マンチェスター・シティのジョゼップ・グアルディオラ監督は昨夏、守備陣の立て直しのため新たなセンターバックを求めた。だが、ルベン・ディアスほどすぐに結果で応えることができる選手がいるとは思いもよらなかっただろう。
このポルトガル人DFはプレミアリーグ第3節レスター・シティに2-5で敗れた2日後にクラブに合流。当時、マンチェスター・シティは昨シーズンから突きつけられている課題のために苦戦を強いられていた。昨季はプレミアリーグのタイトルをリヴァプールに譲り、チャンピオンズリーグ(CL)ではリヨンに衝撃の3失点を喫して敗退してしまったのだから、守備の立て直しは急務となっていたのだ。
そんな中でやってきたのがディアスだった。ディアスはベンフィカから6200万ポンド(約86億8000万円)で加入してから26試合に出場。シティは今やプレミアリーグの首位に立ち、リーグ最少失点を誇る。ディアス加入以降、全コンペティションで20のクリーンシートを達成。公式戦13連勝、リーグ戦9連勝と、クラブはついに優勝を射程圏内に捉えた。
この23歳は守備陣の中心で堅い守りを見せるだけでなく、リーダーシップと統率力を如何なく発揮。キャプテンを務めていたヴァンサン・コンパニが18か月前に去って以来、クラブが欠けていたものを取り戻した。
■「U-11の頃からリーダーだった」
Getty Imagesディアスのマンチェスター・Cでの“リーダーぶり”を見ても、ベンフィカで指導に携わった者たちであれば、驚くことはないだろう。ユース・テクニカルコーディネーターのロドリゴ・マガリャンイスは『Goal』で次のように語っている。
「U-11の頃からリーダーだったんだから、当然のことだね。その様子を見て、私はベンフィカに彼を獲得するよう報告したんだ。普段から技術レベルや判断力を見ることはできるが、ルベンはカリスマ的だったんだ」
「彼はキャプテン。司令官だ。皆に話しかけ、他の選手のために自分が責任を負う。彼のリーダーとしての能力には誰も疑問を持たないよ」
彼のハイタッチやポジティブな意味で背中を叩く仕草によって、攻撃にスポットライトが当たりがちなクラブに守備への愛が戻ってきた。特にセンターバックのパートナーであるジョン・ストーンズは彼のおかげで大きな変化を遂げている。その影響は指揮官のグアルディオラもこのように語る。
「単にいいプレーをするだけではなく、他の選手にもいいプレーをさせられる。90分間話し、90分間コミュニケーションを取り、ひとつひとつの行動の中で自分たちがすべきことを言っているんだ。監督の私からすれば、彼を外すことは難しい」
■C・ロナウドをメンターに
(C)Getty Images彼の影響力は守備陣だけに留まらない。
1月26日のウェスト・ブロムウィッチ戦でのことだ。ディアスはキックオフ前にペップをまねてリヤド・マフレズに激励の言葉をかけた。結果的に試合序盤こそ不安定な出来であったが、徐々にディアスの言葉が染み渡ったかのように大量5得点を挙げて勝利している。
マガリャンイスはディアスがチーム全体にかける声を「まるで魔法の力を持っているよう」と表現する。
「ウィンガーやストライカーに光を送っているみたいなんだ。ベンフィカに加入したときは、まずBチームに加わった。パフォーマンスが十分に高くなかったんだ。だが、ルベンのキャラクターはそれでも変わらなかった。試合に対する情熱や欲求は強く、他の人とは比べ物にならない」
シティの関係者によると、ディアスは成功への並々ならぬ決意があるという。サッカー界の頂点に立つために必要なことをすべて兼ね備えた選手たちを見て学び取っているのだ。
ベンフィカ時代はコーチ陣の話を注意深く聞いていた。グアルディオラの下でも可能な限りの結果を出し続けている。
ポルトガル代表でも彼はあらゆる先輩を使って、成長しようとしている。同じポジションで、経験豊富なペペやブルーノ・アウベスはもちろんのこと、想像しがたいかもしれないが、ディアスはクリスティアーノ・ロナウドをメンターとして慕っている。
5度のバロンドール受賞者であるロナウドは、ディアスのプレースタイルとは地球の端から端までほどかけ離れているが、それでも稀代のスーパースターから様々なことを学びとった。ベストの選手でいようとするハングリー精神や体のケアに余念がないことがディアスの感覚にマッチしていたのだ。
ペップもディアスの高い向上心には感銘を受けているという。
「彼は学ぶ意欲があり、いつでも体や心のケアに余念がないことは私たちにとって非常に印象的だ。いつも驚かされているよ。(試合の)次の日、朝8時半からジムにいるんだ。自分のルーティンをこなして、食事も完璧にとる。自分の職業のことを24時間考えているんだ」
■大きな環境の変化にも「僕が望んだこと」
Getty/Goal少年時代から過ごしたクラブを去り、マンチェスターに移ることは難しい決断だった。
ベンフィカでの最終日、ロッカールームでチームメイトに別れを告げようとして、ディアスは精一杯涙をこらえた。だが同時に、自らが望んだステップアップだと心に言い聞かせていた。
彼はシティへのステップアップについてこのように語っている。
「ベンフィカではすべての試合を勝とうとしてプレーした。たしかに(プレミアリーグとは)違うリーグだった。競争も激しくはなかった。けれどメンタリティは今と変わらなかったね。今は明らかに大きなチャレンジをこなさないといけない。けれど、それは僕が望んだこと。このクラブが僕にくれるものなんだ」
成功への決意があったとしても、コロナウイルス禍の中イングランドに移籍したことで、ピッチ内外で難しいスタートを余儀なくされた。それまで彼はリスボン郊外で両親と一緒に住んできたため、環境の変化は大きかったはずだ。
だからこそ、元ベンフィカGKのエデルソン、代表でチームメイトのジョアン・カンセロ、ベルナルド・シウバ、そして他のポルトガル語を話す選手たちがすぐに馴染めるように彼を助けた。
Gettyその過程でストーンズはディアスと親友のような関係を築き上げ、ディフェンスの中心で再起を果たした。2人が出場したことで恐るべき記録が樹立されている。
2人がそろって先発した12試合で、シティはたった1試合しか失点していない。チェルシーに3-1で勝利した試合で、大勢が決した後でカラム・ハドソン=オドイに喫した1ゴールのみだ。
その堅い守備でシティは8連勝を飾り、プレミアリーグで単独首位に。カラバオカップでもライバルのマンチェスター・ユナイテッドを下し、決勝へと進出した。
まだタイトルは勝ち取っていないが、グアルディオラはディアス獲得の効果を全く疑っていない。
「向こう5~7年間を担う素晴らしい選手と契約することができたと確信したよ。簡単には見つからないレベルの選手だ」
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