2021-10-19-j.league supporter(C)J.LEAGUE

Jリーグ「ホームタウン」の理念は変更なし。ただし、時代に応じたマーケティングの議論は進める

■コロナ禍におけるビジョンの見直し

Jリーグは19日、ホームタウンと活動区域外におけるマーケティング活動のガイドラインに関するブリーフィングをオンラインで実施。Jリーグ木村正明専務理事と出井宏明パートナー・放映事業本部本部長が出席した。

17日に「Jリーグが来季から事実上のホームタウン制度の撤廃を検討している」との一部報道がなされた。ここでは、ホームタウン制度の撤廃、それに伴う地方クラブによる首都圏での試合開催・育成組織の活動、また、クラブ名のネーミングライツの検討等が報じられていた。これを受けてJリーグは同日、村井満チェアマンが即座に完全否定する声明を発表していた。

19日のブリーフィングでは冒頭、木村専務理事がこの経緯を説明。長引くコロナ禍により、4月の理事会後から「2030ビジョン(Jリーグが2030年に実現したいビジョン)」の見直しを進めてきているが、この「適時開示が不十分」で先の報道に至ったという。

ビジョンの見直しに関しては、ここまで半年にわたって議論を重ね、「13の打ち手がでてきた。打ち手は白・灰色・黒で整理し、白はすぐ検討しようというもの、灰色は検討することを検討しようというもの、黒は理念や活動方針の変更が必要になるため検討しないというものとした」とする。

その中で「ホームタウンの規制緩和は灰色で『検討することを検討する』というステイタスだった」と説明した。

大前提としてJリーグは「理念にある豊かなスポーツ文化の振興、国民の心身への健康への寄与を謳っており、それを具現化したものが規約、定款、百年構想になる」とする。規約の第24条に[Jリーグのホームタウン]があり、木村専務理事は「地域密着を標榜して活動を進めてきた。これら理念を具現化している規約、活動方針に一切の変更はございません」とあらためて強調した。

ただし、「時代に合わせたマーケティング」についての議論は行われているという。これはグッズのオンライン販売、スクール活動の定義などとなるが、「(Jリーグ内の)規約より国内法が優先されるのではないかという議論もあった」とする。

■地域という概念を今一度考える

これら詳細について、出井本部長が議論に使用する資料をもとに補足。デジタル化が加速する中で、「WebやSNSといったデジタルを使ったマーケティング。地域という概念を今一度考える必要があるのではというところが議論のスタートです」とする。

事業マーケティングの一例として、ECサイトがここまで発展している中での制限されている「物販販売エリアの考え方」を挙げる。加えて「人の流動化」といった時代環境の変化もある。

「人が流動化するとクラブのファンベースも多様化します。JリーグIDに登録されている方を見ると、少ないクラブで約3割、多いところでは75%くらいがそのクラブのホームタウンがある都道府県以外に居住されている。野球ですと広島県民会が東京にあり、熱烈にカープを応援している。そういったことがJリーグでも出てきている」

「東京に住んでいるコンサドーレ(札幌)のファン・サポーターが東京に住んでいるがゆえに、情報の提供やイベントの機会が得られないといった不要な選択の制限を与えることは避けていく」

また、「地域に閉じない活動としての地域貢献」という観点での議論もある。例えば東京には、各都道府県のアンテナショップがあるが、そこでクラブの商品を販売することは、「ホームタウンの課題解決のなかで、クラブとして一助ができる、これも考え方の一つ」だと言える。

そして出井本部長は最後にあらためて、「地域とともにあるJリーグに価値を感じている。思想の原点は大事にしながら、時代に合わせてマーケティングの観点においても時代に合わせていくことが大切」と結んだ。

(参考:Jリーグ資料)
【ホームタウン・ホームタウン以外の地域での事業活動の考え方】

1.クラブはホームタウンにおいて、地域社会と一体となったクラブ作り(社会貢献活動を含む)を行い、サッカーをはじめとするスポーツの普及および振興に努め、これに必要な事業活動を行う
2.その上で、ホームタウン以外での事業活動(協賛営業・商品化事業・プロモーション、各種イベント、サッカークリニックの実施など)に関して、実施を希望するクラブの実施地域は制限されない。
3.実施の検討に当たっては
「共創&競争(クラブ双方/リーグ全体の成長)」
「サービス提供先視点での活動(顧客=企業/自治体/消費者)」
の思想を踏まえた戦略設計を意識、適宜、クラブ間で必要なコミュニケーションを行う。

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