■相手には15歳でA代表デビューの逸材も
17歳以下の世界一を決定するFIFA U-17ワールドカップが10日に開幕を迎える。世界各国の未来を担う精鋭が集う場であり、世界大会の中で最も年齢の低いカテゴリーの大会だ。
「今回も“死の組”になっちゃいましたね」
そう言って笑ったのはU-17日本代表を率いる森山佳郎監督。今大会の日本は、A代表が世界王者になったばかりの伝統国であるアルゼンチン、アフリカ王者として大会の優勝候補の呼び声も高いセネガル、レヴァンドフスキ世代以来の豊作と評されるポーランドと同居するタフなグループに入った。
実はこの大会、日本は第1シードグループに当たる「ポット1」に分類された。過去大会での実績に加え、アジア王者になっていたボーナスポイントが加わっての措置なのだが、「そうは言っても厳しい組に入る気がする」という指揮官の予感は的中。「各ポットで『ここは手強いぞ』と思った国が次々に入ってきた」(森山監督)という流れになった。
セネガルには15歳でA代表公式戦デビューを飾ったFWアマラ・ディウフがおり、アルゼンチンの10番を背負うクラウディオ・エチェベリはすでにリーベル・プレートのトップチームでもプレーする期待のタレント。ポーランドならイタリアのパルマでプレーする大型FWダニエル・ミコラエフスキなど、将来楽しみな選手の名前が次々と挙がる。
ただ、逆に言えば、「そういう相手とこの年でぶつかって自分の足りないものを体感したり、『俺はどこが相手でもやれるんだ』という自信を掴み取ることができる場」(森山監督)でもある。
選手たちからも悲観的な言葉は聞こえてこない。「強い国ばっかなので、めちゃくちゃ楽しみです」とDF永野修都(FC東京U-18)が目を輝かせ、「そういう国とやりたいと思っていた」とMF中島洋太朗(サンフレッチェ広島ユース)が臆せず語ったように、選手たちはむしろ歓迎ムード。世界大会ならではの対戦カードの連続に「みんなでワクワクして臨めれば」(森山監督)というスタンスを貫く。
Getty Images■この世代の強さがA代表につながる
「まあ、前回(2019年大会)もそうだったからね」と森山監督が笑って振り返ったように、前回も優勝候補の呼び声高い欧州王者のオランダといきなり初戦で当たるタフなグループを突破した経験もある。むしろ森山監督が重視するのは「その先」だ。
GK鈴木彩艶、DF半田陸、FW西川潤らを擁した前回大会はグループステージを圧倒的な強さで突破しながら、ラウンド16でメキシコに苦杯。「あの反省を活かさないといけない」とした上で、こう語る。
「グループステージで燃え尽きるのではなく、ノックアウトステージに入ってから、『さあ、ここからが本当のワールドカップだ』と言えるチームでありたい。この世代からそうなっていかないとA代表でも同じことになってしまう」
もちろん、グループステージで対峙する各国は先を見据えて戦って勝てるような安楽な相手ではない。「『ここに全力をぶつけるしかない』という考え方もあると思う」とした指揮官は、「ただ、実際にワールドカップで優勝するような国は、そのリスクを負いながらグループステージを戦うもの」とも言う。
「グループステージは選手をうまく入れ替えながら、全員の力で戦っていきたい」と言う。実際、予選に当たるAFC U17アジアカップでは、半分ずつのターンオーバーを重ねて体力的に温存しつつ勝ち残り、栄冠を勝ち取った。「1試合ずつ成長していく」というコンセプトを持ちつつ、ノックアウトステージに入ってからベストに仕上がるチームを目指す考えだ。
■タレント性に秀でた個+組織力
「世界大会でも点は取れると思っている」
このチームについて、かつて決定力不足が代名詞だった国の人とは思えないようなコメントをしたのは森山監督。
すでにトップチームの公式戦を経験しているFW道脇豊(ロアッソ熊本)、MF佐藤龍之介(FC東京U-18)、アジアでMVPと得点王のW受賞となったFW名和田我空(神村学園高等部)といったタレント性に秀でた個人の力に加え、アジア予選前から力を入れてきた組織的なビルドアップからの連動した崩しには特に自信を持つ。
「常に上のレベルを意識して強調してきた」プレー強度とトレーニングからこだわってきたボールを奪う部分についても、世界大会であらためて問われる要素。「この代表で要求されたことで守備の部分が成長できた」というのはかなりの数の選手から共通して聞かれた言葉だが、あらためてその成果が問われることになりそうだ。
また指揮官が「大会中に伸びていく選手が必ず出てくる」と世界大会の刺激を受けて開花する選手の出現にも期待を寄せるように、大会を戦う中で出てくるニュースターの登場にも期待したい。
「根拠もなく『優勝、優勝』と言いたくはない」とした森山監督は、「ただ、本気で大会最終日まで勝ち残るつもりで戦う。それが選手の成長にも繋がる」と強調する。
そのためにも大切な初戦、U-17ポーランド代表戦は、日本時間の11日18時から幕を開ける。
