2021-10-26-u22-japan-matsuoka(C)Akihiko Kawabata

Jの合間を縫う苦肉の策「日本だけ中1日」。U-22日本代表が厳しい日程で試されるもの

■23名全員参加のトレーニングは一度もなし

 U23アジアカップの予選グループKの試合は3チームによる巴戦。23日にカンボジアと香港が対戦し、26日に日本とカンボジアが、そして28日に日本と香港が対戦する。

 ここまで読んで「あれ? 間違いかな?」と思った方もいるかもしれない。AFC U23アジアカップ予選。今回の予選を純粋に大会として考えれば、日本の日程はかなり苦しく、少し奇妙でもある。「日本だけ中1日」なのである。

 Jリーグの合間を縫うように開催するための苦肉の策として、“日本だけ中1日で試合をこなす”という不思議な大会日程を自ら設定した。正直に言ってしまえば、そうでなければシーズン中の選手たちを集められなかったからである。

 実際、この日程でも内実はかなり苦しい。大会を前にした合宿自体は22日の金曜日から始まっているものの、初日から合流したのはわずか9名。土日にプロの公式戦がある選手たちはそちらを優先した関係で、全員がそろったのは大会前日の25日の月曜日だった。その25日の練習でも、日曜日の試合でフル稼働していた郷家ら4選手がウォーミングアップメニュー以外は別メニューでの調整のみ。23名全員参加してのトレーニングは結局一度もできないまま開幕を迎えることとなる。

 ただ、これもまた良いトレーニングであり、経験であり、またチャンスであるというのが冨樫剛一監督の考え方だ。「A代表になれば、ほとんど全員で練習する機会がないまま試合を迎えるのは当たり前」という前提を共有しつつ、その中で質の高いコミュニケーションを取り合って、対応できるかどうかが問われる。

■「代表あるある」を試す良い機会

2021-10-26-u22-japan-chase anrie(C)Akihiko Kawabata

▲17歳のチェイス・アンリ(尚志高)

 今回の日本代表は9月の合宿から採り入れた4−3−3の新システムをベースに戦うことが予想されるが、その習熟度はまだまだ低い。加えてこの急な日程をこなすわけだから、全体的な戦術理解の面でも、個人間の連係面でもうまくいかない点は多々あると思われる。

 準備不足ゆえ、チグハグになるようなこともあるかもしれないが、次代のA代表である彼らにとっては、こうした時間不足によって生まれる「代表あるある」を体感する良い機会と考えるわけだ。これを日本代表として「絶対に勝たなければいけない」というプレッシャーを受けながら味わうわけだから、若い選手たちが経験値を蓄える場として機能するだろう。

 中1日の日程についても、冨樫監督はターンオーバーの構想を持っていることを示唆している。「代表で国際試合をするのは初めて」(細谷真大=柏レイソル)、「国際試合は小学生のときの韓国遠征以来」(MF佐藤恵允=明治大学)といった選手も多い中で、できるだけ多くの選手に、日の丸を付けて君が代を聴いて臨む試合が生む独特の昂揚感と緊張感を体感させたい考えだ。

 コロナ禍の影響でA代表・五輪代表を除いた各年代の国際大会は軒並み中止され、その後の活動も国内合宿に限られてきた。国際経験という意味では穴が空いてしまったところがあり、特に遅咲きの選手たちの国際経験が殆どなくなっている現状には危機感もある。ただ、だからこそ、ここから積み上げていくものが大切になる。

 “代表としての責任を負いながら戦う国際試合”という異空間を経験すること。冨樫監督もその意義をこう語る。

 「ピッチの上に立ってプレーをしてみると、『あれ、いつもと違うな』というのは間違いなく感じると思います。そうした(国際試合の)経験を育成年代でしばらくできなかった中で、自分たちは一番最初にプレーをできる」

 同時に「もちろん2試合勝った上での話ですけれども」とも強調したのが代表が持つ独特の重みで、これまた体感した選手しか分からないものでもある。若い選手たちが国際試合を重ねながらタフになっていく。そのサイクルが、ようやくリスタートされることになる。

取材・文=川端暁彦

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