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高校生、中学生、女子。史上初の「3冠」を成し遂げたセレッソ大阪アカデミー、3カテゴリー制覇の根底にあるもの

この夏、セレッソ大阪アカデミーが偉業を成し遂げた。U-18が第46回日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会で13年ぶり3度目の優勝。U-15が第37回日本クラブユースサッカー選手権(U-15)大会で初優勝。そして、女子チームである堺ガールズが第4回日本クラブユース女子サッカー大会(U-18)で初優勝を果たした。

■選手だけではなく指導者も意識改革

 男子の兄弟ダブル優勝は過去にも例があるが、女子も含めた「3冠」は史上初の快挙だった。C大阪は日本サッカー界に新たな歴史を打ち立てた。

 この快進撃の根底にあるものは、「技術の追求」だろう。この方針をより強く打ち出すことになった発端は、昨年1月、風間八宏氏をアカデミーの技術委員長に招聘したことにある。ここで特徴的なのは、選手だけではなく指導者の意識も変える取り組みを実施したこと。カテゴリーを問わず、アカデミー全体を貫く改革に打って出た。

 もちろん、C大阪のアカデミーはこれまでも技術に長けた選手、欧州で活躍する選手を定期的に輩出してきた。長年にわたる多くのスタッフの情熱、努力、クラブとして培ってきた土台もある中で、より「技術」に特化した指導の徹底を打ち出したのだ。

 風間氏とともにC大阪に加わり、昨年からU-18の指導を任された島岡健太監督は、「まだ2年も経っていません。今まで培ってきた歴史、携わってくださった方々の努力に新たな刺激が入り、良い化学反応が起きたと思っています」と継続プラスαの成果だと強調する。

 同時に、長年クラブで育成に携わってきた指導者も変化を実感している。トップチームへ多くの選手を送り出してきた金晃正U-15監督は、昨季U-18のコーチとして島岡監督のもとでエッセンスを学んだ一人でもある。

 「自分自身、今までの経験、知識を一度外して、自分の中に新しいモノを取り入れようと1年間、勉強しました。そのうえで、今年から(U-15の)監督になり、学んできたこと、見てきたことを実際に中学生に指導しています。日々、自分も成長しないといけない気持ちで取り組んでいます」と意識改革について語る。

■この2年で起きた選手たちの変化

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 風間氏の入閣とともに、「技術」に対する定義も細かく変わった。丸山良明アカデミーダイレクターは語る。

 「ボールを操る、体を操る、頭を操る。これを『技術』と定義して、その中で止める、蹴る、運ぶ、受ける、外す、見る・見ない、をより噛み砕き、浸透させています」

 プロ契約を交わしてトップチームでプレーする高校3年生の北野颯太も、昨シーズンの活動を振り返り、「トラップでも、今までなら『止まっていた』って思っている感覚でも『止まっていない』と言われた。今までの『止まった』という概念を覆された」と証言する。

 選手の意識の変化は指導者も感じている。「明らかに変わりました。自主練を見ても、ボールに向き合う時間が増えました」(島岡U-18監督)。

 日高欣弘C大阪堺ガールズ監督は、「風間さんや島岡さんの指導実践により、技術の基準の定義が変わりました。明確になった定義を選手に伝えることで、選手の意識も変わっていきました。『これは止まっている、止まっていない』というように、こだわり始めました」と、この2年で起きた変化について証言する。

 選手、指導者を問わず、全カテゴリーでの技術の向上を図る。目線を揃え、技術の定義を共有するための様々な取り組みを行う中で、大きな武器となっているのがスぺトレだ。スペトレとは、「学年、年齢、性別を問わず、枠を外して行う」(丸山アカデミーダイレクター)スペシャルトレーニングのこと。風間氏はそのメリットについてこう強調する。

 「いつもやっているメンバーではなく、この場に来て全てを選ぶ、技術を共有する。味方でもどんな個性があるのか(その場で)見抜かないといけない。そこで頼りになるのは技術、判断、目。普段では感じられないことを感じられる場所。年下の選手にとってタメになると思われているかもしれないが、年上の選手にとってもタメになる。この選手はどのくらいのスピードで走れるのか、どのくらいのパスを受けられるのかを瞬時に判断しないといけない。全員が全員、うまくなるための場所」

 報道陣に初めて公開された第6回のスペトレでは、小学5年生から高校3年生までの男子、レディース(女子トップチーム)、ガールズの選手も混ざり、4つのグループに分かれてパス回しやシュート練習、ミニゲームを行った。彼ら、彼女らにとっては“非日常”とも言える刺激的な体験であり、普段とは異なる選手たちとコンビネーションを図ることで、繊細な技術を磨く場になっていた。

■目に見える選手個々の技術の向上とその先へ

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 2日、「セレッソ大阪アカデミー クラブユース選手権 3カテゴリー合同優勝記者会見」がリモートで行われた。

 大会を総括した島岡U-18監督は、「様々なチャレンジ」をした大会だったとし、「大会中、クラブが提携するブラジルのブラガンチーノへ高3の木下慎之輔を練習参加に送りました。指導者の育成という側面から、今大会は相澤貴志GKコーチが指揮を執りました。チャレンジもしつつ、優勝という結果を勝ち取ることができて嬉しく思います」と結果への手応えを口にする。

 また、金U-15監督は、「日々取り組んでいる技術をどれだけ発揮できるかにチャレンジしようと臨んだ中で、選手たちは大会を通して成長してくれました」と振り返る。日高堺ガールズ監督は「試合を重ねていくごとに連動性や選手の主体性が上がり、チームとして一つになりました。それが結果として優勝につながりました」と選手たちの成長を語る。

 同時に3監督とも、課題にも言及している。「大会を通してチームとしてボールを持つ時間は増えていきましたが、個人に目を向けるとまだまだ足りない部分も見えました」(島岡U-18監督)、「技術面でのミスはまだまだ多い。もっとやっていかないといけない部分もさらに明確になりました。これからも個人に目を向けてトレーニングを積んでいきたい」(金U-15監督)、「技術や判断の向上はもっと必要だと感じました」(日高監督)。

 総括した丸山ダイレクターは、「優勝という成果が出たことは嬉しいですし、新しい取り組みを浸透させる上で、目に見える結果を残すことはクラブ内外に大事」としながら、「本当の意味での我々の勝利はもっと先にある」と話す。

 今大会も含めて各カテゴリーの試合を見れば明らかなように、選手個々の「止める・蹴る」を中心としたつなぐ技術、相手を外す技術は高まっている。

 「『止める、蹴る、運ぶ、受ける、外す、見る・見ない』自体が目的になってしまうのではなく、何のために、いつ、どうやって技術を使うのか。そこは選手、スタッフの頭の中も整理され始めている」と丸山ダイレクターは一定の成果を認める。ただし、「まだまだ浸透していない。それは、自分たち自身の技術に対する尺度が変わったから」とも強調する。

 「技術の追求に際限はない」を合言葉に、「今まで見たことのない唯一無二の選手」を生み出す目標へ。史上初の三冠に満足することなく、桜のアカデミースタッフ、指導者、選手たちの飽くなき挑戦は続いていく。

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