現地記者の評価は…
今年1月に名門リヴァプールに加わった南野拓実の初年度は、公式戦14試合で0得点0アシストに終わった。
リーグ戦ではスタメン出場が2試合だけ。お世辞にもインパクトを残したとは言えない。コロナ禍による中断や、チャンピオンズリーグ(CL)での敗退など不運な部分もあったが、誰よりもこの数字に満足していないのは南野本人だろう。そして日本のファンも、少なからず歯痒さを覚えたに違いない。
今回、南野の半年間を振り返るにあたり、知り合いの記者を介して英紙『The Times』のリヴァプール担当に本音を聞いてみた。するとポール・ジョイス記者からは「まだ分からない」という答えが返ってきた。「コロナ禍もあり、出場機会が少なすぎて判断しかねる。ただし、この7カ月間で環境に馴染むことはできたはずだ」
実は、他の記者にも同じ質問をぶつけたが、誰もが口を揃えて「まだ分からない」と南野への評価を保留したのだ。確かにリーグ戦で2試合しか先発を許されなかった選手を判断するのは時期尚早だ。では、悔しさを覚えた日本(少なくとも筆者)と現地の温度差はどこからくるのか?
「保留」の理由
Getty Imagesそれは移籍金だろう。リヴァプールはザルツブルクに契約解除金725万ポンド(約10億円)を支払って獲得したわけだが、これは現在の移籍市場では微々たる額だ。昨夏、レンジャーズに移籍したライアン・ケントの移籍金と同額なのだ。知名度は……そう高くないだろう。ちなみに、ケントはリヴァプール下部組織出身、23歳の有望なウィンガーだ。
だから、CLでリヴァプール相手に1得点1アシストの実績を引っ提げて加入したとはいえ、南野への期待値は熱視線を送る日本の私たちと現地では端から違ったのだ。もし3000万ポンドの移籍金ならば厳しい目に晒されただろうし、そもそも、その額ならばリヴァプールは獲得に踏み切らなかったはずだ。さらに30年ぶりのリーグ制覇を果たした今季に限っては、誰も厳しい目で選手を査定しないのだ。だから南野の半年間の評価は「保留」が正しいのだろう。
では、期待したほど出場機会を得られなかった理由は何か? いくつか要因がある。まずはカップ戦での敗退だ。南野のデビュー戦は1月のFA杯3回戦、エヴァートンとのマージーサイド・ダービー(1-0)だった。直前のリーグ戦からスタメン9枚の変更となり、若手選手と一緒に先発出場を果たした。その後もシュルーズベリーとの再試合を除けば、5回戦のチェルシー戦で敗退するまでFA杯では先発起用されていたのだ。そしてCLでは、例え相手が難敵アトレティコ・マドリーでも、2年連続で決勝に進出していたリヴァプールにとってはラウンド16での敗退は想定外だった。
そこにきてコロナ禍である。今季はクラブ・ワールドカップやスーパーカップを含めて7つの大会に参加し多忙を極めたため、シーズン終盤は息切れが予想された。だが中断により、疲労の懸念が薄れたのだ。もちろん主力に負傷者が出れば状況は違ったはずだし、実際にプレミアデビューとなった1月のウォルバーハンプトン戦(2-1)は、負傷したサディオ・マネに代わって投入されたものだ。リーグ再開後のエヴァートン戦でプレミア初先発を飾れたのは、モハメド・サラーがケガ明けだったからだ。そう考えると、前線にあまりケガ人が出なかったのは、チームにとって朗報だが南野にとっては誤算だった。
真面目さと余裕
Getty1度もゴールに絡めなかったプレイ内容はどうか? チャンスがなかったわけではない。FA杯のエヴァートン戦では1度だけ訪れたヘディングシュートの好機を決め切れなかった。プレミア初出場のウルヴズ戦では、裏を取ったサラーと並走して完全にフリーでボールを要求するも、パスが出てこなかった。
FWディヴォック・オリギがパスを出さないのは覚悟していたが、サラーも決定的な場面ではパスをくれなかった。これは南野の信頼度の問題ではない。サラーにしろ、マネにしろ、決定機では自らゴールを奪って今の地位を築いた選手なのだ。8月のバーンリー戦では、パスをくれないサラーにマネが激怒するシーンさえあったくらいだ。
南野に最大のチャンスが訪れたのは、FA杯のチェルシー戦。ボックス内でこぼれ球に反応するも、トラップがわずかに大きくなってしまい、左足でシュートを放つ寸前で敵にボールを突かれた。7月のアーセナル戦でもゴール前の混戦で足元にボールが入ったが、トラップを選択したことでDFに潰された。どちらの場面もベンチ前のクロップ監督は天を仰いでいた。
日本代表戦なら絶対に決めてくれるような好機を、余裕の無さから逸機したのだ。だからこそクロップ監督は2月に「彼は何でも頑張ろうとする」と南野の日本人らしい真面目さを指摘したのだ。「守備時の貢献度は一流だ。本人が言ったわけではないが、彼は我々の指示を忠実にこなそうとするだろう。しかし、まず我々が望むのは彼の自然体でのプレイなんだ」
南野は、前線の中央でロベルト・フィルミーノの代わりに起用されると頻繁に下がってビルドアップに絡んでいた。指揮官には真面目に“フィルミーノ役”を演じているように映ったのだ。無論、中盤からパスを引き出すのは南野の本来の長所なのだが、レギュラー3名に比べるとゴール前での“余裕”が足らず、頑張る場所を間違っているように見えたのだ。だからこそ、控え組と一緒に出場するときはもっとゴール前だけで勝負する意識を持つべきだったのだろう。そして1つでも結果が出れば、焦りも解消されたかもしれない。
勝負は来シーズンから
(C)Getty Imagesそれでも、限られた出場機会の中で確実に成長を遂げた。最終節のニューカッスル戦では、前半28分に小気味よい反転から強烈なミドルシュートを放って見せた。しかしゴール左隅に決まりかけたシュートは、今季プレミアで最多セーブ数を誇るGKマルティン・ドゥブラフカの好セーブによって阻まれてしまった。
今夏の移籍市場では、ウルヴズのアダマ・トラオレやレスターのハーヴィー・バーンズなど、ウィンガーの補強も噂に出ているが、南野の立場は何も変わらない。なぜなら、“保留中”の南野はまだ本当のスタートラインに立っていないのだ。
勝負は来シーズンからだ。だから私たちファンも、今季の無得点なんて全く気にする必要ないのだ。だって、1点も奪えなかったフィルミーノの最初の13試合を覚えていないでしょ!
文=田島大
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