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13分間で見せた存在感。選手としても人間としても、中村憲剛は中村憲剛だった

等々力陸上競技場のピッチに立つ中村憲剛。その姿に万感の思いを抱いたのはファン・サポーターだけではない。中村を長く取材してきた筆者もだった。(文=青山知雄/DAZN・写真=浦正弘)

■らしさが詰まった鮮やかなプレー

 やっぱり中村憲剛は中村憲剛だった。

 論拠はない。でも、これまでの彼の歩みを考えると、301日ぶりの復帰戦で鮮やかにゴールを決めたことはもちろん、試合で感じたことは、すべてこの言葉に集約されているように思うのだ。

 8月29日の清水エスパルス戦当日、ピッチに戻ってくる姿を見たいというワクワク感から、双眼鏡を片手に彼の一挙手一投足に注目していた。バス到着、ウォーミングアップ、ベンチ周り、ピッチに入る瞬間まで細かくメモを取った。実際に投入された彼のプレーを記していくうちに気がついた。中村憲剛は、ただピッチに戻ってきただけではなかった。

 77分に4-3-3のインサイドハーフとして投入されると、ファーストタッチで右足を強振してインパクトを残し、次のプレーでは登里享平からのパスをワンタッチで絶妙に縦へ流して三笘薫の抜け出しを演出。続いてペナルティエリア内で縦パスを受けて起点になると、大島僚太とのパス交換で決定的なシュートを放った。

 狭いエリアで緩いパスを出してリズムを変えたり、相手選手が倒れている時間を利用して二十歳の宮代大聖に細かく指示を出すシーンも見られた。語り継がれるであろうループシュートでの復帰弾は、先読みからインターセプトを狙ってダッシュし、そのまま左足で浮かせてゴールへ流し込んだ形。その後、清水のハイラインの裏を狙った強めのスルーパスは主審に当たってしまったが、このアクシデントがなけれがビッグチャンスにつながっていたはず。終了間際にもペナルティエリア内で小林悠へスルーパスを通し、コーナーキックでサポーターを煽る姿もあった。

 3-0という試合の大勢が決した状況での起用とはいえ、わずか13分間とアディショナルタイムという短時間でこれだけの存在感を見せたバンディエラを「さすが」と称するほかない。そこには数々の“憲剛らしさ”が詰まっていた。

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 攻撃にアクセントを加えるダイレクトプレー、時間とスペースをコントロールする緩いパス、ピッチ全体を俯瞰する視野を生かした展開力、一瞬ですべてを切り裂く必殺のスルーパス、そして相手のスキを狙い続ける出足の早いインターセプト。チームメートにアドバイスを送ったり、コーナーキック時にサポーターを盛り上げる仕草もおなじみの光景だ。ゴールシーンはまさに長年取り組み続けてきたことの成果、そして長いリハビリを乗り越えた彼への“神様のご褒美”だったのではないか。

 復帰に対して持っていたワクワク感は、いつの間にか「次は何をしてくれるんだろう」というピッチ内でのワクワク感に変化していた。そこにあったのは、いつも見慣れた14番の姿。想いをプレーに乗せるところ、復帰戦でゴールを決めてしまう「千両役者」感も含めて、やっぱり中村憲剛は中村憲剛だったんだと思う。

■自身不在での快進撃のなかで

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 では、チームにおける現状はどうなのか。ここでは中村憲剛の立ち位置や役割について考えていきたい。

 彼が長期離脱している間、チームは今季から4-3-3の新システムを導入し、中断明けに10連勝を収めるなど首位を独走。自身不在での快進撃は複雑だったのではないかと勝手に推測していた。だが、本人は全く意に介していなかった。

「歯がゆさはないですよ。もうそういう年齢じゃないしね。今のチームを支える生え抜き選手たちを若い頃から見てきたし、彼らもいろいろな経験をしてフロンターレを背負ってくれている。それは上から見ていて頼もしいですし、ちゃんとした形のところに戻るのは非常にやりやすい。

 何年か前みたいにオレが何かをしなければいけない状況じゃないから。ただ、そこに戻るのは本当に大変だと思う。生半可なトレーニングでは戻れない。でも、まだ10節ちょっとしかやっていないんで、まだまだ自分が力になれる部分は出てくるはず。中盤から前の6枚だったら、どのポジションでも自分の良さを出せるイメージはあります」

