■最大のスターを失うマジョルカ
マジョルカはこれから久保建英なしで1カ月以上を過ごすことになる。先のレアル・マドリー戦は1-6という痛酷な敗戦を喫しただけにとどまらず、チームの最たるスター選手を失うきっかけにもなってしまった。
マジョルカの関係者によれば、久保は左足半月板に問題を抱えてしまい、保存療法によって今後4~6週間離脱する。つまりオサスナ、レバンテ、レアル・ソシエダ、バレンシア戦の欠場は確定的で、それ以降の数試合も失うことになるのだ。かてて加えて、10月のインターナショナルウィークで日本代表に合流することもない。
久保は敵地(いや、本拠地か)サンティアゴ・ベルナベウでのレアル・マドリー戦で、ひざに打撃を受けてハーフタイムに交代。松葉杖をついてスタジアムを後にすることになった時点で、マジョルカ首脳陣と監督のルイス・ガルシア・プラサには戦慄が走っている。というのも、この日本人の離脱はただ負傷者一人が出た、だけでは済まないからだ。
ガルシア・プラサにとって久保の離脱は、チームにとってかけがえのない戦力を失うことを意味している。それは前節ビジャレアル戦(0-0)から7選手を変更したレアル・マドリー戦のスタメンで、久保を2戦連続で起用したことからも明らかだろう。指揮官は負傷者の続出もあって勝利の見込みがなかった試合でも、久保にわずかな希望を託していた。いずれにしろ次節オサスナ戦の方がレアル・マドリー戦よりも重要なために、当初からハーフタイムに彼をピッチから下げる考えだったが、そのタイミングがケガと重なったのだった……。
■久保の価値と断固拒否した買取OP
Eric Alonso / Getty片やマジョルカ首脳陣にとって久保の離脱は、グローバル戦略においてかけがえのない存在を失うことを意味している。「大きな痛手だよ。マジョルカが世界にエリート・クラブとしてのイメージを発信していく上で、タケは大きな魅力を有しているからね。アジアでは多くの人々が、彼が何をするのかを見届けようとテレビの前に座っている」。首脳陣の一人はそう語ってから、ため息をついた。
そもそもマジョルカのオーナーであるアメリカ人実業家ロバート・サーバーは、久保の再加入に大きな期待を寄せていた。久保のレアル・マドリーでの年俸額は、マジョルカの選手たちを大きく凌駕する200万ユーロ(約2億6000万円)という額だったが、ロバートは商業とスポーツの両面での見返りを期待して、その支払い負担を受け入れていたのだった。マジョルカは加えて、レアル・マドリーに対して久保の買い取りオプションを求めたものの、こちらはフロレンティーノ・ペレスに断られている。
マジョルカはフェル・ニーニョ(ビジャレアルからレンタル)、パブロ・マフェオ(シュトゥットガルトからレンタル)の獲得オペレーションで、シーズン終了後の買い取りオプションを手にすることに成功したものの、久保についてはそうできなかった。レアル・マドリーの名物会長はマジョルカに久保の年俸を負担する以外のことは求めず、昨季のようにレンタル料として300万ユーロ(約4億円)を徴収することもしなかったが、選手の保有権に関してはどんな条件付けも許さなかったのだ。「タケ・クボは100%、レアル・マドリーの選手でなければならない」、そう言わんばかりに。フロレンティーノはまだ20歳の日本人の若者に対して、マジョルカ首脳陣と同様に大きな、とても大きな期待をかけている。
■マジョルカ復帰の決断と今後
(C)Getty Images久保本人もフロレンティーノの期待はひしひしと感じており、だからこそマジョルカでカルロ・アンチェロッティにアピールしていくことを誓っていた。そう、彼にはレアル・ソシエダにレンタル移籍する選択肢もあったものの、それを断ってマジョルカ復帰を希望したのである。
久保は欧州カップ出場権を争うソシエダより、残留を争い、なおかつ勝手を知るマジョルカの方が継続的に出場でき、活躍も見せられると考えていた。事実、久保はマジョルカ復帰直後の試合以外では、すべて先発で出場していた。それなのにレアル・マドリー戦が、その流れが途絶えてしまうきっかけになってしまうとは……。
久保のこれからの目標は、決して焦ることなく、それでいて可能な限り早く戦列復帰を果たすことだ。前述したように半月板の手術は行わず、保存療法で治していく方針が立てられているが、レアル・マドリーもマジョルカと定期的に連絡を取りながら負傷箇所をどう取り扱っていくかという決定に関わっていく。
いずれにしても久保本人は、『インスタグラム』で負傷が「何も深刻なものではない」ことを強調している。20歳の日本人選手を愛する多くのマジョルカ・サポーターは、彼のメッセージを読んで気持ちを落ち着かせ、再びそのプレーが見られる日を心待ちにしている。
文=セバスティア・アドロベル(Sebastia Adrover)/マジョルカ地方紙『ディアリオ・デ・マジョルカ』
翻訳=江間慎一郎




