19日に公開されたDAZNドキュメンタリー『RESTART 中村憲剛 帰還までの301日』。制作終盤、担当ディレクターは「誰にナレーションをお願いしたら、この作品にもっと意味が出るのだろう」と思案を巡らせていた。そこで白羽の矢を立てたのが、中村憲剛と親交の深かったスキマスイッチの常田真太郎。
打診を受けた常田はナレーション未経験であることに戸惑いを隠せなかったが、「憲剛のためなら」と快諾して個人練習をスタート。親友、そしてライバルでもある憲剛の長く厳しい戦いを伝える“声”として、番組で共演することになった。果たして常田は今回のナレーションにどんな想いを込めたのか。そして憲剛との知られざるエピソードとは――。
■「憲剛の復帰を少しでも飾れたら」
――今回、中村憲剛選手の復帰までを追ったDAZNのドキュメント『RESTART 中村憲剛 帰還までの301日』でナレーションを担当されました。
最初にオファーをいただいたときは、とにかくビックリしました。憲剛のためのコンテンツじゃなかったら引き受けなかったかもしれないですし、「憲剛の復帰を少しでも飾れたら」と思って参加させてもらいました。こういう経験をさせてもらえるきっかけを作ってくれて本当にありがたいとも思いましたけど、「本当にできるのか? オレでいいのか?」って気持ちはありましたね(笑)。
――取材スタッフが憲剛さんにナレーターの人選を伝えたら、「大丈夫? あの人、滑舌悪いよ」って言っていたみたいです(笑)。
いやいや、お前も同じやんって感じですけどね。よくいじりあってるんで(笑)。僕のところにも連絡ありましたよ。最初はサプライズにすると思っていたので知らないふりをしていたんですけど、会話の流れが断ったような受け取り方になってきたので、最終的には認めました。「本当にありがとうございます」とは言っていましたけど、僕にも「滑舌、大丈夫ですか?」って聞いてきました(笑)。
――実際、ナレーションを担当してみた感想はいかがでした?
いやー、やっぱり難しかったですね。かなり緊張もしましたし、滑舌が壊滅的で(苦笑)。ナレーションをされている皆さんは改めて素晴らしいと思いました。もうちょっとできるかなと思ったんですけどね。実はYouTubeで『ナレーションとは』という動画を見て勉強してきたんですよ。助詞を上げないように話す工夫とかは参考になりました。あとはいろいろなドキュメントを見たり、事前にいただいていた映像を観ながら台本を読んでみて、どれくらいのテンションがいいのかを考えて、自分の携帯で録画して確認してみたり。やるからにはちゃんとやらないとですからね。
――そうだったんですね、でも、初めてのナレーションとは思えないほど映像の雰囲気と声がマッチしていて、作品の仕上がりがすごくアップしたように感じます。
そう思ってもらえたらうれしいです。基本的には作品の邪魔にならず、黒子になることを意識していて、収録前のディレクションでは「常田真太郎らしく」と言ってもらえたので、半分は安心できました。それと合わせて「自然体で、普段話しているようにお願いします」とも説明があったんですけど、それだと聞こえにくいことも出てくるので、ナレーターとして語りかけることを忘れずにしつつ、その塩梅が難しかったかな。あと、苦手の「か行」と「た行」が多かったので、そのあたりは今後の課題ですね(笑)。
――先ほどのやり取りも含めて、憲剛さんとの親密さがすごく垣間見えるんですが、そもそもどういった関係なんですか?