 憲剛の不在期間に好成績を残したチームは、清水戦でも75分までに3-0とリードを広げてスムーズな帰還を演出した。いくら本人が酷暑の中で練習を積み重ね、万全の準備をしてきたと言っても、そこはやはり復帰戦。いくばくかの不安はつきまとう。鬼木達監督も試合後の記者会見で「まず憲剛が登場できる状況をチームとして作り出したことが素晴らしいと思いますし、みんなもそういう思いでやってくれた」と称賛していた。

 今後、対外的には緊迫した状況での強度の高いゲームにおいて、運動量や攻守の切り替え、前線からのプレスにどれだけ対応できるかがポイントになる。本人もかねてから話しているとおり、実戦を想定して「鬼木さんのチョイスに入っていくこと」が求められ、激しいポジション争いを勝ち抜く必要があるわけだ。

 まだまだ復帰途上とはいえ、分厚い選手層と圧倒的な破壊力でJ1首位を独走する川崎Fに、中村憲剛という“ゲームチェンジャー”が加わった。しばらくはコンディションを確認しながらになるが、ピッチ内で起こっている事象の言語化、修正能力、メンタル面も含めて、大きな戦力アップとなることは間違いない。憲剛の不在期間にチームが進化し、そこに司令塔が戻ってくるという相乗効果。首位独走の勢いが再び加速しそうな予感が漂ってならない。

■生まれ変わった感は強い

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 最後に、リハビリ期間の取材、復帰戦後のコメントを通じて見えた人間・中村憲剛についても触れておきたい。

 初めての大ケガ、約300日に及ぶ復帰ロード、先が見えないコロナ禍とも戦う中、憲剛は「いろいろなことを考えた。自分一人では乗り切れなかった」と周囲への感謝を常々口にしてきた。そして復帰戦後には「みんながいなければここに戻ってくることはできなかったし、とにかく自分がプレーする姿を見せたいという一心でやってきた」とも話している。

 中でも大きかったのは、やはり家族の支えだった。清水戦翌日のブログでは「帰り道、すぐに妻に電話をして、子どもたちの声を聞きました。今までに聞いたことのないテンションで話す子どもたちの声を聞いた時に、ケガをした日の帰り道の車内の空気を思い出しました。あの日からずっと子どもたちなりに気を使ってくれてたんだな、共に戦ってくれてたんだなと思いました。子どもたち、そしてずっとそばで支えていてくれた妻にもう一度プレーする姿を見せられて本当に良かったと思います。本当にありがとう」とも綴っている。

 今回のリハビリ期間に子どものサッカーを見に行く機会が増えた憲剛は、「小さいときからずっとスタジアムで見ていたから、プレースタイルがそっくり」と評する小6の長男に自分を重ね合わせ、分身のように思って見守っていたという。家では一緒にトレーニングにも取り組み、リハビリ用の写真や動画の撮影も手伝ってもらうなど、ステイホーム期間中のリハビリパートナーでもあった。

 長男にとっては最高のお手本、そして家族にとっては最高のヒーローだ。今年10月で40歳を迎えるが、苦しいときに支えてもらったからこそ、かっこいいパパの姿をもっともっと見せてあげてほしい。

「この9カ月、本当にいろいろなことを考えたから生まれ変わった感は強いです。今後のキャリアにおいて、この年齢でこの大ケガを経験できたのは大きかった。戻ってくることがゴールじゃなくて、チームに貢献することが目標。まだスタートラインに立っただけですね」

 選手としても、人間的な部分でも、やっぱり中村憲剛は中村憲剛。自然体で正面から向き合い、各所に配慮するスタンスは全く変わらない。家族、周囲への感謝を胸に強く抱き、川崎Fのバンディエラが完全復活に向けて最高のリスタートを切った。

 そして中村憲剛の新しい勝負が、またここから始まる。

文=青山知雄

 なお、DAZN(ダゾーン)では、復帰までの歩みや彼の想いをたどったドキュメントを9月12日(土)に配信予定だ。

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「※」は提携サイト『 Sporting News 』の提供記事です
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