サッカー界では、若手ストライカーの移籍ラッシュがすでに始まっている。
初めに動いたのはユヴェントスだった。ドゥシャン・ヴラホヴィッチに7500万ユーロ(約97億8000万円)を積んでフィオレンティーナから獲得。クラブの現在、そして将来にとって重要な役割を担う選手をチームに加えることに成功した。
これが2022年初の大型移籍に。そしてアーリング・ハーランドやキリアン・エンバペらも今夏に世紀のビッグディールが成立する可能性が高まっている。
だが、ジョナサン・デイヴィッドというヤングスターの存在も忘れてはならない。このカナダのスターは、エンバペやハーランドを逃したチームが気休めに手に入れる程度の選手ではないからだ。
デイヴィッドは世界最高クラスのFWになれるポテンシャルを秘めている。昨季は公式戦13得点をマークしていたが、今シーズンはここまでですでに16得点を奪っている。CLデビューシーズンとなった今季3得点を決めたところを見れば、世界レベルで卓越した選手であることもわかる。
また、W杯予選で好調のカナダ代表においても中心的な役割を果たしている。彼がこれまで記録した5ゴールはカナックス(サッカーカナダ代表の愛称)が予選で首位を走る原動力だ。
チームメイトのアルフォンソ・デイヴィスまでも心を奪われたというホンジュラス戦での驚くべき得点を見れば、メガクラブが獲得を狙っているのもおかしくないと思うはずだ。
サッカー界の若きトップスターとして頭角を表しているが、デイヴィッドは次のステップに進むことが求められている。代理人も今夏のステップアップを認める。
「いくつかの理由からこれが彼にとってリールでの最後のシーズンになるだろう。プレミアリーグは彼にとって素晴らしい選択肢だ。スペインも同じくらい好きだろうね。テクニカルな選手と共演するのも好きだから」
「この2つのリーグが優先度の高い選択肢だ。だが現状はまだ何も分かっていない。パリ・サンジェルマンやイタリアのビッグクラブになる可能性だって否定はできない」
■移籍先は?
(C)Getty Imagesデイヴィッド獲得のためにリールに渡す金額は決して安くは済まないだろう。2020年にヘントから3000万ユーロ(約39億円)で獲得し、育成した選手から利益を得ようとしているはずだ。
フランス王者が最も大切にしている保有選手との別れに納得する金額としては、最低4500万ユーロ(約58億6000万円)と予想される。だが、条件に関わらずデイヴィッド自身はイングランドでプレーしたいという気持ちが強いようだ。
「今はLOSC(リール)と契約している。僕にとって一番大事なことは、今シーズンをなるべく良い成績で終えることだ。その後どうなるかは、そのときにならないと分からないな。けれど、プレミアリーグは皆にとって魅力的なリーグだね。今世界で最もハイレベルなリーグだ。とても良いリーグだね」
長くデイヴィッドに興味を示しているのがチェルシーで、ここ2シーズン彼を追い続けている。だが契約できるかどうかは、ティモ・ヴェルナーやロメル・ルカクといった苦しんでいるスターの動向次第だ。より移籍先として可能性が高いと報じられているのがリヴァプールとアーセナル。前者は2020年にデイヴィッドと契約するものと思われていたが、結局ディオゴ・ジョタを獲得した。
一方のアーセナルは確かにストライカーを補強したがっている。1月にピエール=エメリク・オーバメヤンをバルセロナに放出したためだ。
ビッグマネーでチーム再建中のニューカッスルも噂に上がっている。また、ラウタロ・マルティネスが他クラブへ移籍するとの噂が頻繁に上がっているインテルも同様だ。もちろん、PSGも可能性として除外できない。エンバペが本当に今夏マドリーに移籍することになるのであれば、PSGは間違いなくトップ選手を求めるだろう。
■チェルシー戦で結果を残せるか
(C)Getty Imagesだが、そうした大型移籍以前に、デイヴィッドのなすべきことは山ほど残されている。11位という順位からリーグ・アン連覇の可能性はほぼなくなってしまい、チャンピオンズリーグがデイヴィッドに残された大きな舞台だ。
しかし、決勝トーナメントラウンド16ファーストレグではチェルシーと対戦して0-2と敗戦。デイヴィッドは「チェルシーはチャンピオンズリーグの優勝チームであり、質の高いチームであるため、難しい試合になることはわかっていた。トップレベルでミスをすると、その代償を払うことになる」と試合を分析した。
一方で、「いい場面もあったし、もっと正確に得点したりチャンスを作ったりできたはずだ」とポジティブな面も強調し、第2戦へ「ファンの前で行われるセカンドレグでは、すべてを出し切るよ」と約束している。
クラブにリーグ・アンのタイトルをもたらしたデイヴィッドはすでにリールで大きな功績を残しているが、今夏には巨額の移籍金という形でさらに貢献することになるだろう。その上でチャンピオンズリーグでの活躍は重要な役割を持つ。若手ストライカーの移籍ラッシュに今夏乗ることになるデイヴィッドは、果たしてその移籍金をどれだけ高く上げることができるだろうか。




