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ペナルティエリアの攻略+守備。先を行く川崎Fの黄金パターンを名古屋は歩めるか?

■ボールタッチ数がわずか6回

 前半だけで5得点。名古屋の記録を遡ると、2014年の天皇杯2回戦トヨタ蹴球団との試合で前半6得点(最終的には12-0)という記録があるが、プロ同士の公式戦では過去最多得点だった(手元集計)。相手の運動量が落ちた後半に5得点という試合は2018年にあるものの、前半からこれだけ得点が決まった試合は珍しい。

 多くのサポーターが沸きに沸いたゴールラッシュ。しかし、わずか1カ月前にはこんなデータがあった。

 “名古屋は敵陣ペナルティエリア内でのボールタッチ数がわずか6回”

以下に続く

 これは第4節・セレッソ大阪戦(2-0)でのデータだ。当然のことながら、敵のペナルティエリア内でプレーできれば得点の確率が高くなる。たった6回しか触らずに勝利を得た事実も驚異的なのだが、浦和戦での6ゴールを見ると、すべてのシュートがペナルティエリア内から放たれている。高い確率でゴールを決められた要因と言えるだろう。

 イタリアでは“ウノゼロ(1-0)が最も美しい”と言われるように、サッカーは得点が少ない競技の代表格。大量得点となるのは相手のディフェンスに何らかの問題がある場合や、冒頭の天皇杯のように実力差が大き過ぎる場合がある。今回は前者に起因すると思われるが、こうなる予兆もあった。それはこのところ名古屋の攻撃の色が変わりはじめていたからである。

 開幕からカップ戦を含めて今月1日の柏レイソル戦まで、名古屋は8試合で12得点を挙げていた。その得点を見ると、2月のルヴァンカップ第1節・鹿島アントラーズ戦のマテウスの超絶フリーキックや、7月12日のリーグ戦第4節・C大阪戦の阿部浩之のミドルシュートなど、攻撃は“個”に頼る部分が多かった。アタッキングサードでの連係に課題が多く、ボールがつながらないことがしばしば。相手チームは、個の突破を止めることで攻撃の威力を半減させることができていた。

■最後方からつないだゴールの意味

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 しかし、7月22日の第6節・大分トリニータ戦あたりから流れが変わり始めた。吉田豊の先制点、米本拓司の3点目は、いずれも金崎夢生が前線で体を張って落としたボールを決めたもの。選手同士の共通意識が整理され始めたのかもしれない。

 そしてこの第9節・浦和戦。先制点はランゲラックのキックからだった。金崎が競ったボールが前方にいたマテウスにこぼれ、左にいたガブリエル・シャビエルに、少し溜めを作って大外を回った吉田豊に。吉田はダイレクトで中に入った金崎に預け、金崎はシュート気味のラストパス。それを中央で前田直輝が右足で合わせると、いったんはGKにはじかれたものの、こぼれ球を冷静に押し込んだ。なんと最後方から6人がつないだゴールだった。

 さらにその1分後の2点目も自陣から。丸山、シミッチ、吉田、マテウス、金崎、マテウスと流れるような連係で左サイドを崩し、最後はマテウスのクロスを前田が楽々と押し込んだ。

 連係で得点が挙げられた要因をこの日の6ゴール中5ゴールに絡んだガブリエル・シャビエルは「今シーズンから加入した選手もいるが、以前から在籍している選手も多く、みんながお互いの特長を知っている。その上で一人ひとりが高い意識をもっていいトレーニングをした結果だと思う」と答えている。

 チームの連係は一朝一夕にはできない。名古屋の主だった選手の今季の移籍は、和泉竜司(→鹿島)、エドゥアルド・ネット(契約解除)とジョー(→コリンチャンス)くらいで、主力のほとんどが残留した。

 その選手たちは風間八宏前監督に徹底的に技術を叩きこまれた選手ばかり。当時は選手の目を揃えて敵のペナルティエリアを攻略することに主眼が置かれていた。つまり連係プレーはお手の物。

 マッシモ・フィッカデンティ監督に代わって、しばらくは守備戦術を覚えることに頭がいっぱいだったが、その守備のベースが備わってきたところで、ようやく攻撃にもパワーを入れられるようになったのではないか。マッシモ体制になってから封印されていたDF中谷進之介の攻め上がりも浦和戦では見ることができ、場内が大きく沸いた。

 まさにこれはいま黄金期の川崎フロンターレと同じパターン。風間氏がボールを相手に渡さず主導権を握り続ける攻撃サッカーの楽しさを覚え込ませ、後任が守備の意識をプラスする。名古屋の場合は相当に守備意識に針が振れたが、両者の良いところが噛み合えば強くなることは必定だろう。

■ただし、大きな課題も

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 だが、名古屋にはまだ二つの大きな課題がある。まずは第8節・柏戦でのこと。多くの時間でボールを支配し、チャンスを作ったが、結果は今季初の無得点。その原因は端的に言えば司令塔の不在だ。阿部とガブリエル・シャビエルがけがで同時にいなかった。前田もその試合について「柏戦はなかなかうまくいかず、繋がっていないというイメージがあった」と語る。司令塔のどちらかが出ていないと、どうしても繋ぎの面で苦しくなる。逆に浦和戦のシャビエルの大活躍でその課題が浮き彫りになった。

 もう一点は最前線の金崎夢生を欠くことが恐ろしい。シャビエル同様金崎も浦和戦では4ゴールに関わるMVP級の働き。コロナ禍でトレーニングマッチもできなく、ぶっつけ本番で公式戦をこなし始めて1カ月。ようやく周りの選手の特長や動きがつかめてきたように見える。金崎がチームに馴染んだことで攻撃の色が変わってきた。こちらは現在、代わりになる選手が見当たらず、山崎凌吾や他の選手の成長が望まれる。

 昨シーズンも名古屋は序盤から好調だった。そのころ筆者も少し浮かれ気分でいたのだが、元日本代表の秋田豊氏(現・岩手グルージャ盛岡監督)が、「Jリーグは10試合経った頃から変わるから」と釘を刺された。現実にはその言葉の通りになったわけで、まだ油断はしてはいけないと今シーズンは気を引き締めている。とはいえ、このところのパフォーマンスは、この数年苦しんでいる名古屋サポーターにとって“今季こそ復活か”という可能性を感じさせてくれている。今月は今季無敗の川崎F戦が2試合予定されている。それが名古屋にとっての試金石となるだろう。

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