Takumi Minamino Jurgen Klopp Roberto Firmino LiverpoolGetty/Goal

フィルミーノ・マークⅡ:“最高の”南野拓実はリヴァプールで存在感を示すことができるか?

念願の初ゴール

まだコミュニティ・シールドでの1ゴールのみだが、そんなことは関係ない。

南野拓実にとっては、何かしらの変化が起こるきっかけとなっているかもしれない。少なくとも、クラブは確実にそう願っているだろう。

この日本人のアンフィールドでの滑り出しは、決して快調なものではなかった。そもそも、シーズン途中で新しいクラブに加入するというだけで難しいことだ。さらに、世界中が活動停止を余儀なくされたコロナウイルス禍の数週間前の移籍だったこともあり、状況は困難を極めていた。

どんなに強い個性を持つ選手でも、この状況を打開するのは難しいだろう。しかし、プレミアリーグのシーズンが再開する中、遅まきながら南野に“レッズ(リヴァプールの愛称)”に十分溶け込める兆候が見え始めた。

8月29日にウェンブリーで敗戦を喫したことは、昨シーズンを支配したチャンピオンに求められるものとしては、概してネガティブな結果だった。

実際にリーグ戦が始まるのは2週間後だが、新シーズンを祝うセレモニー的な役割を果たすこの大会でPK戦の末敗れたことは、一部の者にとっては十分ショッキングな事態だったはずだ。中立的な視点で言うならば、センターバックが高い位置を取れていないなど、いくつかの点については論理的に正しい指摘だ。

しかし、一方でポジティブな要素もあった。その中で最も重要なのは、南野についてだ。

59分に交代で出場すると、この25歳は左サイドでアンディ・ロバートソンと共にアーセナル相手に印象的な活躍を見せた。ボールを受けると見事にキープ。最前線でサディオ・マネ、ロベルト・フィルミーノ、モハメド・サラーとの連携も滞りなく、アーセナル守備陣の脅威になって見せたのだ。ピッチに現れてから14分以内に移籍後公式戦初ゴールを記録すると、PK戦でも落ち着いて成功している。

高まる評価

vandijk-minamino-liverpool(C)Getty Images

フィルジル・ファン・ダイクは、まさに南野に強い衝撃を受けた選手だった。このオランダ人は昨年9月にアンフィールドで行われたチャンピオンズリーグ(CL)の試合後、ジョーダン・ヘンダーソンと共にユルゲン・クロップに南野の獲得を進言していた。

その夜リヴァプールは4-3で勝利したが、南野はその巧みなボールタッチやムーブ、そして止まることを知らないほどの運動量でリヴァプールに混乱を起こし続けた。「できることなら彼と契約してください!」それがファン・ダイク達が監督に伝えたメッセージだった。

「タキ(南野の愛称)はこれまでずっと非常によかった」と敗戦後にファン・ダイクは語っている。「ロックダウンの後から、タキはザルツブルクで僕たちと戦ったときのタキになったんだ」

「彼はとてもエネルギーにあふれていて、ファンタスティックな選手だ。殻を破ることができたことは、彼自身にとっても、僕達にとっても素晴らしいことだね」

クロップをはじめ、クラブのメンバーも同様に活気づいてきている。

オーストリアで行われたプレシーズンの期間中、南野の表情は明るく見えた。それに加えて、見違えるほど動きがシャープに、力強くなり、練習中にもよく声を出すようになっていた。ロックダウン期間は英語力を向上するよい機会となり、「Zoom」「Skype」「WhatsApp」を活用したセッションではこれまで以上にチームの輪によく溶け込んでいた。

「ああ、彼は間違いなく計算できる選手になれる」クロップはコミュニティ・シールドの後でこう語った。監督は十分に気がついている。「リヴァプールの前線3人のバックアップ要因を十分に準備出来ているのか?」という疑問の声が大きくなっていることに。そして、ディヴォック・オリギ、ライアン・ブリュースター、ジェルダン・シャキリ、ハリー・ウィルソンらをもって、前線のバックアップ体制の継続を期待できるのかという疑問もあることに。

