■1回戦から至高の組み合わせ実現
2連覇中の現王者でこの大会の巧者vs勢いに乗っている絶好調軍団
これが今週から始まるチャンピオンズリーグ第2ラウンド、ラウンド16の目玉であるレアル・マドリー対パリ・サンジェルマンの様相だ。
今季、国内で低調気味のレアル・マドリーは、周囲を黙らせるためにもこの一戦で実力を見せつけるぞ!と意気込んでいる。
一方のPSGは悲願のビッグイヤー獲得のため、222億円もの大金を投じて優勝請負人、ネイマールをバルセロナから奪取。さらに昨季の国内チャンピオン、モナコから、フランスで何年かに1度の逸材と言われる若手ストライカー、キリアン・ムバッペを引き抜き、昨年までのエース、エディンソン・カバーニと合わせてMCNなる欧州最強クラスの攻撃網を形成した。
その効果は絶大で、今季のPSGは国内では無敵。序盤から首位に君臨し、1月のディジョン戦での8-0など、ここまでの全試合の4分の1で5ゴール以上の大量得点と、他を寄せ付けない攻撃力を見せつけている。
■力を測る格好の一戦に
そんな彼らにとって真のライバルは、国内ではなくヨーロッパにある。
2月14日のレアル・マドリー戦は、『弱者相手に大勝して喜ぶお山の大将』ではなく、強豪相手でも結果を出せることを示す絶好のチャンス。と同時にこれだけ投資してラウンド16止まりではお話にならないという、崖っぷちの試合でもある。
Getty Imagesこのレアル戦では、PSGの選手たち、特にネイマールのギアはトップに入ることだろう。アスリートは、ハイレベルになればなるほど、それぞれの試合でどのくらいの力を出せば勝てるのかを自然とコントロールしているという。レアル戦の4日前に行われた国内リーグのトゥールーズ戦でも、0-0で折り返した後半戦、ネイマールはギアを一段上げて、颯爽と決勝点を奪って見せた。このレアル戦では、フランスリーグに来てからの6カ月間で、まだ見せていなかったレベルのパフォーマンスを披露するかもしれない。
そんな勢いのあるPSGだが、CL決勝トーナメントのような舞台で勝ち進む経験では俄然レアルが勝る。チーム力という点でも彼らのほうが熟成度は高いだろう。
■PSGが抱える弱みとは…
現在のPSGのウィークポイントを挙げるなら、一つはサイドバックだ。

本来左SBはレイヴァン・クルザワがレギュラーだが、彼は意欲的に攻撃に上がって流れを活性化するのは得意だが、ラストの仕上げが雑で、せっかくのクロスを無駄にすることが非常に多い、という悪癖に加えて今季はコンディションも今ひとつ。ここ数試合ウナイ・エメリ監督は、昨夏レアル・ソシエダから獲得したユーリ・ベルチチェを先発で起用している。ベルチチェはクルザワほどのダイナミックさはないが、要所要所の処理が丁寧で、「お!?上手い!」と思わず口をつくような気の利いた動きも光る。クルザワが右腿に痛みを訴えていることもあり、スペイン勢慣れした彼がレアル戦に先発出場する可能性は高い。
そして右サイドバックのダニ・アウヴェスも、グループリーグのバイエルン戦では相手フォワードに好き放題やられていたから、ガレス・ベイルとのマッチアップにでもなれば苦戦しそうだ。
もう一点は、これは前からの課題だが、アンカーのポジション。在籍7シーズン目のチアゴ・モッタはオートマチズムという点に関してはチームにフィットしているが、ケガがちでコンディションに不安がある上に、35歳と年齢を重ねたこともありピーク時よりもパフォーマンスは落ちている。PSGはエンゴロ・カンテを狙っているが、現在欧州屈指のボランチであるこの逸材をチェルシーがやすやすと手放すわけはない。
この冬は浪人中のレアルOB、ラサナ・ディアラを獲得。ディアラはレアル退団後、ロシアリーグを渡り歩いたのち15-16シーズンにマルセイユに入団したが、その時は即デシャン監督からフランス代表に呼び戻されたほどの実力・経験の持ち主だ。カップ戦に続き直前のトゥールーズ戦でもエメリ監督は彼を先発で起用してコンディション調整をはかっているが、「長らく公式戦から遠ざかっていたため90分プレーできるだけのコンディションはギリギリ」というのがトゥールーズ戦後の監督の見解。またモッタについても「療養から明けたばかりでレアル戦は尚早」と話した。レアル戦はディアラかモッタの不在を埋めていたアルゼンチン人のジョバンニ・ロ・チェルウソ、あるいはマルコ・ヴェッラッティ、アドリアン・ラビオ、ユリアン・ドラクスラーの3人に中盤を任せる策もあるが、いずれにしても今季は中盤が定着していない。真の強豪相手にここでのせめぎ合いを支配できないとなると戦況は厳しくなる。
ちなみにカバーニもトゥールーズ戦は軽い腰痛を理由に欠場した。レアル戦に万全に臨むために大事をとったものとみられるから、MCNの3人は揃ってサンティアゴ・ベルナベウのピッチに立つだろう。加えて今季はアンヘル・ディ・マリアも好調で、これまでもCL戦での活躍が目立つ彼がバックアッパーとして控えていることは好材料だ。
■両者好調で大一番へ

Gettyimagesエメリ監督は1-0で勝利したトゥールーズ戦のあと、「さらに自信を強固にできた。いい形でレアル戦に臨める」と話した。同じ日レアルも、ロナウドのハットトリックでソシエダを5-2で破った。前哨戦でのこの大勝は、レアル勢の士気を上げる上で大きな意味があったはず。
両者にとって、絶対に負けられないこの一戦。
こういう時こそ、レアルは心底強い。ホームで戦う彼らの勝利は濃厚だ。それだけに勢いにノっているPSGの実力がどれだけのものかを知るには絶好の機会だ。
真の実力を賭けたぶつかり合いがどういう結果になるのか、面白い一戦になるのは間違いない。
文=小川由紀子




