番組には、お馴染みとなっているJリーグの原博実副理事長、Jリーグウォッチャーの平畠啓史さん、FIFA・AFC・JFA審判インストラクターの深野悦子さんが登場。桑原学さんMCのもと、SNSで反応が多かったシーンをピックアップして議論を行った。
■VARの基本的な理念、役割は?
(C)Getty images2021シーズンの1回目ということもあり、番組ではまず今シーズンからJ1リーグで再導入されるビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)についての基本的な事項をおさらい。深野さんは、前提となる基本的な理念についてこう語る。
「VARにはフィロソフィーがあります。『最小限の干渉で最大の利益を得る』ということです。あくまで主役はフィールド上の審判団で、それをサポートするという役割になります」
つまり、最終決定権はあくまで主審にあり、VARは「はっきりとした明白な間違い」に介入する、あくまで副審や第4の審判員と同様に主審を援助する役割を持つ。すべての事象に介入するわけではなく、そのシチュエーションがいくつかに限定されることも、深野さんは説明している。
「大きくは4つプラス1つあります。1つ目が『得点かどうか』。2つ目が『PKかどうか』。3つ目が『退場かどうか』。4つ目が『警告・退場の人間違い』。これに、審判が確認できなかった重大な事象(ボールから離れた位置でのラフプレーなど)ということになります」
■DOGSOの要件は満たしている
番組内では開幕節で起きたVARに関係する事象を扱っており、特に議論が盛り上がったのはセレッソ大阪vs柏レイソルの35分のシーン。C大阪の大久保嘉人がディフェンスラインの裏に抜け出そうかというところで、上島拓巳が倒してしまったとして笛が鳴る。レッドカードが提示され、上島は退場となった。
DOGSO(決定的な得点機会の阻止)により一発退場となったが、この判定は妥当だったのか。DOGSOが適用されるうえでは「反則とゴールの距離」、「守備側競技者の位置と数」、「プレーの方向」、「ボールをキープ・コントロールできる可能性があったか」の4要件に照らして考えられるが、それらの条件は満たされていたのだろうか。
意見を問われた原副理事長が「全部揃っている」と端的に述べれば、平畠さんも「条件は満たしているのではないかなとは思います」と賛同。ボールはやや大久保の足元に入っており、コントロールできなかった可能性も考えられそうだが、原副理事長はこう解釈しているようだ。
「(他の守備側競技者がカバーに)間に合わない。もちろん、素晴らしいコントロールではないけど、コントールしている範囲には入るだろう。(程度は)大したことないといえばないが、手の使い方で、やはりああいうふう(大久保の身体をつかもうとする動き)になると取られてしまう」
また、深野さんも「スピードを持ってちゃんとコントロール内に収めて、GKとの距離がありますが、1対1の状況ですよね。ですのでDOGSOでいいと思います」と、DOGSOの判定そのものは正しかったと結論付けている。
■VARが介入できない事象
(C)Getty images一方で、そもそもがファウルかどうかが微妙な程度の接触だったのではないかとも疑問も挙げられるが、原副理事長はルールそのものへの不満をこぼしながらも、判定としては正しいものだったと主張している。
「今の適用の仕方だとそうなってしまうということを、正しく、特にDFとかは分からないともったいない。『あのぐらいの手は』というのは分かるが、入れ替わる時にやってしまうと、いろいろな要件はあるが、ほとんどレッドが出てしまう。そのルールがいいかどうかと聞かれれば、よくないとは思う」
また、この場面は「退場かどうか」にあたる場面だが、VARによる介入はなかった。SNS上でも「リプレイを見る限り、見方によって判定が変わると思いました。VARでオンフィールドレビューにならなかった点について教えてください」という意見が寄せられた。
しかし、深野さんが語るところでは、どちらともとれる「微妙なケース」にVARが介入することはできない。
「何かしらコンタクトがあって、主審がそれをファウルだと判断をしていますので、そこに対して介入することはないです。グレーの度合いも高いとすると、VARも入れないということになります」
主審が実際に起きた事象を見逃したわけではなく、自身の目で見てファウルと判断したために、VARが介入する余地はなかったようだ。とはいえ、スローで見た場合には印象が変わるということも深野さんは認める。
「第一印象のノーマルスピードとスローだと、まったくの別物に見えます。私も第一印象ではレッドカードでしたが、スローで見ると1歩、2歩、進んで転ぶ、その手の掛かったところの後に転んでいて、踏ん張れたではないかと」
しかし、だからこそVARでチェックする場合には注意が必要だと強調した。
「でも、あくまでノーマルスピードで見なければ。スローはスロー、ノーマルスピードはノーマルスピードで別判断をしないと危険かなと思いました。もしこれをオンフィールドレビューすると、スローだと非常に(倒れ方が)悪く見えます。必ずレビューする時にはスローも見せた後、最後はノーマルスピードに戻って、もう一回再確認するということが大事だと、トレーニングでもやっています」
VARの介入もなしの一発レッドで問題はなかったとされる今回の場面。平畠さんが「ルールの適用上はレッドになると思いますが、上島選手の対応は悪質ではない。だから『イエローにならないかなあ』という気持ちは少しあります」と一人のサッカーファンとしての気持ちをこぼしたように、ルール上での判定と実際の印象にギャップがあったため、賛否が巻き起こった側面もあったようだ。
今回の『ジャッジリプレイ』では、このほかにも同じC大阪vs柏の28分に起きたハンドについての事象、湘南ベルマーレvsサガン鳥栖の74分に起きたVAR介入の典型例についても紹介されている。
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