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u17-japan(C)Hiroyuki Sato

最後に響いた“9番不在”。U-17日本代表が直面した古くて新しい課題

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攻めても攻めてもゴールは遠く……

 「勝たなきゃいけない試合でした」

 廣山監督は開口一番、そう振り返った。

 オーストリアとの激戦になった準々決勝、中2日の連戦で互いに消耗を感じさせる試合内容だったが、ゴールに迫った回数で日本が上回ったのは異論のないところだろう。

 ただ、そのゴールが遠かった。一方、オーストリアは後半開始早々にCKからのミドルシュートを突き刺し、そしてこれが両国の命運を分ける決勝点となった。

「相手がショートCKから勇気を持ってこちらの一瞬の隙をついて点を決め切ってきた。それが小さいけど、とてつもなく大きな差になって終わった」(廣山監督)

 試合を振り返ると、1点を追う展開になった後半よりも、追い風の中で攻勢を継続していた前半が悔やまれる流れだった。指揮官も「前半は仕留められなかったところが痛い」と振り返る。

「崩せてはいた」とMF和田武士(浦和レッズユース)が振り返ったように、オーストリアの守備の急所を突いて脇から崩す攻撃が機能していなかったわけではない。

 また「コンディション的には我々のほうが多分良かった」と語るように、メンバーが固定気味だったオーストリアに対し、選手を使い分けながら勝ち進んできた日本には、体力的な差もあった。オーストリアが本来のパフォーマンスを出し切れてないのも明らかな試合内容だったが、それゆえに相手が割り切って試合を運んできた部分もある。大男たちが敢然と固めるゴール前は、日本の選手たちにとって巨大な壁となった。

 そして結果は、0-1。

 指揮官は「本当に手が届くところまでチームとしてはきている」と世界トップへ迫るための距離感をはかりつつ、同時に「足りないピース、日本全体で変えていく、意識しないといけないものの1つ」として、あらためて「ゴール前の決定力というのはまだまだです」と振り返った。

最後に出ていた“9番不在”

そもそも廣山監督はチーム結成当初から「FWが点を取るチーム」というコンセプトを掲げ、日本サッカー積年の弱点である「9番不在」からの脱却を掲げてきた。

「過去のU-17を含めた世界大会の総括で必ず『9番不在』が言われてしまう。その状況を変えたい」(廣山監督)

 実際、昨年行われたAFC U17アジアカップ予選ではほぼ全得点がFWの選手たちによるものになるなど、FWが決め切るチームとして機能してきた。大きなテーマだった9番、つまりセンターFWについても、大型選手複数が候補に挙がり、しのぎを削ってきた。

 ただ、今大会の“9番”と見込まれたFW瀬尾凌太(桐蔭学園高校)、谷大地(サガン鳥栖U-18)が、揃って負傷離脱。代わって“背番号9”として呼ばれたのはセンターFWではない北原槙(FC東京U-18)で、その北原も大会開幕前日に負傷離脱となり、最終的にはテクニックが武器の技巧派FW小林柚希(大宮アルディージャU18)がメンバー入りとなった。

 このため、メインのセンターFWとなったのは、当初シャドー起用が予定されていた浅田大翔(横浜FM)であり、その控えは代表の国際試合は未経験だった未知数のFWマギージェラニー蓮(FC琉球U-18)だった。浅田は責任感を持ってタフに戦い、マギーも期待以上の成長を見せてチームに貢献してみせた。

 浅田を軸に、典型的なセンターFWを置かない形のサッカーは攻撃面で機能しており、ここまでの6試合で多くのチャンスを作ってきた。ただ、相手をこじ開けるような力強さに物足りなさがあったことは否めず、無得点に終わったグループステージのU-17ニューカレドニア代表戦、厳しい戦いを強いられたU-17北朝鮮代表とのラウンド16でも、その課題は見え隠れしていた。

 廣山監督もその点については自覚的だった。

「大会を見ていてずっとそれは感じていたんですけど、個人のペナの中でゴールに向かう決断とか技術とかパワーとか、クオリティも含めて、『ちょっとこれはまだまだ足んないぞ』と思っていたところが、最後の結果に繋がった。そこで嘘は出ないような結果だったと思います」(廣山監督)

 ニューカレドニア戦、北朝鮮戦、そしてオーストリア戦。いずれもゴール前で身体的に優れた選手がタフに守ってくる中で、「センターFWタイプのストライカーがもう一人でもいてくれれば」という感覚が残る内容となった。

「9番だけじゃないんですけど、ペナに入ったところでのコントロールのところから迫力が増すような選手が、この年代でもどの国を見ても多くいます。我々はそれ以外の形で点を取って勝ち上がったんですけど、トーナメントでそのモードが増していく中で、最後は足りなかった。それがないと簡単には勝ち上がれないというところだと思います」(廣山監督)

 単純に「決定力不足」という話でもない。最後にゴール前で、得点の可能性よりも「ボールを失わない」ことを優先するようなファーストタッチが先に来てしまう選手も多かった。

「ワンタッチで打つとか、打てるところにファーストタッチを置くとか、そういう感性とか習慣は足りていなかった。ただ、そこが問われる段階までチーム力がたどり着いているのも間違いないとも思っています」

 奇しくもU-20W杯も同じような課題を痛感する形で敗れているが、それも偶然ではないだろう。

成果は未来へと繋げるのみ

また廣山監督は、今大会の成果として「ダブル(二重の)チームに近いところまでは来ている」という点も語った。

「日本全体の育成の環境だったり、指導者の方々の努力だったり、選手の意識の変化というところでの成果があるのは間違いない」

 大会前にセンターFWに限らず負傷者が出て招集できない選手も多く、予選以来の主軸であるMF長南開史(柏レイソルU-18)は出場停止、最後の試合は大会最高水準のDFに成長していた元砂晏翔仁ウデンバ(鹿島ユース)は体調不良で不在。そんな状況でも極端な戦力低下は感じさせなかった。

 過去のU-17W杯では選手層の薄さが課題に挙げられることも多かっただけに、その点で成果があったのも間違いない。

 また、かつてはよく言われたフィジカル面の問題、特にコンタクトプレーの弱さはアフリカ勢と対峙しても見劣りしなかった。それは各年代の代表が世界大会を戦う中で得た課題を育成にフィードバックしていった成果でもある。

 そしてもちろん、今大会での経験は次代に還元されていくことになる。U-17W杯が毎年開催になったことは、選手招集を含めた運営面(そして予算の面)には難しさもある一方で、予選さえ突破すれば、こうしたフィードバックを毎年得られるというポジティブな面も明確にある。

 そしてもちろん、毎年この場で刺激を受ける選手たちの成長にも繋がっていくだろう。悔し涙を流し、痛感した課題を抱えてチームに戻る代表選手たちはもちろん、ここに入れずに悔し涙を流した選手たちのブレイクスルーにも、あらためて期待しておきたい。

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