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なぜマンチェスター・Uはバルベルデやファヴレを差し置いてラングニックを暫定監督に選んだか?

3月10日、9時半少し前。マンチェスター・ユナイテッドから何かしらのビッグニュースが報じられることは明らかだった。

正午には、クラブが初めてフットボール・ダイレクターを雇ったことが確認された。この人事にあたって取りざたされていた名前の中には、実際にこの職に就いた男は入っていなかった。

「ジョン・ムーター」は、オールド・トラッフォードやキャリントンの外ではあまり知られていない人物だった。

契約から数時間でムーターの名前のGoogle検索数は急上昇した。だが、試合を見に行くサポーターでさえムーターのことやクラブとの関わりについて一切知らなかったのに、他のクラブの主要人物はすでに彼と深い関係にあったのだ。

2018-19シーズン、ムーターは欧州を飛び回り、界隈のトップクラブに自身を売り込んでいた。その中でRBライプツィヒにいたラルフ・ラングニックと初めて出会ったのだ。

この二人が良好な関係を築いていたことで、ユナイテッドはラングニックとの暫定監督就任交渉が円滑に進んだのである。

■数ある選択肢の中から…

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プレミアリーグでワトフォード戦に敗れた土曜日、オーレ・グンナー・スールシャール解任を決断すると、議論は暫定的に今季を率いる監督の候補に向かった。

シーズン中盤に正式契約をファーストチョイスとして考えるということは、このクラブではハードルが高かった。誰か他の候補を招き入れるまでは、今シーズン終了までクラブの面倒を経験豊富な監督に任せる。これが最もふさわしい選択肢だった。

暫定監督の候補として5人の名前が挙がっていたようで、ムーターとテクニカル・ダイレクターのダレン・フレッチャーが主導してエルネスト・バルベルデやリュシアン・ファーブルと会談を行ったという。セビージャのフレン・ロペテギも含め、「非常によい」選択肢が2~3あったというが、面接の過程で際立った印象を残したのはラングニックだった。

ユナイテッドの首脳陣が特に感銘を受けたのは、ラングニックのプラン。クラブが陥ったスランプをどのように抜け出すか、明確な指針を持っていたのだ。

このドイツ人は会談終了後に監督職を引き継ぐよう説得され、来夏に暫定監督の契約が終了した後も相談役としてクラブに残る2年間のオプションが与えられた。

ロコモティフ・モスクワでラングニックは満足していたと言われており、日曜日の報では、モスクワから移籍して暫定職に就くことに最初は抵抗があったと言われている。だが、元ホッフェンハイムのボスは、再び監督職に就けるチャンスを魅力に感じていた。

コンサルタント契約についてはエド・ウッドワード(マンチェスター・ユナイテッドの副会長、実質上のCEO)が後押ししたという情報がある。ラングニックの「信じられないほどの知識と経験」が首脳陣の大きな助けになると考えているのだ。

ウッドワードは今年副会長を退任すると見られているが、顧問としてクラブに残る可能性もある。

現在マネージングディレクターを務めるリチャード・アーノルドがウッドワードの後任となる見込みだが、アーノルドはサッカーへの見識をそれほど持っていない。だからこそ、豊富な知識を持つラングニックを残すことは非常に都合がよいのだ。

ラングニックはまた、自身の後任となる正式監督の人事に関わるとみられている。現在はマウリシオ・ポチェッティーノが最有力候補だろう。だが今注力しなければいけないのは、ピッチ上のパフォーマンスを向上させることだ。

■変化は見られるのか?

Michael Carrick Ralf RangnickGetty Images

マイケル・キャリックが暫定監督を務めていた日曜日のチェルシー戦で、クリスティアーノ・ロナウドを先発から外した事実は、すでにラングニックがチームに影響を与えていたことを示唆している。

キャリックやクラブ関係者はこの可能性を否定しており、ラングニックがフレッチャーにイヤホンで指示を出していた可能性についても全面的に否定した。実際フレッチャーが会話をしていたのは、スタンフォード・ブリッジのスタンドの高いところに座っていたアナリストだったとのことだ。

ラングニックは自身の抱えるスタッフを「少人数」連れてくることになっているが、コーチ陣のコアメンバーは変わらない。

キャリック、キーラン・マッケナ、マイク・フェランは引き続き現職に留まると予想されている。キャリックは、ラングニックに政府からの労働許可が下りるまで引き続きチームを率いることになっている。

それでも、木曜日の夜にオールド・トラッフォードで行われるアーセナル戦までには、ラングニックはチームに合流できるだろう。クラブもそれを認めている。

だが、ファンはいつものように、もう少しの間我慢しなければいけない。面接で首脳陣に強い印象を残した計画や哲学がどれほどのものかを知るためには、少し時間がかかるだろう。

理屈上は、クラブが望む場所に戻ってくるためにはラングニックは理想的な監督だったと言えるだろう。今こそラングニックがそれを実現しなくてはならない。

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