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J1リーグ

Jリーグ覇者・川崎Fが紡いできた物語。いかにして“常勝軍団”は生まれたか

12:00 JST 2021/11/04
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【Jリーグ(J1)コラム】明治安田生命J1リーグ第34節の結果を受けて川崎フロンターレが2年連続4回目のリーグ優勝を果たした。

 ホーム・等々力陸上競技場に浦和レッズを迎えた一戦は1-1のドローに終わったものの、同時刻開催の2位・横浜F・マリノスがガンバ大阪に0-1で敗れたため、リーグ戦4節を残してのJ1優勝が決定した。

5年で4度目。2度目の連覇。昨季に続き史上最速4試合を残しての優勝。鬼木達監督は、森保一監督(サンフレッチェ広島)、オズワルド・オリヴェイラ監督(鹿島アントラーズ)の3回を超えた4回のJ1リーグ制覇を遂げ、単独最多優勝指揮官となった。数々の記録を更新し続ける圧倒的な覇者。しかし、そんなチームは一朝一夕でできるものではない。クラブが積み重ね、継承してきたその歴史こそが、「結果」につながっているのだ。(取材・文=林遼平)

■中村憲剛後、の時代に

 昨季で現役を引退した中村憲剛氏は、2017年の初優勝を振り返った際に「先人たちの勝利でもある」と称していた。歓喜の日を迎えたのは17年に戦ったメンバーだったかもしれない。しかしながら、手が届きそうで届かない日々があったからシャーレを掲げるその日にたどり着いた。川崎フロンターレに関わってきた全員の勝利。それこそが歴史を紡いできた証左だった。

 2021年11月3日、川崎Fは2年連続4度目のリーグ制覇を成し遂げた。初優勝から5年で4回目の優勝。シャーレを掲げた舞台上には、かつてシルバーコレクターと呼ばれた面影は一切なく、毎年のようにタイトルを獲得する“常勝軍団”の名を我ものとしたチームがそこにはいた。溢れんばかりの涙で歓喜の瞬間を味わった17年とは違う。自信に満ちた表情と満面の笑みを見せる選手たちからは貫禄がついたことを実感させられた。

 今年は一つのターニングポイントだった。長年チームを支えてきた中村憲剛氏が昨季で引退。チームは新たな時代を迎えていた。つらい時、困った時に頼れる偉大な先輩は、すでにピッチにはいない。彼を引き継ぐ後輩たちがいかにしてチームを構築していくかが注目された。

 昨年末、チームのOBであり、強化部長を務める伊藤宏樹氏は、中村が去った後の時代に目を向け、こんなことを話していた。

「憲剛の背中を見てきた選手たちがどういう行動を振る舞うかにかかっている。(憲剛と)同じことをしてくれとは望まないが、今までのいいところを受け継いで、みんなで力を合わせて、次のフロンターレをどう作っていきたいかという思いが大事になってくると思っている」

 フロンターレのサッカー自体が大きく変わったとは思っていない。もちろん昨季からの進化したところや、選手の入れ替えにより新たなシステム、新たな形が模索され、ブラッシュアップされたことは周知の事実。序盤は破壊力ある攻撃を披露し、チームの中核を担った田中碧、三笘薫が移籍してからは、過密日程の中でタフで我慢強いチームを作り上げた。

  ■“勝利しか知らない若手”に繋がれたもの

 ただ、何よりも大きかったのはフロンターレのメンタリティ、歴史がしっかりと継承されたことではないだろうか。優勝後の登里享平の言葉からは、“敗北を知るベテラン”から“勝利しか知らない若手”に多くのものが受け継がれた様子が見て取れた。

「入団してから優勝できない時期を経験して、何が足りないか考えさせられた。勝てない時期を経験している選手が多いので、常に危機感があり、チームがどうすればうまく進むかの経験が還元されていると思う」

「もちろん強いフロンターレを知っていて、勝つのが当たり前という若い選手は、勝てない時期をネガティブにとらえることもあった。だけど、チームが崩れそうなとき、ベテランの小林(悠)選手らと話して『昔に比べたらこんなの気にすることないし、むしろ1敗しかしていない』とポジティブに変換できたからこそ、チームは前向きにチャレンジできたと思う」

 かつて伊藤から中村へと渡ったように、中村から新たなフロンターレへとバトンは繋がれた。

 それも今回は誰か一人にではない。

「憲剛さんはみんなにフロンターレを託して行ったと思っている」(脇坂泰斗)

 例えば谷口彰悟や小林がチームのメンタリティ面を引き継いだように、登里がSNSやプロモーション面を引き継いだように、脇坂が中盤のプレーメーカー役を引き継いだように、一人ひとりに様々なものが繋がれていった。

 先人たちが作り上げたプレースタイルやメンタリティ、そして歴史を継承してきたからこそ今の川崎Fの強さがある。これを次の世代、さらに次の世代へと繋げていくことで、川崎Fは歴史に名を刻む“常勝軍団”になっていく。