Takefusa KuboGetty Images

ソシエダの主演はまさに久保建英!一流にしか不可能なゴールと結果を継続的に残すことの重要性【番記者コラム】

甘美な過去を現代に

タケ・クボの名が、またテレビから聞こえてくる。バスクの地方局だけでなく、スペインの全国ネットでも「クボのアシストで」「クボのゴールで」とキャスターが口にしている。久保はソシエダがジローナ相手につかんだ新たな勝利の中で、眩い輝きを放った。自陣と敵陣を行ったり来たりする混沌の試合展開は次々にゴールを生み出していったが、このゴールショーは記録上、久保のアシストから始まり、久保のゴールで終わったのだった。

久保はまず8分、ダビド・シルバの精度が高い、若干カーブがかかったスルーパスから左サイドを突破。すると自分も、左足で若干カーブがかかったグラウンダーのクロスをファーに送り、アレクサンデル・スルロットの先制点をお膳立てした。天才的な技術を有するシルバと久保の気の利いたパス2連発から生まれたゴールではあるが、久保とスルロットの連係も素晴らしい。

中盤ダイヤモンド1-4-4-2の2トップで、久保は最初にアレクサンデル・イサクをコンビ組み、彼のニューカッスル移籍後にはウマル・サディクが相方になった。が、サディクは加入からわずか10日後に靭帯断裂の重傷となり、その代わりにスルロットが前線レギュラーに抜擢されている。ずっと隣のFWが誰になるのか分からなかった久保だが、スルロットとはヨーロッパリーグのオモニア・ニコシア戦の後半から、がっちりハマった。あの後半戦、右サイドからの右足クロスでスルロットに1アシスト目を供した久保は、次のエスパニョール戦でもGKアレックス・レミーロへの果敢なチェイスから2アシスト目を記録し、そして今回3試合連続でノルウェー人FWのゴールを導いている。

「あいつは俺のことを分かっているし、俺もあいつのことを分かっている」。こうした信頼関係の構築は、練習だけでなく実戦で結果を残すことで果たされる。久保とスルロットを見ていて思い出されるのは、銀河系軍団(ラウール、フィーゴ、ジダン、ロナウド……)のレアル・マドリーと最後までラ・リーガ優勝を争い、チャンピオンズリーグにも出場した2000年代初頭のソシエダの看板2トップ、巨人ダルコ・コバチェビッチとその周りを衛星のように動き回るニハト・カフヴェジ。日本人とノルウェー人は、あの甘美な過去を現代によみがえらせてくれた。

アーティスト集団の主演

ただ久保という選手の範疇は、ニハトのようなセカンドトップだけにとどまらない。彼はハビ・デ・ペドロ、ヴァレリ・カルピンのような技巧派でもある。ソシエダは1-2、2-3とジローナにスコアをひっくり返され、ビハインドを負い続けたが、その際には久保とシルバの連係が光り、ソシエダのプレーは彼らを中心として流麗さを手にした。久保&シルバ含めて合計7人の左利きがピッチに立っていたソシエダは、ハーモニーと高精度のプレーで状況を逆転させた。久保はそのアーティスト集団の主演を務めていたと言っても過言ではない。

久保は相棒スルロットやミケル・メリーノにチャンスを供給したほか、単独でのドリブル突破から自らシュートを放った。そして4-3とソシエダが逆転して迎えた85分、ダメ押しとなる5点目を今度はスルロットの横パスから記録。ペナルティーエリア内左で相手DFと対峙した久保は、左足で素早くボールを蹴り出し、同じ足を使ってすかさずシュート。グラウンダーの完璧にコースを突いたボールが、GKフアン・カルロスの横っ飛びもむなしく枠内右に収まった。

あの足の運び方、シュートコースの取り方、その動作のスピードは一流のクラックにしか実現不可能なもの。レアル・マドリーを離れた久保は「期待外れ」ともされたが、その「期待されていた姿」はソシエダでしっかりと目にできる。そして久保とスルロットは、もはやラ・リーガの旬なコンビとして扱われている。

当たり前になった「ソシエダのタケ・クボ」

takefusa-kubo(C)Getty Images

久保の今季ラ・リーガ成績は2ゴール2アシスト(全公式戦では2ゴール3アシスト)。昨季のラ・リーガ得点数は「40」と深刻な得点力不足に陥っていたソシエダにとって、彼は数字を直接的に増やしてくれる選手だ。加えて、ヘタフェやマジョルカで学んだであろう献身的な守備・プレスも、このジローナ戦のような試合で勝利するためには必要不可欠だ。常時スタメンで、安定して質の高いプレーを見せ、コンスタントに数字を残す久保は、すでに指揮官イマノル・アルグアシルにとってかけがえのない選手、スタンダードとなっている。

ジローナ戦の久保は最初から最後まで輝いた。ソシエダではこの1試合のみに限らず、その才能の輝きを断続的でなく継続的に示してくれるはずだし、少なくとも「最初」の時期はこれ以上ないほど眩しいものになっている。こうしてテレビのスポーツニュースは、マドリーではなくソシエダに所属するタケ・クボの名を、さも当たり前かのように口にしていくのである。

文=ナシャリ・アルトゥナ(Naxari Altuna)/バスク公共放送EITB記者兼レアル・ソシエダソシオ

翻訳=江間慎一郎

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