おそらく、南野拓実はリヴァプールでの最初の一年を忘れることはないだろう。
レッズが南野の争奪戦に打ち勝ち、マージーサイドに来てから12か月が経過した。移籍金はたった725万ユーロ(約9億円)。完璧な移籍のように見えた。クラブの番記者としてチームを追っている私からすれば、リヴァプールらしい補強に感じた。
南野はレッドブル・ザルツブルク在籍時にチャンピオンズリーグ(CL)で印象的なプレーを見せ、ユルゲン・クロップのチームにも理想的にフィットするように見えた。
頭脳明晰で、エネルギッシュで、万能で、クオリティの高いプレーができる。マンチェスター・ユナイテッド、RBライプツィヒ、ボルシア・ドルトムントに先んじて彼を獲得したことは、ある種のクーデターのようでもあった。
しかし、一年が経った今でも、ファンはこの25歳がアンフィールドで爆発するのをまだ待っている。
■増えない出場機会
(C)Getty Images南野はFAカップ3回戦でリヴァプールデビューを果たした。エヴァートン戦に出場し、記念すべき1-0の勝利を収めたのだ。それからリーグ戦で得点するまでは11か月待つ必要があった。
南野は12月19日にようやくプレミアリーグ初ゴールを記録。クリスタル・パレス戦で先制点を決め、歴史的な7-0での勝利へと導いた。チャンピオンにとって何もかもが完璧に見えた。
この活躍で出場時間が長くなるかもしれないと期待されたが、その祈りは届かなかった。セルハースト・パーク(クリスタル・パレスの本拠地)ではフル出場を果たしたが、それ以来リーグ戦での起用はなし。チームも厳しい状況を迎えている。
ウェスト・ブロムウィッチ、ニューカッスル、サウサンプトンとの年末年始の3試合で2分け1敗。17日のマンチェスター・ユナイテッド戦もスコアレスドローに終わったが、いずれの試合でも南野は全く起用されず終いであった。レッズはこの4試合で1ゴールしか奪えていないのだ。この事実は興味深いといえるだろう。
クロップはアレックス・オックスレイド=チェンバレンとディヴォック・オリジを再び起用し、ニューカッスル戦ではジョルジニオ・ワイナルドゥム、チアゴ・アルカンタラ、ジェルダン・シャキリを交代で起用した。
サウサンプトン戦では、90分間で放ったシュートはたった1本に。交代で呼ばれたのはシャキリとジェームス・ミルナー。南野ではなかった。
まさに今の状態が南野のマージーサイドでの一年をよく表している。期待できる瞬間はあったが、その回数は少なく、珍しい。1歩進むと2歩下がってしまう。クロップは「リズム」という言葉を好んで使うが、南野にとってそれを見出すのは難しかった。
すべてのコンペティションでこれまで30試合に出場したが、スタメン出場は12試合にとどまっている。そしてリーグ戦でのスタメンはそのうち4試合のみ。ベンチ入りしながら起用されなかった試合は18試合を数える。
ある程度は理解できる数字だ。言ってみれば彼は、ワールドクラスのアタッカー3人とポジションを競っているのだから。さらにディオゴ・ジョタの活躍によって南野の立ち位置はさらに厳しいものになっている。
ジョッタはウルヴスから夏に移籍して以来大活躍を見せている。膝のケガに見舞われるまで17試合で9ゴールをマーク。ジョタと比較すれば、南野のパフォーマンスはいささか物足りない。
■クロップは期待するも…
(C)Getty Images「このチームに入っていくのは難しいことだ」昨年11月に南野について聞かれたとき、クロップはこう語った。一方で、期待も口にしている。
「タキはセンセーショナルで素晴らしい選手だ。この挑戦に立ち向かうことになる。彼が活躍するときはやってくる。間違いないよ」
クロップの南野に対する期待は事実であり、リップ・サービスでもある。最初に聞きたいのは、“活躍するとき”というのは「いつ?そしてどこで?」ということだ
確かに南野は万能な選手で、右でも左でも9番としてもプレーできる。11月のブライトン戦では、ミルナーとワイナルドゥムとともに3人目のセントラルMFとして起用された。
事実を言えば、どのポジションでも納得の活躍はできていない。ワイドでプレーするにはスピード不足で、中央でプレーするにはフィジカルが足りない。加入時のインパクトだけは十分だったのだが、アンフィールドでのベストゲームは、いまだにザルツブルクのユニフォームを纏っていた頃の試合だ。
しかし、能力と、そして彼の姿勢は間違いない。成功意欲が高いことは見て取れるし、ポジショナルプレーや、「どこになぜ走るのか」といったリヴァプールで要求される戦術への理解度も高い。
2020年の大きなチャレンジに対して彼が十分応えてくれたとスタッフは喜んでいた。特にフィールドの外のことに関しては…。初めての国、新しい言語、初めての文化に適応したことがそのうちのひとつの評価要素だ。国中がロックダウンを3回も余儀なくされた中でそれを実践したというのも、特に評価に値する。
■今後のチャンスは?
(C)Getty Images南野は時間を上手く使った。英語力は完璧に近づいており、チームメイトとの関係性も構築することができている。特にフォームビーで近くに住むサディオ・マネとナビ・ケイタとの絆は強い。南野自身も先日のマッチデープログラムでこのように語っていた。
「イギリスでの生活にも慣れてきたし、言葉の勉強もしてきました。チームのすべての選手とはとても良い友達ですが、ジェルダン・シャキリ、ナビ・ケイタ、サディオ・マネ、ジョエル・マティップといったドイツ語を話す選手たちとはよくコミュニケーションを取っていますね」
『Goal』ではFAカップアストン・ヴィラ戦の前に、南野のイングランド1年目についてクロップに尋ね、指揮官は「困難な一年だったとは思わない」と答えた。指揮官自身も南野のパフォーマンスには目をみはっている。
「彼自身の調子は本当にいい。成長しているし、強度にも慣れてきている。トレーニングにも慣れて、大きな階段を登ったよ」
その後、アストン・ヴィラ戦では先発し、期待はずれの出来であったとしても、前線には変化が必要だ。
ジョタはまだ離脱しており、少なくとも今月末までは出場できないだろう。そしてオリジの株もここ12か月で急降下している。サラー、マネ、フィルミーノの3人がいても、リヴァプールは3試合無得点に終わっており、南野に出番を与えるべきとの声も上がっている。
試練の2020年を乗り越え、2021年こそは南野拓実の本当の実力を見てみたいとクロップも思っているはずだ。
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