18日のラ・リーガ第37節、レアル・ソシエダは本拠地レアレ・アレナでのジローナ戦を3-2で制した。日本代表MF久保建英は先発フル出場を果たし、前半に驚異的なプレーを連発している。
ソシエダの今季ホーム最終戦であり、退任が決定しているイマノル監督やアーセナル移籍が確実視されるスビメンディらがサポーターに別れを告げる一戦。試合前のスタンドには、ソシエダのマフラーを頭の上にかざすイマノル監督が描かれた巨大絵が掲げられていた。
2万8000人が集まったこの試合で、ソシエダは5分に先制点を獲得。ブライス・メンデスが蹴ったCKから、パブロ・マリンがヘディングシュートでネットを揺らした。パブロ・マリンは直後、イマノル監督のもとに駆け寄って熱い抱擁を交わしている。
先制したソシエダだったが、10分にはジローナに追いつかれる。アスピリージャが放ったクロスからストゥアニに右足のシュートを決められた。
前半はここから一人の男を中心に進んでいく。そう、ソシエダの14番・久保である。いつも通り右サイドをスタートポジションとする日本人FWは、アタッキングサードのあらゆる場所に顔を出して、その極上のテクニック、突破力を発揮。ジローナにとっては常に脅威な存在だった。
久保が最初に猛威を振るったのは18分のこと。ペナルティーエリア内に入り込むと、アスピリージャに足を蹴られたとしてPKを誘発した(一部ではファウルを取るほどの打撃ではなかったとの指摘もあったが)。このPKをキッカーのオヤルサバルが冷静に決め切り、ソシエダが勝ち越し。オヤルサバルもイマノルとハグを交わした。
同じように、イマノル監督と抱擁を交わしたいであろう久保の勢いは、その後も止まらない。22分にはペナルティーエリア内中央から左足でシュートを放つも、これはGKクラピフツォフがセーブ。さらに36分には右サイドでボールを持ち、縦への加速で相対するブリンドをいとも簡単にかわしたが、ゴールライン際から折り返したボールは違うDFに弾かれている。
存在感を発揮し続ける久保。極めつけは46分だった。フリーキックの流れで、ペナルティーエリア手前右に落ちてきたボールを左足ダイレクトボレー! まるで01-02シーズンのチャンピオンズリーグ決勝レアル・マドリー対レヴァークーゼン(2-1)で、ジダンが決めた伝説のボレーを彷彿とさせる、流麗なフォームから足を横に振り抜くシュート。強烈な勢いのボールは枠内左めがけて突き進んだが、横っ飛びしたクラピフツォフが懸命に伸ばした右手で弾いている。決まっていれば衝撃的なゴラッソだったが、結局、前半は2-1で終了した。
後半、ソシエダは少しインテンシティーを落として、ジローナの攻勢を受けることに。その流れで久保も前半のような存在感を失った。そして77分、ジローナが再び同点に追いつく。スルーパスからツィガンコフがDFラインを突破し、その横パスを途中出場のポルトゥが押し込んだ。過去ソシエダに3シーズン在籍し、ピッチに立った際にはサポーターから喝采を受けていたポルトゥは、ゴールした直後に両手を合わせて謝罪をしていた。
またも追いつかれたソシエダは、トゥリエンテスらがミドルレンジからシュートを狙っていくがなかなか決め切れず。だがドラマは最後に待っていた。ペナルティーエリア内、グラウンダーのクロスをオヤルサバルがトラップし損ねると、浮かんだボールを途中出場マリエスクレナが右足ダイレクトボレー。勢いのあるボールが枠内に飛び込んだ(マリエスクレナもイマノルと抱擁。今日のゴールは全員が下部組織出身が決めている)。試合はそのまま3-2で終了し、ソシエダがイマノル監督のホーム最終戦で、見事勝利を飾った。レアレ・アレナでの勝利は、じつに7試合ぶりだ。
なお試合終了前から涙目だったイマノル監督は、終了後、選手たちに胴上げされ、その後にはピッチの外周を回って各スタンドの最前列に集まった観客と一人ひとりタッチを交わしていった。6シーズン半にわたりソシエダのトップチームを率い、5シーズン連続の欧州カップ出場とコパ・デル・レイ優勝を果たしたソシエダ史に残る生え抜きの指揮官は、サポーターにとって最後まで“私たちの一人”だった。
ただ、イマノル監督について「キャリアの崖っぷちだった僕を救ってくれた」と話していた久保にとって、恩師に感謝のゴールを決められなかったのは悔しいことだったかもしれない。今日の久保は試合終了まで、チャンスがあれば貪欲にゴールを狙っていた。
