Virgil van Dijk injury FA Cup GFXGetty/GOAL

リヴァプールに帰ってきた「モンスター」…最重要の男ファン・ダイク、大ケガを経験したからこそ最高のタイトルへ

リヴァプールに帰ってきた「モンスター」

1年前との違いは、何だろうか。

フィルジル・ファン・ダイクは12カ月前、キャリア最大の失望と直面していた。しかし今、彼はもう1つのチャンピオンズリーグ(CL)優勝メダルを手にし、ヨーロッパ最高のディフェンダーとしての地位を再確立しようとしている。

「今は最高の気分さ」。彼は今週こう語っているが、それも納得だ。昨シーズンの悪夢、そして長く孤独なリハビリを経て以来、ほとんどすべてがうまくいっている。

彼が復帰を果たしたことで、リヴァプールは見違えるように調子を取り戻した。今季はすでに2つのカップ戦を制し、28日にはパリで7度目のビッグイアーを掲げるチャンスを手にしている。レアル・マドリーとの激突は刺激的なものとなるだろう。

そしてこのCLファイナルは、ファン・ダイクにとって過酷なシーズンにおける51試合目となる。チーム4番目の出場数だ。昨季に前十字靭帯断裂という重傷を負ったにもかかわらず、その回復ぶりはリヴァプールの輝きとともに非常に印象的だ。選手生命を脅かしかねない大ケガ、そこから完全に立ち直れない選手もいる。だが彼は以前と同じく、いや、むしろそれ以上に良い状態に見える。

主将ジョーダン・ヘンダーソンは、『GOAL』に対し「驚きはしないさ。特別な選手だし、あのフィジカルはモンスター級だ。疑いなんか持ったこともなかったよ」と語る。

「もちろん彼を失ったことは最悪だったし、彼にとっても難しい時期だったと思う。でも同じように、いや、それ以上に強くなって戻ってくると信じていたんだ」

「ケガはサッカーで最悪の部分だし、チームメイトを見ながら無力感を味わうのも辛い。自分が大好きなことができなくなるんだ。本当に難しいよね」

「でも、フィルジルは戻ってきたんだ。今季のパフォーマンスも悪くないだろう?」

負傷を経たからこその「最高のタイトル」

Virgil van Dijk injury Liverpool Everton Premier League 2020-21 GFXGetty/GOAL

ファン・ダイク本人は、トップスピードを取り戻すまでに「3~4カ月かかった」と言う。それでも、特に2022年に入ってからのコンディションは最高で、リヴァプールが華麗な攻撃を仕掛ける上で再び絶対に欠かせない存在へと戻ってきた。今週リオ・ファーディナンドの番組『Between the Lines show』に出演した際には、「本当に調子が良いんだ。そして面白いのは、今よりももっともっと成長できることさ」と豪語している。

現チームに与える影響力は疑う余地もない。彼の存在によってリヴァプールは落ち着きを取り戻し、組織として結束する。負傷者続出により、ユルゲン・クロップに言わせれば「三輪車のよう」だった昨シーズンとの決定的な違いはそこだ。

それは信じられないって? 昨季CL準々決勝のレアル・マドリー戦、センターバックコンビはナット・フィリップスとオザン・カバク、ベンチはベン・デイヴィスとリース・ウィリアムズだ。当然ながら、1-3で敗れている。

リヴァプールは昨季のプレミアリーグ総失点が「42」だったが、今季は「26」。ファン・ダイクが出場した直近のリーグ戦16試合は、わずか6失点に抑えている。アンフィールドには様々なスターがいるが、影響力という面では彼以上の存在はいないだろう。

プレミアリーグ最終節から約1週間後のCL決勝戦。ファン・ダイクはクラブ公式メディアで「僕の身体はつかの間の休息を楽しんでいるね。たくさんの緊張感ある試合でプレーした後にちょっとした打撃を受けたのは、身体が休息を欲しているというサインだったのかもしれない。今は全く問題ないさ。特別な夜になれば良いね」と語る。

これまでのキャリアでも数々のタイトルを掲げ、ピッチ上では欧州最高峰のディフェンダーとして君臨するファン・ダイク。だが、このような舞台に出場するのが「当たり前」と感じたことは一切ないという。特に昨シーズンの負傷、長く辛いジムトレーニングの日々を思い出すようだ。そしてリヴァプールを助けられなかったこと、オランダ代表としてのEURO2020出場を逃したこと、その惨めさを忘れられないという。「あの時は本当にひどかったんだよ」。そう振り返る。

だがその分、これから起こることは人生で最高のものになるかもしれない。

「(2019年の)CL優勝は夢が実現した瞬間だった。前年に決勝で敗れていたからこそ、特別になったのかもしれないね」

「でも、復帰できたばかりの今シーズンは、もっと特別に感じられるかもしれない。今はそう思っているんだ」

取材・文=ニール・ジョーンズ/『GOAL』リヴァプール番記者

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