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【徹底分析】CL決勝進出へレアル・マドリーがすべき“たった1つ”のことは?西紙分析担当「正当性から見つめない方がいい」

現地時間5日、レアル・マドリーはチャンピオンズリーグ準決勝セカンドレグでチェルシーと対戦する。

ホームでのファーストレグは劣勢ながらも1-1で切り抜けたが、アウェイゴールを許してのドロー。決勝進出を果たすためには、敵地でのセカンドレグで勝利、もしくは1点以上を奪ってのドローが必要になる(1-1の場合は延長戦へ)。つまり、最低でも1度はネットを揺らさなければならない。トーマス・トゥヘル監督就任後、公式戦23試合で17回もクリーンシートを達成しているチェルシーからゴールと奪うという、難しいミッションが待っている。

では、セカンドレグに向けてレアル・マドリーは何を狙い、何をすべきなのだろうか? しかしスペイン大手紙『as』の分析担当であるハビ・シジェス氏は、ロス・ブランコスについて「フットボール的な正当性から見つめない方がいい」と指摘する。その意味を紐解いてもらった。

文=ハビ・シジェス(Javi Silles)/スペイン紙『as』試合分析担当
翻訳=江間慎一郎

■一応の根拠

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レアル・マドリーのことをフットボール的な正当性から見つめない方がいい。チャンピオンズリーグ(CL)では決勝まであと一歩のところまでたどり着き、ラ・リーガでも優勝を争い続ける彼らだが、かなりの部分でロジックから逸脱している。そのプレーのレベルだけに鑑みれば、ここまで生き残っているのはあり得えないことで、そのサバイブぶりはフットボールの摂理を超越したものだ。マドリーは多くの試合で良質なプレーを見せられていない。だが、相手より優れている必要もない。マドリーであること、それだけで事足りるのである。

それでも、マドリーが批判にさらされてきた状況を一変させた一応の根拠は存在している。それは勝利に慣れ親しんだ成熟した選手たち、感情のコントロール、守備の安定、試合に応じた戦術変更である。

着実な戦術こそが勝利を手にできる唯一の道。ジネディーヌ・ジダンは選手たちに対して、そのことを今一度理解させた。誰も努力を惜しんではならず、チームメートのサポートを放棄することは許されない。彼らは今、一枚岩でプレーしており、ラ・リーガ逆転優勝を果たした昨季終盤の姿を思い出させている(試合を通してそうできないことがあるところも、またマドリーなのだが……)。MFとDFのライン間を狭めて、ウィングは相手サイドバックのオーバーラップをケア。(CL準々決勝)リヴァプール戦、マルコ・アセンシオが自陣のゴールライン近くまで下がって守備をしたり、カセミロがセンターバックとの距離が開かないよう気を配ったりしていた様子が、まさにそれだ。現在のマドリーは各ラインがしっかりとつながり、できる限り相手にスペースを与えないようにしている。

また複数のシステムを使い分けられることも、今季終盤のマドリーの強みだ。ジネディーヌ・ジダンがどのシステムを採用するかはキックオフ直前まで分からず、相手監督にとって試合展開の予測は困難となっている。基本システムである1-4-3-3のほか、センターバック3枚とウィングバック2枚を配置したり、オサスナ戦のように1-4-2-3-1を使ったり、MFを4人並べてみたり……。ヴィニシウス・ジュニオールをサイドに開かせ、アセンシオはライン間でプレーし、ルカ・モドリッチがカリム・ベンゼマと同じ高さでプレッシングを仕掛けるなど、ジダンは数多くの選択肢を有して、常にサプライズを提供している。

そしてマドリーの最大の長所は、多種多様な方法で勝利までたどり着ける能力にこそある。ジダンはこれまで、単なるチームの管理人と過小評価され続けてきたが、今季は各試合で適当なプランを用意できるインテリジェンスをまざまざまと示している。

