レアル・マドリーに現実が覆いかぶさった。もはや驚異ではなくなったバルセロナとのラ・リーガ優勝レースに勝ちはしたが、チャンピオンズリーグで頂に登るだけの力量はやはり不足していたのだ。彼らはマンチェスター・シティの優位性も弱点も読み解けず、かてて加えてその影響力に疑いの余地のないセルヒオ・ラモスの不在がその不甲斐なさを完全なものにした。チャンピオンズの王たるジダンはゲームプランを間違え、決して機能しないそれに囚われ続けた。その一方でグアルディオラは、思惑通りに試合を展開させたのだった。
■シティがあらゆる局面で凌駕
(C)Getty Images中盤に4選手を置くことなくロドリゴとアザールに賭けたジダンのスターティングメンバーは驚きだったが、その賭けは中盤に才能豊かな3選手を擁し、どこで違いを生み出せるかをすぐさま解釈できるグアルディオラ相手では、必然のごとく裏目に出た。シティは、あらゆる局面でマドリーを凌駕していた。
エティハドを舞台とした試合での絶対的な刻印であるハイプレスは、マドリーのボールを後方から繋ごうとする意志を台無しにした。シティはハイプレスをときに疎かにもしたベルナベウでのファーストレグとは違って、今回は高いインテンシティーと絶妙なポジショニングでもってマドリーを前から圧迫し続けている。彼らのシステムは前線にスターリング、フォーデン、ガブリエル・ジェズスを配する1-4-3-3で、中央のフォーデンとウィングの内もう一人がヴァランとミリトンに襲いかかると、残り一人がマドリーの逃げ道を封鎖。ジダンはその前線の包囲網を突破して、脆弱になるはずのシティの中盤&DFラインを突くことに固執し続けたが、最後まで成功にたどり着かなかった。
シティのハイプレスの効果はまざまざと表れている。シティは相手陣地で試合を進めることができ、マドリーがロングボールを使わなかったために後ろを振り返る必要などなかった。マドリーはロドリゴ、ベンゼマ、アザールの3トップが、途中出場のアセンシオが一度そうしたようにDFラインの裏抜けを狙いさえしたらシティを迷わせられたかもしれないが、その選択肢を度外視したことにより自陣で身動きが取れなくなっていた。
ビルドアップのファーストパスで鍵を握ってきたS・ラモスが不在の中、ヴァランとミリトンは彼の代わりは務められず、カセミロもボールを散らせないことでモドリッチとクロースも後方に下がらざるを得ず、前線と中盤は分断……。こうしてジダンのチームはミスにミスを重ねていくことになり、スターリングの先制点の場面に代表されるような決定機を許していくことになった。
■効果的だったシティの攻撃
(C)Getty Imagesこの試合のマドリーはシティの守備に無理強いをさせることがなかった。中央からの攻撃には厚みがなく、サイドではカルバハル、メンディーが深みを取れず、アザールの存在感もごくわずか。ジダンのプランで機能していたのは、本職右サイドバックのカンセロとの1対1で優位に立てたロドリゴ、シティの粘りのない両センターバックにとって悩みの種になる動きを見せたベンゼマがせいぜいというところだった。
しかもグアルディオラはファーストレグのように中央のレーンをロドリ&ギュンドアンで塞いでおり、ベンゼマがその2ボランチの後方で利を得た場面は、ロドリゴを起点として生まれた同点ゴールの場面などごくわずかしかなかった。
対してグアルディオラは、ノックアウトラウンドの決着をつけるために何をすべきか、しっかりと理解していた。試合の行き先を決めたのはハイプレスだったが、縦に速い攻撃も目を引くものだった。マドリーがどうにかして後方からボールを繋ごうとしていたのに対して、シティはエデルソンからロングボールを使うことにためらいがなかったというのは、何とも皮肉がきいている。
シティのそうした攻撃はベルナベウでも見られたが、この試合でも効果てきめんだった。マドリーが前線からプレスを仕掛けてもシティは常に的確な解答をしてみせ、しかも今回はサイドバック(ウォーカー)を内に絞ることも必要としなかった。クロース&モドリッチがロドリ&ギュンドアンに対応すると、空いているサイドバックにパスが出され、そのサイドバックが今度はデ・ブライネらにボールをつなげて一気にゴールまで詰め寄る。マドリーのハイプレスを前にそうした道が断たれた際には、エデルソンがスターリングとG・ジェズスに直接ロングボールを放った。ポゼッションができない場合、相手ペナルティーエリアの近くにボールを放ることをためらわなかった。
■ペップが導く正当な勝利
(C)Getty Imagesグアルディオラはまた、デ・ブライネを輝かせることにも成功している。デ・ブライネの後半のパフォーマンスは感動的ですらあったが、それは1-4-3-3を使用するマドリーの基本的な弱点と言えるモドリッチ&クロースの裏、つまりカセミロの両脇をしっかりと突いていたからだった。グアルディオラは選手たちのポジションを流動的に変えながら、その二つのレーンへの道を指し示していたのだ。モドリッチとクロースが前へと出てくる度にデ・ブライネ&フォーデン(それとスターリング&ガブリエル・ジェズスも)は彼らの背後で姿を現し、カセミロはまるで迷子にでもなったように対応に苦慮。ジダンが両サイドバックをそれぞれの守備エリアにとどめたことも、デ・ブライネらがやりたい放題できる要因となっていた。
デ・ブライネのボールの持ち運び、フォーデンの偽9番としての動き、スターリングのドリブル突破、G・ジェズスのファーストレグからの一貫したダイナミズム……。シティはこれらの選手たちを駆使して、かつてないほどに縦に速い攻撃を見せている。グアルディオラはトランジションで危険な場面を生み出す上で、ボールコントロールに固執しなかった。
ジダンはシティの明らかな優勢を前にしてもリアクションを取らず。バルベルデ投入で中盤の守備の筋肉量を増やすことも、ヴィニシウス投入で攻撃のリズムを加速することもしなかった。そうした出来事の集約が、ヴァランの2回にわたる悲惨なミスから生まれた失点、というわけである。この試合のマドリーはどこを探してもリーダーシップが見つからず、終始不安定だった。シティはS・ラモスとジダンの采配を欠いたマドリー相手に極めて正当な勝者となり、準々決勝への切符を手にしている。
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