Andrea Pirlo Juventus U23Goal

ユヴェントス新監督ピルロにかかるプレッシャー。果たして「幸運な」仕事なのか?

現役時代、アンドレア・ピルロはジェンナーロ・ガットゥーゾをいつも冗談の種にしていた。

ピルロは同僚MFの文法をしょっちゅうイジっていた。さらには、ガットゥーゾの携帯を勝手に拝借しては ミランのゼネラルマネージャー、アリエド・ブライダにメッセージを送信し、ダニエレ・デ・ロッシとともに次々に悪ふざけをして、ガットゥーゾを悩ませていた。

あるときはガットゥーゾが本気で怒ってピルロをフォークで刺そうとしたこともあるという。

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gattuso-pirlo(C)Getty Images

そこで、ガットゥーゾは、ピルロが初めて監督という大変な仕事に就くときにはいじってやろうとその機会をうかがっていた。そしてチャンスはついに訪れた。監督経験のないピルロがユヴェントスの新監督に任命されたのである。

「さぞかし胃が痛いことだろう!」

チャンピオンズリーグでバルセロナに敗れた後、ナポリ指揮官ガットゥーゾは『スカイ』のインタビューで放った言葉は辛辣だった。

もちろん、冗談ではある。だが親友への警告がこめられていることも間違いない。

「監督業をユヴェントスで始められるのは幸運だ。だけど、どんなに名選手だったとしてもそれだけでできる仕事じゃない。勉強して、ハードワークして、睡眠を削らなければならないだろう」

「選手と監督はまったく同じではない。完全に違う職業だ。本を読めば学べるというわけでもない。現場に立って必死に働かなければならない。今までとは違う世界だ」

■クラブからの重圧には…

Ronaldo Juventus Lyon 2020Getty

ユーヴェのチーフ・フットボール・オフィサーであるファビオ・パラティチの見方はガットゥーゾとは違う。リヨンに敗れてチャンピオンズリーグ敗退が決まってから24時間も経たないうちに解雇されたマウリツィオ・サッリの代わりにピルロを監督にしたのは「当然の選択」だというのだ。

だが、ピルロの監督就任は大きな驚きをもって迎えられた。彼はどのレベルの監督経験もゼロ。2週間前にユーヴェの23歳以下のチームを任されたばかりであり、まだ1試合も指揮していないのである。

こうしたユーヴェの状況が、バルセロナが2008年にペップ・グアルディオラを雇い、レアル・マドリーが2016年にジネディーヌ・ジダンをトップの監督にしたときと重なるという声もある。

しかし、当時のグアルディオラはすでに1シーズン、バルセロナのBチームの監督をしていた。だからこそ、セルヒオ・ブスケツやペドロ・ロドリゲスをトップチームに抜擢できた。

ジダンにしても、レアル・マドリーのリザーブチームであるレアル・マドリー・カスティージャの監督を2年間務め、デシマを達成した2013-14シーズン中は当時の指揮官カルロ・アンチェロッティのアシスタントも経験していた。つまり、トップで仕事をするための専門的な訓練を受けていたと言える。

ユーヴェはU-23チームの指揮官とすることで、ピルロを同じように育てるつもりだった。だが、目先の結果のために長期計画が変更されたのだ。

ピルロはサッカー界で最も厳しい役割を果たすことになる。サッリ前監督はセリエAのタイトルを獲得した2週間後に更迭に追い込まれた。だが、ピルロは重い期待にあくせくするような男ではない。自伝の中でもこのように述べている。

「私はプレッシャーを感じるタイプではない。そんなものはまったく気にしないんだ。2006年7月9日の日曜日の午後、私はベルリンで昼寝をしたりプレイステーションでゲームをしたりしていた。そしてその夜、ワールドカップの決勝に出て、優勝した」

