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W杯ポーランド戦と似た状況…東京オリンピック金メダルを目指すU-24日本代表、フランス戦でかけられるリスクはどこまでか/プレビュー&予想布陣

■フランスは前節で「チーム」誕生

 男子サッカーの五輪というのは特殊な大会だ。そのことを東京五輪が始まってから、あらためて感じている。

「U-24」+「オーバーエイジ(OA)」というレギュレーションのため、参加各国のほとんどは実質的な急造チームで大会に臨んでいる。第3戦で当たるフランスはその典型例のようなチームで、特に第1戦は個々の能力以前にチームとして戦う部分を明らかに欠いてしまっていた。

 ただ、チームは生き物なので、共同生活を送りながら戦っているうちに連帯感が深まって、徐々に一つになっていくというのもよくある話だ。

 U-24南アフリカ代表との第2節は取って取られてのジェットコースターゲームとなったが、交代選手の奮戦ぶり、頼れるOAの35歳FWアンドレ=ピエール・ジニャックのハットトリックなどで劇的勝利。抱き合って喜びを分かち合う選手の様子を観ていると、日本にとって厄介な「チーム」が誕生したことが分かった。

 そうした流れで迎えるグループステージの最終節。フランス視点でみると、2点差で勝利すれば逆転での突破が決まるというシチュエーションで、あきらめるような情勢ではまったくない。

 元より身体的な能力に秀でた選手がそろっており、最前線には経験豊富なジニャックもいて、爆発力は十分。2点差勝利は十分に射程内と判断してもいるだろう。まったく油断できない相手に仕上がりつつある。

■金メダル目標なら温存策も重要

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 とはいえ、「金メダル」という目標を現実的に狙うのであれば、ここで100%を出し切ることなく温存策を敢行したいところではある。暑い日本で中2日の連戦をこなす今大会は、選手を回復させられるチャンスがほとんどない。やるとしたら、このフランス戦しかないのだ。

 リスクを避けながら温存策をやるなら、5人交代のメリットを活かして、先制点を取って折り返すところで主力を休ませるというもの。MF遠藤航はそうした視点も踏まえて、こう語っている。

「1点取れれば、相手も落ちると思う。僕らはさらに優位に試合を進められるし、カードを持った選手を交代できる可能性も高くなるかもしれない」

 遠藤自身を含めて主力選手5名がカードを貯めて“出場停止リーチ”の状態にあるのは日本が抱える潜在的リスクだ。とはいえ、彼らはいずれも実力者なので、温存すること自体がリスクでもある。温存を図るのは、リードを奪って優位に立ってからでいいというのは、リスクとリターンのバランスを取った考え方だろう。

■守備の入れ替えはリスク大か

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 似たようなシチュエーションから大胆な温存策を敢行したのは2018年のロシア・ワールドカップ(W杯)だった。ポーランド代表との一戦を前にして、日本の突破は決まっていなかったが、西野朗監督は第2戦から先発の過半数に当たる6名を入れ替えた。かなりの博打であり、際どい事態を招いてしまったが、ここで燃え尽きなかったことがラウンド16でのベルギー代表戦で拮抗したゲームができた要因となったことも確かだった。

 この博打はアシスタントコーチとして隣で観ていた森保監督にも影響を与えていそうではある。前日練習は非公開になったので、とりあえず全員が練習していることを確認できたのみ。このため、予想フォーメーションは極めて純粋な予想である。

 ロシアW杯のときもそうだったが、リスクを削っての温存策ならば、代えるのは攻撃陣であり、守備陣はそういじらないはず。今回は守備陣に警告持ちが多いのが悩ましいところではあるが、ここはそのままいくと予想した。共に警告をもらっているダブルボランチは本来どちらかは休ませたいが、控えの一番手である板倉がセンターバックに回っている現状、代われる選手がいない。練習で瀬古歩夢が入ったことはあるが、さすがにここで使うのは博打が過ぎるだろう。

 攻撃陣は入れ替えも考えられる。第2戦で左MFとして先発した相馬勇紀はかなり激しく削られていて消耗は大きかった様子。相手が前掛かりに来る中で、ボール支配率を高める狙いからMF三好康児の先発を予想した。MF堂安律も事前の親善試合からの負傷があって休ませたいところだが、どうなるか。最前線は体を張り続けてきたFW林大地にもう一戦託す手もあるが、相手が立ち上がりから前掛かりに来そうなことを思えば、快足自慢の前田大然を使って裏に走らせ、ひっくり返しに行くのも上策ではないか。

■「暗黙の握手」が成立する可能性

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 そして、第1、2節から持ち越しになっている課題は試合の終わらせ方だ。交代で出る選手が気合い十分で出てきたゆえというところもあったが、チグハグになってしまったのはまずかった。特に引き分け以上で後半にいった場合、老練なストライカーとスピード豊かなサイドアタッカーを抱えるフランス相手に、自らボールを手放してカウンターのチャンスを提供するようなプレーは厳に避けたい。

 一方で、「あまり守りに入りたくないというのが正直なところ」と遠藤が率直に語ったように、後ろ向きな気持ちが入り過ぎてアクティブなプレーが消えてしまうのも怖い。パワフルな長身選手が多いフランスに対し、味方ゴール前で跳ね返し続けるような展開になるのは絶対に避けたいので、引いて守るのではなく、あくまでゲーム展開に応じてマイボールの時間を増やす方向に意識を割くべきだろう。

 この点について、三好がこう語っている。

「後半なんかは特にそうですが、少し暑さもあってオープンな展開になるシーンはどの試合も増えてくると思う。もちろん行きたくなる思い、行けるという思いはボールを奪うと誰もが感じる。特に後半から出る選手は得点を取りたい気持ちも出てくる。終わった後に(田中)碧とも話をしたが、ボランチの選手を含めて自分たちがボールを奪った後、どういうふうに試合をオーガナイズしていくかはもっとチームとして考えてもいいのかなと思う」

 このあたりの話し合いはチーム内でも持たれているようで、第2節で途中から出た攻撃の選手からは反省の弁も聞かれた。特にフランス戦は1点差負けならば突破できるという状況なので、リスクのかけ方は考えたいところだ。

 また、選手は特に考えていない可能性だと思うが、U-24メキシコ代表が南アフリカに食われていて、フランスが日本に対して1点をリードしているシチュエーションなどでは、ロシアW杯ポーランド戦のような「暗黙の握手」が成立する可能性もある。このチームは4年前のU-20W杯におけるグループステージ最終節(vsイタリア)でも同じような経験をしているが、そうした大人の駆け引きがあるのはグループステージ最終戦の常であることは頭に入れておきたい。

 もちろん、理想のシナリオはさっさと先制点を入れ、前がかる相手の息の根を止めるカウンターが突き刺さり、フランスはすっかり意気消沈。ハーフタイムで主力を下げて温存し、後半に出てきた出番の少なかった選手たちも爆発して3-0快勝というハッピーなストーリーであることは言うまでもないが、「世界大会で甘い試合なんてない」と指揮官が戒めるとおり。この試合もギリギリの攻防になる予感は漂う。

 背水の陣を敷く欧州の伝統国の攻勢を抑え、大人の試合運びを見せられるか。これまで出番の少なかった選手たちの奮起を含め、グループステージ最後の関門でチームの積み上げが問われることとなる。

取材・文=川端暁彦

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