一言で言うと「ライバル」ですね。実はお互いに2003年デビューの“同期”で。そもそもは憲剛の親戚に音楽業界の人がいて、その人がつないでくれたんです。初めて会ったのはデビューから間もない頃で、憲剛はJ2から上がってきたばかりでまだこれからの選手。「中村」と言えば「俊輔」の時代でしたからね。それで食事する約束をして、すぐに会うことになったんです。
当時、世界のサッカーに詳しいサッカー選手は意外と少なくて、当時はミュージシャンにもあまりいなかった。僕はセリエAが大好きで、憲剛はラ・リーガをずっと観ていて、ともに身近にサッカーの話をできる人がおらず、さらにサッカーゲームという共通点もあって、すぐに意気投合しました。
憲剛には「変わったサッカーの見方をしますね」って言われていて、こっちも好きだからいろいろ聞いて、何でも教えてもらっていました。僕はサッカーを観ている中でとにかくトラップとキックの弾道が好きで、いつもそこを観ているんですけど、憲剛も賛同してくれた。彼もトラップにはこだわりがあるけど、弾道については「ついていけない」って言われたり(笑)。
――その関係がずっと続いているんですね。
そうですね。それは今でも変わらないです。最近の会話内容は憲剛が出た試合の話、僕のライブと新曲についてとかですね。サッカーで疑問点があれば、どんなことでも聞くようにしています。「教えて、憲剛先生!」って感じで。
――最初に「ライバル」と表現していました。その理由を教えてください。
憲剛がワールドカップに出たり、JリーグMVPを取った今となっては悔しい部分もありますが、どちらが日本を盛り上げるかって勝負をしているところはあるかもしれないです。憲剛が日本代表に行ったときは、身近な選手が選ばれて胸が高まりましたけど、同時にすごく悔しかった。2010年の南アフリカ・ワールドカップでメンバーに選ばれたときも一緒に会見を見ていたんですけど、盛り上がって喜ぶ一方で「じゃあ、オレは何をしてるんだろう」って思っていたり。この間の復帰戦でゴールを決めたときもうれしかったけど、やっぱりどこか悔しがっている自分がいたのは確かです。彼の活躍が刺激になっていて、「オレもこれくらいできるし!」って思うんで、やっぱりライバルなんでしょうね。
――憲剛さんも同じ感覚なんですかね。
だと思いたいですね。今までで一番言われたのは、2018年に僕たちの15周年ライブを観に来てくれたときですね。満員の横浜アリーナで「これだけの人が二人を見て盛り上がっているわけでしょ? こんなに悔しいって思ったのはサッカー以上かもしれない」って。これはサッカー選手の友達からよく聞く話なんですが、サッカーはピッチの22人を観るものだし、自分がいなくても試合は成立する。でも、アーティストはその人が欠けたら成立しない。そこが大きな違いで、しかもサッカーには勝ち負けもある。憲剛もお客さんが全幅の信頼をおいてステージを見ているのが、すごく悔しかったみたいです。そうやってお互いが刺激になっている感じですね。
🄫DAZN■僕には一度も「キツイ」と言わなかった
――実際に番組を見てみた感想はいかがでしたか?
率直な感想としては、自分の知らない部分がいっぱいあったんだなと思いました。周りの親しい人には漏らすような苦しいことを、やっぱりこっちには言わないんだなって。そこがライバル的に意識するところなんでしょうね。僕には一度も「キツイ」とは言わなかったですから。
――憲剛さんがケガをした試合の記憶を振り返っていくと……。
その日はリアルタイムで観られなかったので、家に帰ってからDAZNの見逃し配信をチェックしたんですよ。いつも結果を知らずに観たいから、何の情報も入れないようにしているんですよね。普段はライブでも見逃し配信でも、自分の好きなプレー、気になるプレーがあったら、そのプレーごとに感想をメッセージで送っているんです。
――じゃあ、その日も同じだったわけですね。
そう。しかもあの試合は前半からすごく調子が良かったから、実は「こんなに動きがキレキレだと、ケガしそうで怖いね」って送っていたんですよ。そうしたら本当に……。すぐに送信削除しました。既読になっていなかったし、おそらく相当数の連絡が来ていたはずだから、埋もれていることを願って。それで翌日くらいに様子を聞くような感じで連絡したら、「心配かけてすみません」って。
――常田さんとしてもまさかの事態でしたね。
まさか、そんなことは予想していなかったですからね。しかも、なぜか20人以上から憲剛の状態を心配する連絡があって。本人に連絡しにくかったんですかね。なので、その声をまとめてあげつつ、共通の知人や仲間内で励ましのメッセージ動画を作って送りました。