■求められること

Andrea Pirlo Italy Euro 2012Getty Images

ピルロはサッカー史上最高のミッドフィルダーの一人だ。この事実は、スーパースター揃いのロッカールームでも大いに役立つに違いない。

サッリ前監督が、選手たちに自身の哲学の正しさを納得させようと苦労していたのは間違いない。選手たちも彼の高圧的な態度に苦労していたとの報道もあった。

一方のピルロは寡黙な男だ。常にポーカーフェイスであることを誇りにもしている。そうなると、彼の最大の挑戦は、サッリ前監督が失敗に終わった選手たちとの関係性の構築ということになるだろう。

ただ、彼の戦術が納得できるものであれば、選手たちもついていくはずだ。

今シーズン、サッリ前監督の選手の起用方針がユーヴェを混乱させたことは明らかだ。選手たちが楽しんでプレーしているようには到底見えなかった。

興味深いことに、ピルロは前任者の哲学を称賛したことがある。とは言え、自身は選手たちに合わせるほうを好むとも話していた。ファビオ・カンナヴァーロとのオンラインチャットでの話だ。

「私はサッリの、パスを多くして組み立てていくサッカーが好きだ。私が現役ならフィットできただろうと思う。だけど、大事なのはフォーメーションではない。スペースを埋めることが重要だ。プレーするときは、はっきりとしたアイディアや約束事が必要になる」

「私だったらこうするというやり方が、頭の中にはある。ボールを足元で保持して、常に勝つためにプレーするという気持ちを持つ」

■残される時間はわずかか

Andrea PirloGetty Images

ピルロは、サッカー界で最も頭を使う司令塔だった。実際、自伝のタイトルは「我思う、ゆえに我蹴る」だ。イタリア監督協会のレンツォ・ウリヴィエリ会長は、ピルロを「サッカー界で最も深く考える選手の一人」と評したことさえある。

ユヴェントスの弱点を解消するためにピルロはどのように頭をひねればいいのだろうか。昨シーズン、短期間『スカイ』で解説していたとき、ピルロはこう指摘していた――「問題は中盤だ」。

ユーヴェはすでに、中盤を強化するための動きを見せている。来シーズンに向けてデヤン・クルゼフスキやアルトゥールと契約したし、ピルロの監督就任で、新たにサンドロ・トナーリ獲得の動きが起こりそうだ。トナーリはブレシアで飛びぬけた才能を見せており、長く「ニュー・ピルロ」と呼ばれている。

ユーヴェが、新監督に必要な選手を提供すべく、よりよい仕事をすることが大切なことは確かだ。この点において、サッリ前監督は見くびられていた。

ジャンフランコ・ゾラは『スカイ』で「クラブは、人物の質を重視した、勇気ある仕事をした。だが、ピルロにはクラブのさらなるサポートが必要だ。これは簡単なことではない」と注意を促している。

また、サッリ前監督が気づいたとおり、今やビアンコネロが成功の度合いを測る基準はチャンピオンズリーグだ。もはやスクデット獲得だけでは、監督を解雇から救うのに充分ではない。

もちろん、クラブとの絆が深いピルロには、ユーヴェのファンや選手、スタッフが、サッリ前監督の時よりもサポートするだろう。しかしながら、今までの自分がローリスク・ローリターンでやってきたことを賢いピルロは実感しているに違いない。

サッリ前監督の解任でクラブは2000万ユーロ(約25億円)の損失を被った。ユーヴェはマウリシオ・ポチェッティーノなどの実績ある監督ではなくピルロを雇ったが、新型コロナウイルスの感染拡大による経済的危機のせいでサッカー界が困難な時期にいる中、少しは出費を節約できたといえよう。

アニェッリ会長の長期的展望では、来年の夏にマンチェスター・シティとの契約が切れるグアルディオラを次期監督に据えようとしているという。となれば、ピルロには、少なくとも監督としてチャンピオンズリーグを制覇できる能力があることを示すのにわずかな時間しか残されていない。

最初のシーズンでクラブを納得させることができなければ、胃が痛む道しか待っていないだろう。

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