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母国のファンはなぜ彼に熱狂するのか?インドネシアの大スター・アルハン、その背景と東京Vでの現在地

 インドネシアの20歳の若者が日本で奮闘している。東京ヴェルディ所属のインドネシア代表DFアルハン。日本ではインスタグラムのフォロワー数(現在292万人)がニュースになるなどサッカー以外の話題が先行し、一人のサッカー選手としての背景はあまり知られていない。今回、GOALでは、インドネシア・日本編集部共同で話を聞いた。

■ジャワ島にある小さな町の出身

2022-714-arhanTaka Nishina

アルハンは、インドネシア・ジャワ島の中部ジャワ地方の東側にあるブローラという町で生まれた。

「小さい頃からサッカーが好きでした。友達と一緒に近所でサッカーをして遊んでいました」

 サッカーキッズはどこの国も同じで、近所での友達とのボール蹴りが原点だ。その後、本格的にサッカーを始めたアルハンは地域の選抜チームに入ることを目標にしてプレーを続けてきた。しかしその目標は簡単ではなかったと話す。

「POPDA(Regional Student Sports Week)の選考になかなか受かりませんでした。なぜ自分はサッカーをしているのだろう? と悩んだこともあります」

 地域選抜に入れずサッカーを辞めることまで考えたというが、彼には常にサポートしてくれた友人やコーチたちがいた。

「そこで立ち止まっていたら、今日、この場所にいません。この2年間で、本当に多くの素晴らしいことが起きました。支えてくれた人たちにとても感謝しています」

■19歳でのA代表デビューとスズキカップでの躍進

20220714-arhan-suzukicupGetty Images

アルハンは、地域のチームを経て、中部ジャワ地方にあるインドネシア1部PSISスマランのユースに加入。20年にトップに昇格すると左サイドバックとして頭角を現し、21年のメンポラカップで若手最優秀選手を受賞。フリーキックでの得点により、ベストゴール賞も獲得した。

 U-19、U-23での年代別代表でのプレー経験とメンポラカップでのパフォーマンスもあって、21年5月、国際親善試合でA代表にデビューする。当時19歳。そして、この年の12月に開催されたAFFスズキカップで一躍、インドネシアの大スターになるのだ。

 ガルーダ(インドネシアの相性)の最大のライバルであるマレーシア相手に自身代表初ゴールをマーク、サポーターを熱狂させた。準決勝シンガポール戦の2ndレグでは1-2の展開であわや敗退かと思われた後半ギリギリに同点弾を決める。延長戦に持ち込んだインドネシアは、4-2で勝利を収め、決勝に駒を進めた。決勝戦ではタイに敗れるも、インドネシアは準優勝の結果を残した。この大会での思い出をアルハンはこう語る。

「2021年12月のAFFカップでの経験は非常に大きかったです。素晴らしいプロフェッショナルな選手たちに出会い、多くの経験をして、プレーの幅を増やすことができました。本当たくさんのことを学びました」

 同大会では最優秀新人賞を獲得し、GOALが選定する2021年度のNGXNにも選出。この大会をきっかけに一躍インドネシアの大スターとなった。年明けて22年2月、東京Vがアルハン獲得を発表。日本でより高いレベルのサッカーへの道を追求することとなる。アルハンの加入で東京Vの公式インスタグラムのフォロワー数もJクラブ1となった(7/14時点47.5万人)。

■東京ヴェルディでスタメンを目指す

20220714-arhan-verdy©J.LEAGUE/Getty Images

インドネシアでは、スズキカップの活躍により東京Vへの移籍が成立したと思われていたが、実際は、前からクラブからのアプローチがあったという。

「東京ヴェルディからは約1年前にオファーをいただいていました。エージェントと私は、最終的にヴェルディでの契約に至るまで、1年間連絡を取り、会いました。今、ここにいることをとても幸せで誇りに思っています」

 実際、東京Vからのリリースには、「昨年の8月より獲得に向けた検討・交渉をしておりましたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で現地に赴いての交渉や、来日しての練習参加などが出来ず、ようやく加入内定の運びとなりました」と記されている。

 コロナの影響もあり3月に来日、隔離期間があり練習への合流は遅れたものの、「東京ヴェルディの友人たちのサポートのおかげで、東京での生活にもチームのトレーニングにも慣れることができました」と話すように、今は完全にチームに溶け込んだ。

「仲の良いチームメイトは若手選手たちを中心に、リヒト(山本理仁)、タイガ( 石浦大雅)、ババ( 馬場晴也)、リクト( 橋本陸斗)、マヒロ(阿野真拓)、ユウ(宮本優)…みんなと仲良くなりました」

 しかし、なかなかトップチームでの出場機会は訪れなかった。クラブは監督交代を行い、6月に城福浩監督が就任する。やっとチャンスを得たのは、7月6日のJ2第25節・栃木SC戦。インドネシアのファンは大いに湧いた。

 この試合は本来の左SBではなく、右ウイングでFWとして先発出場。試合の入りは硬く、連係面でも改善の余地があった。時間とともに試合に入っていったものの、ハーフタイムで交代。ほろ苦いデビュー戦となった。

 なお、この栃木戦は、JリーグのYouTubeで配信され、7月14日時点での再生回数は103万超。またGOALインドネシアのFaceBookでも配信を行ったが、同時視聴者数は1.5万人、延べ視聴数は22万8千を数えた。

 インタビューであらためて自身の特徴を尋ねると「スローインとFK、運動量」という答えが返ってきた。しかし、「もっともっとつきつめていかなくてはいけない」と自身の現在地を自覚する。

「目標はより良いプレーヤーになって、向上し続けることです。まずは、東京ヴェルディでレギュラーを獲得すること。そのために一生懸命頑張ります」

 アルハンは、インドネシア代表として、6月のアジアカップ2023最終予選でも3試合に出場し、07年以来となる本大会出場に貢献している。ガルーダの国から来た若き大スター・アルハン。インドネシアの人々の思いも背負いながら、日々の練習に励んでいく。

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