――今回のドキュメントで印象に残っているシーンを教えてください。
まず思いついたのは、憲剛がケガをして運ばれていくシーンですね。心配して寄ってきたチームメートにも「大丈夫、大丈夫」って言ってるのが、口の動きで分かるんですよ。タンカに乗せられながら、心配させたくないようにしているところが憲剛らしいなって。
あとは病院でリハビリしているシーンですかね。周りの人が誰も中村憲剛を見ていなくて、空気のような存在になっていた。そうでなければ、毎週のように大観衆の前でヒーローになっていたであろう選手ですからね。それが一人の患者として、空気のような存在から再起を目指していた。それがすごく印象的でした。
――中村憲剛という選手の歴史を知っているからこその感覚ですね。
チームの立ち位置もうまく見えましたよね。最年長だけど、みんなから慕われていて、先輩風を吹かせてないんだろうなって。それも彼が培ってきたものだと思うし、憲剛だけのストーリーじゃなくて、川崎フロンターレ全体や憲剛を支えてきた人たちの視点も入っていて、興味深く観ることができました。
――常田さんにも一人のサッカーファンとしても楽しんでもらえたみたいですね。
憲剛が取材陣といい距離感でコメントしているので、素顔が出ていていいですよね。フロンターレのサポーターとしては、川崎だるまを必ず触るところとか、等々力でチャントを歌ってもらってリアクションに困るところとかも、今回の隠れた見どころだと思います。つくづく思うのは、憲剛はスター性がある性格ではなく、隣のお兄ちゃんみたいな感じ。決して気取らないし、飾らない。素朴なバンディエラとでも言うんですかね。
――中村憲剛選手に改めてメッセージをお願いします。
今回のタイトルにもあるとおり、あくまで『リスタート』という段階だと思うし、これから何が起こるか分からないので、諸手を挙げて喜んではいられないというのが本音です。帰ってきたわけじゃなくて、ここからまた始まるわけなので。誰かのためじゃなく、本当に憲剛のために引き受けさせてもらったので、今回の作品とナレーションが何年後かに「やってよかった」ってお互いに言えるようになればいいなとは思いますね。
選手としては川崎フロンターレでの活躍のみならず、Jリーグ、そして日本サッカーがすごく面白いって言われるように、サッカーを知らない人も楽しめるようなサッカーを生み出してほしい。憲剛はプレーを魅せるというより、生み出すタイプに近いと思うんですよね。でも、最終的には自分のためにサッカーをしてほしいという気持ちが強いかな。
やっぱり憲剛に頑張ってもらわないと、こっちも頑張れないから。いつも「頑張れ!」って何万人にも言われてる人だから、指摘ばっかりしちゃいがちで申し訳ないけど、本心では応援してるってことを、ここで伝えておいてください。そしていつか訪れるであろう最後の花道……まあ、何年後になるかは分からないけど、そのときのナレーションもオファーがいただけたら引き受けたいと思っています(笑)。
――最後に“ライバル”に向けてもお願いします。
ライバルとしては……また悔しがらせてください。いつでも待ってます。そしてそっちも覚悟しておいてください。
取材・構成=青山知雄/写真提供=常田真太郎
◎Profile
常田真太郎(ときた・しんたろう)
1978年2月25日生まれ、名古屋市出身。人気ユニット『スキマスイッチ』の鍵盤担当。ミュージシャン業界でも屈指のサッカーマニアで、中村憲剛とは15年来の親友でありライバル。日常生活でもツアー中でもサッカー観戦を欠かさないDAZNのヘビーユーザーでもある。今回のドキュメントでナレーションに初挑戦。入念な事前準備はもちろん、収録現場でも自分から録り直しをリクエストするなど、さすがのプロ意識に制作スタッフも脱帽しきりだった。
🄫DAZNDAZNドキュメント『RESTART 中村憲剛 帰還までの301日』
DAZNにて好評配信中
2019年11月、39歳という年齢で左ひざ前十字じん帯損傷という大ケガを負い、長期のリハビリを強いられることになった中村憲剛。川崎フロンターレの“バンディエラ”のドラマチックな復活劇を追ったドキュメント番組がDAZNで配信。リハビリを順調に進めていく彼を同時に襲ったのは、ジョギングすらできなくなるほどの痛み、そして未曾有のコロナ禍という二重の試練だった。果たして彼はいかにして困難を乗り越え、今年8月の清水戦での鮮やかな復活劇に結びつけたのか。301日にわたる長き戦い。その裏側にDAZNが迫る。
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