しかし、南野のクオリティであればバックアップは可能だとクロップは信じている。ピッチ中央に侵入できるワイドの選手として、そして9番の役割として、フィルミーノの代役としてはより計算できると信じているのだ。先発出場は加入以来まだ5試合しかないが、クロップによれば、これから出場機会はもっと増えるだろうということだ。

「私達にとって本当に有用な選手だ」クロップは熱を込めてこう語っている。「小さいスペースで本当に良い働きをする。ファーストタッチは特に見事で、ラインの間の状況判断が本当に速い。本当に素晴らしいよ!」

この特徴とユーティリティ性こそが、リヴァプールが熱心に南野を呼ぼうとした理由なのだ。

フィルミーノ・マークⅡ

Firmino & MinaminoGetty/Goal

CLで大活躍したあの試合よりも前から、リヴァプールは南野に目をつけていたそうだ。ある情報筋によると、あの(試合の)時点ですでに取引は進んでいたという。しかし、季節が秋から冬に変わると南野へと興味がどんどん集まり、マンチェスター・ユナイテッドやボルシア・ドルトムントのようなクラブが争奪戦に加わり始めたのだ。

もちろん、破格の移籍金が人気に一役買ったことは間違いない。“レッズ”のスカウトチームは南野のザルツブルクとの契約を見て、移籍金がたったの725万ポンド(約10億円)であることに喜んでいた。当時、まだ他の競合チームはその事実に気がついていないようであった。

実際そうだったのだが、リヴァプールはこの選手がコストの2倍以上の価値があると信じていた。南野はすでに代表選手としても実績があり、CLの出場経験もあった。そしてここ6年間は所属チームで毎年リーグ優勝を経験しているのだ。

ザルツブルク監督ジェシー・マーシュも破格の売却であったことを認めている。「リヴァプールは彼をとても、とても、とても安く手に入れたよ」『リヴァプール・エコー』紙の「Blood Red Podcast」で5月にこう語っていた。

クロップと同様にマーシュも、南野はセンターフォワードとしてフィルミーノの代役になりうる、そして競争できる存在だと信じている。

「サラーやサディオのポジションでプレーするのがベストではないだろう。彼らはポジションをひっきりなしに変える動きを買われているからね」とマーシュは語っている。

「彼にはフィルミーノのポジションの方が良いと思っているよ。ボールを持っていないときはプレスに行く用意ができていて、ポゼッション時にはビルドアップでほぼ10番のような動きができるし、ペナルティエリアに入ればゴールを決めることもできるからね」

「フィルミーノもその点は上手だが、タキにも同じくらいできることだと思っているよ」

ファーストステップ

2020-08-30 Minamino Takumi LiverpoolGetty Images

ザルツブルクで示したように、南野はチャンスクリエイトも得点もできる。実際、出場189試合で64ゴールという記録は、フィルミーノが前所属のホッフェンハイムでの記録(153試合49得点)に非常に近い。

そして両者の共通点として、自身の天性の才能に加えて、ユーティリティ性、運動量、そして競技への姿勢には目を見張るものがある。

もちろん、南野がフィルミーノと同程度の重要な存在になるためには、かなりの幸運と相当量のハードワークが必要だろう。しかし、彼が行動を起こそうというのなら、南野は適切なクラブに所属しているし、適した監督がついている。

そして、南野は25歳。チームに所属できる時間も十分あるだろう。

「すべての人が彼のクオリティを称賛するまでにはまだ時間がかかるかもしれないが、その時は必ず来る」

できるだけ早くその時が来てほしい……。リヴァプールのファンはそう願うことだろう。

契約選手に対する要求は尽きないし、それも理解できることだ。しかし、南野との契約は1月に行われたばかりで、恩恵に預かろうというには時期尚早だということはたやすく忘れられてしまっているのではないか。

コミュニティー・シールドで実現した南野の前進は、赤いユニフォームを纏った彼がこれから登る階段のファーストステップであることを証明するものになるだろう。

取材・文=ニール・ジョーンズ(Neil Jones)/『Goal』リヴァプール番記者

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