PSGとの連戦で酒井宏樹が悟った“現在地”…改めて感じた「王者」との距離

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(C)Getty Images
パリ・サンジェルマンとの連戦で計0-6と力の差を見せつけられたマルセイユ。両試合とも出場した日本代表DFが悟った“現在地”とは。

日本代表のDF酒井宏樹が所属するマルセイユは、2月25日と28日、今季フランスで圧倒的な強さを発揮するパリ・サンジェルマンとの2連戦に挑んだ。

最初の対戦の3日前にはポルトガルでヨーロッパリーグ・ラウンド32のブラガ戦を戦い(1-0で敗戦も総計1-3でマルセイユが勝ち抜け)、中2日でパリへ。さらに中2日で再び南仏マルセイユからパリに移動というのは、シーズン終盤にさしかかったこの時期、さらに選手層にそれほど厚みがないマルセイユにとって相当厳しいチャレンジだった。

2戦目のカップ戦はフルタイムで決着がつかなければ延長戦となるが、「無理に追いついて延長に持ち込まずにカップ戦は捨てた方がいい」と、マルセイユの番記者たちから心配の声が上がったほどだ。

しかし、結果は1戦目のリーグ戦、2戦目のフランス杯準々決勝ともに0-3。計0-6の完敗だった。

■「きつかった」計0-6での敗戦

10月にマルセイユのホームであるスタッド・ヴェロドロームで戦ったときは、終盤93分のカバーニの同点弾がなければマルセイユが2-1で勝てていたほどの接戦だった。その後、PSGのウナイ・エメリ監督は大勝が続く常勝チームを戒めるときに、「ほぼ負けたも同然のマルセイユ戦のような試合があったことを忘れてはならない」と、この一戦を欠かさず例に出している。

それだけに、PSGの本拠地とはいえもう少し競った戦いになるかと期待された。だが、リーグ戦では開始10分にキリアン・ムバッペに先制点を許すと、ネイマールのシュートからオウンゴール、後半エディンソン・カバーニが追加点と、豪華3トップにきっちり得点に絡まれて0-3に終わってしまった。

3日後のカップ戦は、メンバーを8人入れ替えたPSGを前半の終盤まではコレクティブな守備で抑えた。しかし、前半のロスタイムにアンヘル・ディ・マリアに点を決められると、そこで気持ちの糸と同時に体力も尽きたのか、50分を過ぎた頃からマルセイユのリュディ・ガルシア監督は次のリーグ戦に備えて主力を温存させることを選んだ。

試合後、ミックスゾーンに現れたマルセイユの選手たちの表情には、疲労と落胆も覗いたが、同時にふっきれた感じもうかがえた。

酒井宏樹もその一人だ。

「0-3というのはダービーの結果ではないし、僕らとしてはホームでやったときの2-2という結果があるので、そのくらいの質で戦いたかったです。だから前半を0-0でしのげればチャンスはあると思ったし、非常に残念だと思いました。でも、2戦連続でPSGはダメです(苦笑)。なんかもう、きついです。0-3で負け、また0-3で負けて計0-6はきつい」

前半ロスタイムの失点がなければ展開は変わっていたかもしれないが、逆に相手にとって嫌な時間帯にきっちりリードを奪ってくるところにも、PSGの他とはひと味違う強さが象徴されている。

PSGにしても、選手層がケタ違いだとはいえ毎試合「絶対に負けられない」という相当なプレッシャーの中で戦っている。相手が宿敵マルセイユならなおのこと。1点リードを手にしたことで固さもほぐれ、後半よりのびのびとプレーし始めた彼らのボールキープ率は7割を超えていた。

この試合では、1戦目の欠場から戻ってきたマルコ・ヴェッラッティがPSGのキーマンだった。常に一番チャンスに直結しやすい状況・人材を即座に判断して的確なパスを出せる中盤の頭脳である彼は、PSGが誰よりも手放したくない選手だ。

「今日はヴェッラッティがすごかった。いや、彼はすごいですね。僕が受け手だったらすごく楽しいだろうな、と思うくらいに。自分が予想したところに彼も狙ってボールを出してくれる。ここ来るだろうな、というところに」

「1本僕が彼にパスを通されたシーンがあったんです。(マークしていた)ムバッペは走っていなかったんですけど、俺だったら絶対走ってるな、と。やっぱりすごく良い選手です」と酒井も目を輝かせて賞賛した。

一方、よりコレクティブな試合運びで差が出た1戦目については、酒井が試合後に「選手同士の距離感が素晴らしかった」と話していたのが印象的だった。

PSGは相手のカバーリングの受け渡しが難しくなるような絶妙な距離感を意識しつつ、縦にはコンパクトだが、横はワイドに使って全体で押し上げてくる。それはピッチ上で応戦する相手選手にとっては、実にやりにくい距離感だった。

そして、MCN(ムバッペ、カバーニ、ネイマール)の攻撃力にスポットが当たりがちな今季のPSGだが、酒井が1戦目の最難敵に挙げたのは別の人物だ。

「中盤にラサナ(ディアラ)が入っていたので、とられた後のボールの取り返しがかなり激しかったですね。中盤のところであれだけ頑張れる選手がいると難しい。しっかりファールで取り切ることが多かったので。僕らのカウンターのチャンスはすべてふさがれてました」

「それにセンターバックの2人(マルキーニョス、チアゴ・シウバ)とラサナはボールを失わないし、つける位置もうまい。常に3つのコースに出せるボールの置き方をしているんです。だからプレッシャーがかかっていないと、まずインターセプトするのは不可能で、そのくらい置く場所が良い。(ボールを出す)相手も探しているし、T・シウバなんかはネイマール、クルザワ、ボランチ、カバーニと、4つくらいオプションがある。プレッシャーがかかっていればそれが2つくらいになるし、そうなればプレスをかけにいきやすいですけど、4つもあると……(バックス陣が)うまくコントロールしていたなと感じました」

■改めて感じた「王者」との距離

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両試合とも、酒井自身のパフォーマンスは決して悪くなかった。それでも、「0-3なので、結果しか見られないです。良いディフェンスができていたとしても3失点につながる何かがあるからだと思うので、そこを見つめていかないと」と課題に意識を向ける。

「疲れや寒さは向こうも同じ。もちろん1試合少ないのはありますけど。でも、向こうはボールを組み立てて支配していくようなゲーム、僕らは90分集中しないと守れない、というプレーなので負荷が違う。そこは弱気になってしまうところで、もちろん事実ですけど、それを含めて僕らが乗り越えないといけない課題です」

マルセイユは目下、モナコ、リヨンとともにチャンピオンズリーグ出場権を争う三つ巴の戦いの中にいる。

「来年もしCLに出られるのであれば、PSGと同等くらいのチームと2、3試合続くことがあるかもしれないので、それはやっていかないといけない」

そして首位チームとの2連戦を経て、酒井はあらためて「王者」との距離を感じていた。

「まだまだ到着できない地点だと思うので、そこでチームとしても個人としても何ができるか、ということが大事。こういう相手にもボールを支配したり落ち着ける時間ができるようなチームに、そして個人個人もなっていかないと、『勝利』という文字は見えてこない」

「今のままじゃ10回やって1回勝てるかというところ。だからどれだけその確率を上げていけるか、ということが大事だと思います」

フランスの頂点に立つPSGとの戦いで、自分たちの“現在地”を知ったこと。

その上で、そこからどう上を目指していくかという課題を得たことが、マルセイユと酒井にとってこの2連戦の大きな収穫だったようだ。

取材・文=小川由紀子

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