(CLラウンド16)アタランタ戦では後方から緻密なビルドアップを見せてハイプレッシングを回避し、彼らの背後を突くことに成功。前線ではイスコが偽9番としてうまくマークを引き付けていた。またリヴァプール戦では、アセンシオとヴィニシウスが深みを取り、サイドチェンジからアレクサンダー=アーノルドが位置する守備の脆弱なサイドを攻略。バルセロナとのクラシコでは計算され尽くしたトランジションが光っていたし、フェデ・バルベルデが5番目のDFとしてジョルディ・アルバの進行を妨げ、ルーカス・バスケス(現在は負傷中)が中央でペドリかリオネル・メッシに付くことを可能としていた。ジダンがプランを誤ったのはチェルシーとのファーストレグのみで、それも後半になってからしっかりと修正を施している――まあ完全に劣勢だった前半の内に、ベンゼマのゴラッソによって1-1に追いついてしまえるのがマドリーではあるのだが。

■黄金の三角形

luka modric toni kroos - real atletico - champions league final - 28052016Getty Images

マドリーの復活において、ジダンという監督のほか、決して欠かせない選手たちも存在している。そう、マドリーの巨大さはカセミロ、モドリッチ、トニ・クロースの黄金の三角形、最も洗練されたストライカーのカリム・ベンゼマの巨大さとイコールで結ぶことができるはずだ(エデル・ミリトンの予期していなかったブレイクも、それに一役買ってはいるが)。クロースとモドリッチが本来のレベルにあれば(クラシコ以降は芳しくない)、マドリーのフットボールは一気に芳醇なものとなる。彼らこそが創造性の導き手であり、後継者は現在のところ存在しない。彼らが縦パスを通さず、サイドチェンジをしないマドリーは、ベンゼマとのつながりが遮断されて一気に輝きを失ってしまう。

モドリッチとクロース以外の選手は足元にボールを欲し、深みを取る概念も有していない。マドリーが相手のプレー構造を破壊するためには、モドリッチとクロースが必要不可欠。ベンゼマだって、あらゆる場所に顔を出すことはできないのだから。それがないマドリーはすべてを損なうことになる。パス回しのリズムも、サイドの崩しも、縦への突破も……。ただ現在の彼らは、そのフットボールが不完全であるときにも、カセミロ、またミリトン(負傷中でなければセルヒオ・ラモスも)を中心とするセットプレーから何とかしてしまえるところも強みなのだが。

■不条理

20210425 Real Madrid Champions LeagueGetty Images

さて、スタンフォード・ブリッジでのチェルシー戦は、マドリーの復活が本当かどうかが試される試合となる。マドリーは彼らとのファーストレグで、今季これまで何度もそうしてきたように、死が運命付けられながらも生き延びた。あの一戦、リスクを冒した前線からのプレッシングは、クリスチャン・プリシッチ、メイソン・マウントがライン間でボールを受けることを許してしまった。モドリッチがベンゼマと同じ高さでプレッシャーをかけ、カセミロがジョルジーニョについてしまったことで、チェルシーのセンターバック、ウィングバック、中盤は彼らのボール奪取を無効化することに成功している。ブルーズはマドリーを自陣に引き寄せから背後を突き、カセミロの両脇にスペースを見つけることができていた。なぜマドリーが0-1でもそれ以上の大量失点でもなく、1-1で前半を終えられたのかは分からない。後半は、ジダンがブロック守備を修正したことで理由がつくが……。

セカンドレグ、マドリーは一つのジレンマを抱えることになる。アウェーゴール差という少しの劣勢は攻撃を義務付けるものだが、しかしその義務こそが危険なのだ。それはフィジカル的に優れるチェルシーのトランジションの餌食になることを意味しているのだから。もしマドリーがハイプレッシングを仕掛けるのならば、しっかり要点を抑えなければいけないし、セカンドボールを支配する必要もある(ファーストレグではできなかった)。そしてさらなる問題は、チェルシーが手堅い守備も見せられることである。マドリーが攻めに出る場合はサイドに開き、ベンゼマのサポートとともにセンターバックとサイドバックの間を突かなければならない。もちろん、それには最高のモドリッチとクロースも不可欠だ。

――ただし、マドリーというチームは、そうしたロジカルな攻めが必要ないことだって多々ある。見せているプレーが十分ではなくても、サバイバーモードになれば十分であることが。そのことを説明する必要はない。説明することもできない。ただ王者の気質、負けられない意地でもって、どうにかしてしまう不条理なチームこそがマドリーなのだ。とどのつまり、彼らの徹底分析など、しても意味がなかった。

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