、この至上命題に失敗すれば、暗黒時代に突入する可能性も否定できない。凋落した2大国には、早急な若手・指導者育成が求められる。
