■日本にチームを招くのは難しい
10月1日、日本代表の欧州遠征メンバーが発表となった。昨年12月に行われたEAFF E-1サッカー選手権(東アジア選手権)以来の活動であり、欧州組に関しては昨年11月のW杯予選とキリンチャレンジカップ以来の招集である。
——とは言ったものの、今回のラインナップには欧州組も含まれているというより、欧州組しか含まれていない。もっと言ってしまうと、「西欧組」に限定しての招集となった。背景にあるのは言うまでもなく、大変に忌々しい新型コロナウイルスである。
新型コロナウイルスの惨禍によって国際試合は軒並み中止や延期を強いられ、日本代表の活動も停止を余儀なくされた。この10月には本来ワールドカップ予選が組まれていたのだが、それも実施されないこととなった。
一方で、来年3月のW杯予選については今のところ実施する方向で話が進んでおり、そこでぶっつけ本番というわけにもいかない。そしてFIFA(国際サッカー連盟)は国際親善試合の開催そのものを禁じているわけではない。反町康治技術委員長は「いま世界から日本にチームを招くのは難しい」という現状を踏まえつつ、欧州での代表戦開催を模索してきた。
ただ、欧州各国はこの時期にネーションズリーグ(欧州の代表が行う新しい枠組みのリーグ戦)の試合が組まれており、親善試合を組むのは困難。「やるからには強いチームを」と望む中で、アフリカの2カ国との対戦が実現した。開催地はオランダのユトレヒト。「ホテルの別館のようなところを貸し切る」(反町委員長)形で、使用するスタジアムと練習場も一つに限り、万全の感染対策を施すことで各方面から理解を得て、今回の代表戦開催に至った。
■飽和状態にある2列目
(C)Kenichi Araiしかし、厳しい感染対策を行いながら過密日程でスケジュールを消化しているJリーグの協力を仰ぐのは容易ではなく、また欧州へ遠征した選手は帰国後に2週間の自主待機が必要となってしまい、大幅に所属チームでの試合出場機会を制限されることになってしまう。このため、Jリーグ組の欧州遠征参加は元より困難だった。
またオランダへの感染対策のための入国制限がある関係で、東欧のロシアでプレーするMF橋本拳人(ロストフ)、セルビアのFW浅野拓磨(パルチザン)といった選手は招集できず。欧州組といっても、「西欧組」での構成になった。それでも合計25人を選出し、なお選外の選手たちがいるほどだから、いかに現代の欧州サッカー界に多くの日本人選手が進出しているか分かるというものだろう。
常連組で選外になった主な選手としては、チーム練習への合流が遅れていたMF中島翔哉(ポルト)がいるが、これについてはコンディションを考えれば仕方ないところだろう。実績のある選手では、MF乾貴士(エイバル)の名前も挙がるところだが、森保監督もオンライン会見でこの点を問われ、「乾だけでなく、もっと多くの選手を選考したかった。その中でポジションのバランス、総合的に考えての選考」と答えていたが、2列目は大量7名が選ばれていて飽和状態に近かった。
■20歳の菅原初選出の理由
🄫Kenichi Araiまたもう一つ見逃せないのが五輪世代とのバランスだ。東京五輪は、森保監督にとって来年のW杯予選と並ぶ大目標。五輪世代単独での代表活動が現実的に難しい中で、A代表での活動を通じて大会への準備も進めていく必要がある。
DFに長友佑都(マルセイユ)、そしてFWに岡崎慎司(ウエスカ)とベテラン勢をチョイスしていることからも分かるように、年齢を基準に選手を排除しているわけではないが、五輪世代の選手も一定数選び、来年の五輪本番への備えも始めたかったというのも本音ではないか。この狙いは今回の遠征に、横内昭展コーチ、川口能活GKコーチといった五輪代表のスタッフ陣が含まれていることからもうかがえる。
完全な初選出となったのはDF菅原由勢(AZ)だが、指揮官が「ヨーロッパ組でチームを編成するという中で、将来A代表に十分絡んでくるであろうという期待も込めて招集しています」と述べたように、今後の期待枠としての選出という意味合いがあるのはもちろん、東京五輪に向けての選考という一面も含まれているのではないかと予想する。
テレビ中継の予定も固まり、久々の代表戦とあって多くの耳目を集めることになりそうで、反町委員長も「当然ながら代表ですので、これから始まるであろう長い予選に繋がるものを見せてくれることを期待している。それは内容であるし、結果でもある。両方を求められるのがこの仕事」と意気込む。
森保監督もまた、「勝つことによって応援してくださる方々に笑顔になっていただく、子どもたちに笑顔になってもらえる、応援してくださるすべての方々に希望を持ってもらえるような試合にしたい」と抱負を語ったが、実際のところ1年のブランクは大きく、どんな試合になるのか指揮官も予想し切れていないところはありそうだ。
1年近い沈黙を経て、極めてイレギュラーな形ながら、日本代表の活動が再開される。これほど蓋を開けてみるまで中身の予想がつかない代表戦も珍しいが、来年のW杯予選、あるいは東京五輪のことを思うと、時間的な猶予はあるようでいて、それほど残されてもいない。カメルーンとコートジボワールというアフリカの強国を向こうに回し、来年以降に向けての「結果と内容」を追求することとなる。
文=川端暁彦/写真=新井賢一
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