キャプテンを務めるMF松木玖生(FC東京)はグループステージ最大のライバルと目されるサウジアラビア相手に自身の「強み」を見せつけた。15分に利き足ではない右で先制点を奪い、同点に追いつかれた直後の78分には、MF山根陸(横浜F・マリノス)のCKを頭で合わせて追加点。この得点が決勝点となり、日本はグループ首位突破を決めている。【取材・文=川端暁彦】
■本職はボランチだが
「疲れ? 日本を背負っているんで、そこは大丈夫です」
3試合連続の先発となったMF松木玖生(FC東京)は、グループステージ突破を決めた試合後、そう言って笑顔を浮かべた。日本代表のキャプテンマークを巻いてピッチに立ち、各国の代表と戦い、そして結果を残す。そのことの重みを強く背負いながらこの大会に臨んでいる。
「ここまで自分が思っていたような結果は出ていない」
ハッキリとそういう言い方もしていた。十分な貢献度があるようにも見えるが、本人にはやはり「ゴール」という明確な軸がある。MF佐野航大(ファジアーノ岡山)が「一緒にやっていると、練習から一つのシュートを決め切ることにめちゃくちゃこだわっているのが分かる。あれはすごい」と驚き交じりに言うように、ボランチを本職とする選手でここまで“結果”にこだわる選手も珍しい。
ただ、それこそ松木玖生が考える自身の強みであり、自分が最もチームに貢献できる方法ということなのだろう。
実は冨樫剛一監督が最も評価していた松木の能力も「ゴール」である。2年前、U-22日本代表に松木を飛び級で招集した際に、指揮官が挙げたのも「得点を取れる場所を見付けて入っていく力があること」というものだった。その個性を、グループステージ突破の懸かったサウジアラビア戦で存分に発揮することとなった。
■「まだまだここから」
©AFC【提供:DAZN】1点目は「なんか余裕があった」と不敵に語るように、「DFも見えていたので、打っても相手の足に当たると思った」と冷静に一回切り返し、右足でシュート。さらに決勝点となった2点目はCKに対して力強くニアに入っていっての強烈なヘディング弾。これまた見事な一発だった。
そして試合のハイライトはもう一つ、1点のリードを守り切るために5バックの形に切り替えてからだ。「4−4−2のほうが、特にボールを持ったときは楽にできたと思う」と言う指揮官はあえて、「5レーンを埋めて跳ね返して我慢しながらカウンターも狙う」サッカーにトライ。その中でボランチに下がり、体を張って戦い続けた。
もっとも、本人は「そのくらい戦うのはベース」と断言した上で、2得点にも浮わついた雰囲気はなし。冨樫監督も「あのくらいはやってくれると思っていたし、別に本人も満足はしていないでしょう」とサラリと流したように、二人の認識は「まだまだここから」で一致している。
前回王者のサウジアラビアを砕いた日本は、勝てば世界大会出場権を得られる準々決勝に進むことになった。ただ、そこに向けて「キャプテン」としての仕事を果たすつもりだ。
「この感じでいくとチームが緩くなるのが目に見えているので、そこはしっかりやっていきたい」(松木)
引き締め直し、世界切符を懸けた決戦へ。日本の主将の視線は、すでに次の試合へ向いていた。
【今後のスケジュール】
準々決勝
対戦カード:U-20日本代表 vs U-20ヨルダン代表
日時:2023年3月12日(日)23:00キックオフ
※日本時間
※日本戦は決勝トーナメント以降もDAZNで配信予定
