レアル・マドリーは13日、ブラジル人DFマルセロ(34)の退団セレモニーを開いた。
2006-07シーズンの冬の移籍市場で、フルミネンセからマドリーに加入したマルセロ。あの悪魔の左足ロベルト・カルロス氏の後継になれるのか疑問視されていた当時18歳のブラジル人左サイドバックは今、マドリーの有数のレジェンドとしてクラブを後にすることになる。
マドリーに16シーズン在籍して出場した試合数は、外国人最多記録となる548試合(38得点101アシスト)。今季ラ・リーガ&チャンピオンズリーグ優勝によって獲得タイトル数は25個となり、今年1月に逝去したパコ・ヘント氏の最多記録を塗り替えた。そして何よりもパワーにあふれたR・カルロス氏とは異なる、とにかくテクニックに優れた左サイドバックとして、フットボールシーンで一時代を築いている。しかしその時代が、世界最高の左サイドバックとして君臨した時代が過ぎ去ると、ここ最近はベンチが定位置に。それでも今季はマドリーの主将として、ピッチ外で選手たちを鼓舞する役割を引き受けて、2回にわたりシベーレスの女神像にクラブ旗を巻きつけている。
マルセロ自身は今季限りで切れるマドリーとの契約の延長を望んでいたものの、しかし競争力を失ったとみなされる選手を容赦なく置いていくのがマドリーだ。それでもマドリーは、クラブ有数のレジェンドを彼にふさわしいセレモニーで送り出している。
クラブ練習場で行われたセレモニー。まずフロレンティーノ・ペレス会長から感謝と労いの言葉を受けたマルセロはその後に登壇して、ときに涙で言葉を詰まらせながら、言葉を紡いでいった。
「これまでのチームメート、監督に感謝を。でも何より用具係、警備員ら、表舞台の裏で厳しい仕事に従事してくれたスタッフたちに感謝をしたい。僕は彼らの仕事について強調したい。だって、自分はプレーだけに従事することができたんだから。いつだって準備万端で、ね。それとフットボールをプレーし始めた頃から、いつも僕に寄り添ってくれた妻にも。今日の僕があるのは、彼女のおかげなんだ」
「ブラジルから去るとき、チャンピオンズでプレーすることが僕の頭にあった。そして僕は今、世界最高のクラブで、最もタイトルを獲得してきた選手としてここを去るんだ」
現マドリー主将はまた、自身がマドリーに加入したときの主将ラウール・ゴンサレス氏に対してもメッセージを送っている。
「そして、ここにいるラウールについても特別に言及させてほしい。僕の子供が生まれたとき、彼はキャプテンとして多くのことを教えてくれた。ゆりかごに色んな物を詰めてプレゼントしてくれたね。そのことは決して忘れることはできない。それから僕は君のことを模範的な人物だと、その背中を追いかけたいと思った。今日、僕は君こそが僕の憧れと言い続けながら、ここを去ることができるんだ」
「頭を上げてここを去るよ。家族は僕のことをとても誇りに思ってくれている。自分は本当に幸せな人間だ。この人生で手にしたものは努力あってこそだけど、自分のそばにいてくれる人々にも恵まれた。みんな、ありがとう。これはアディオスじゃない。僕はマドリーから去ると感じていないんだから。入場チケットをくれないと、問題を起こすからね(笑)。マドリーの未来は、これまでのように安泰だ。それの僕の息子だって下部組織にいる。僕はここに子供としてやって来た。そして、今一人の男として出ていくんだよ」
なお、このスピーチを見守っていたラウール氏、現レアル・マドリー・カスティージャ監督も、両目に涙を浮かべていた。今日、マドリディスモ(マドリー主義)は悲しくも誇り高い涙を流していた。
取材・文/江間慎一郎


