Mauricio Pochettino PSG GFXGetty Images

PSGはなぜ監督を代えるのか?ポチェッティーノに期待する資質

パリ・サンジェルマン(PSG)の主将だったマウリシオ・ポチェッティーノは2003年にクラブを去ったが、当時と、新監督としてパルク・デ・プランスに戻るときのPSGは別物であることに気づくだろう。

17年前のパリ・サンジェルマンは凋落の途中。リーグ・アンでは11位という下位に沈み、優勝したリヨンとの勝ち点差は14もあった。チャンピオンズリーグに出場できないシーズンが続いていたのである。

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それから、ポチェッティーノはひっそりとフランスの首都を去り、フリーでボルドーに移籍した。メディアの関心はバルセロナに移籍したロナウジーニョに集中しており、このクラックは瞬く間に世界の有名選手として知られるようになるのは別の話だ。

だが、現在のPSGとは当時とは比べ物にならないほどの注目を集めている。過去3シーズンでフランスのチャンピオンになり、昨季はチャンピオンズリーグのファイナリストとなった。そんな中、トーマス・トゥヘル監督に解任の噂が駆け巡ったのだ。今シーズンもチャンピオンズリーグのグループステージを通過したというのに、突如として「ポチェッティーノ新監督」の名前が伝えられた。

一体何が起きていたのだろうか。

■ポチェッティーノ就任の意味

Mauricio PochettinoGetty

ポチェッティーノは元PSG選手ということもあり、クラブにとって大きな意味を持つ。

ポチェッティーノは古参のサポーターたちも満足する存在であり、加えてスペイン、イングランドで監督として成功を収めた。そんな中でパリへ帰還することは、PSGが再びサッカー界最大の栄光へ挑戦しようとしているという新たな意思表示となるだろう。

つまり、これまでのOB監督のようにファンをなだめるためだけのセンチメンタルな要素に限らないのだ。マンチェスター・ユナイテッドのオーレ・グンナー・スールシャール監督やアーセナルのミケル・アルテタ監督、ユヴェントスのアンドレア・ピルロ監督などと異なり、ポチェッティーノはすでに監督としての能力を証明済み。PSG出身であることはほんの付け足しにすぎない。

「彼は選手たちのこともクラブのこともよくわかっている」

ポチェッティーノがPSGにいた時代、指揮官を務めていたルイス・フェルナンデスは『フランス・フットボール』でこう語っている。

「人格もいい。選手たちをできる限りベストなポジションに配置して実力を発揮できるようにするために、選手たちと話をする方法、能力を持っている。マウリシオのような人物が監督なら、選手たちは監督のために戦おうとするだろう。監督のためにプレーし、監督のためになることをしようとするはずだ」

■トゥヘルを追いやる意味

Thomas Tuchel Montpellier PSG Ligue 1 05122020Getty

しばらく前からパルク・デ・プランスにはポチェッティーノの影がかかっていた。今季限りで契約満了を迎えるトゥヘル監督にとって、8月にリスボンでバイエルン・ミュンヘンに0-1と敗れた後はいつチームを去っても不思議ではなかった。

トゥヘル監督とレオナルドSD(スポーツディレクター)の関係は薄く、移籍市場をめぐってもその関係は弱くなる一方だった。

確かにこのタイミングで解任が伝えられたことは、外部から見れば驚きだったかもしれない。だが、この時期での監督交代は意味のあるものだ。

トゥヘルを追い出すために700万ユーロ(約8億8000万円)かかると伝えられるが、現在のチームのイメージを払拭するためには必要な投資であった。すでに『Goal』が報じたとおり、スタッフのメンバーは、長く雇われているズマナ・カマラ氏だけは残る可能性があるものの、総入れ替えしようとしている。これにも資金がかかるには違いないが、もがき苦しむトゥヘル監督のチームに新たなスター選手を1人か2人加えてギャンブルするよりは、ずっと安あがりだ。

ポチェッティーノは選手たちの力を最大限に引き出すことができる指揮官だ。トッテナムをチャンピオンズリーグの決勝に導いたときは、その前の2度の移籍期間中にクラブとしては1人の選手とも新たな契約をしていなかった。

また、スパーズにいた5年間で54%を超える勝率を誇っており、その間ずっとアップテンポでアグレッシブなスタイルを貫いた。このことは勝利と同時にエンターテインメントを求めるパリのサッカーファンたちへの大きなアピールとなるだろう。

■期待される変化

Kylian Mbappe Neymar PSG GFXGetty Images

また、メッシ獲得という面でもポチェッティーノ就任はポジティブに働く可能性がある。ポチェッティーノはアルゼンチン出身で、これまでに各クラブで見せてきた攻撃的なスタイルはメッシを納得させるに足るものであるはずだ。

もちろん、このようなドラスティックな監督交代にはリスクも伴う。すでに数多くの疑問が噴出している。ネイマールとキリアン・ムバッペは、ポチェッティーノが好むプレッシング・サッカーに対応できるのか。監督得意のシステムで戦おうとするなら、どちらかと言えば限りのあるサイドバックのメンバーから最高のプレーを引き出すことができるのか。システムを変えるなら、誰をサイドに配置するのか、などといった点だ。

しかしながら、今回の監督交代は、両者にとって意味のあるものになるだろう。なぜなら内部では、クラブを欧州のエリートチームに仲間入りさせるために必要な過程だと考えられているからだ。

ポチェッティーノが15年前に去ったときのPSGとは違うかもしれない。だが、それは良い意味での違いに違いない。

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