Goal.com
ライブ
20210528_japan_itakura_minaminoKenichi Arai

A代表と五輪代表の統合。W杯最終予選に臨む森保ジャパン、そのメリットと2つの不安要素

■1チーム2カテゴリーでの強化

20200803_japanU-24_vs ESP©Getty Images

 二つの“森保ジャパン”が統合され、一つの森保ジャパンが誕生する。東京五輪が終幕し、W杯最終予選を迎えるに当たって日本代表に起こる最大の変化はこの1点にある。

 自国開催での五輪というビッグイベントを前にして、日本サッカー協会はA代表と五輪代表の監督を兼任させるという選択肢を採用した。掲げたのは「1チーム2カテゴリー」というコンセプト。A代表と五輪代表を、戦うカテゴリーこそ違うものの、垣根なく行き来できる「1チーム」と定義して強化を進めてきた。

 東京五輪ではA代表のDF吉田麻也、酒井宏樹、MF遠藤航の3選手がオーバーエイジ選手として五輪チームへと合流。五輪世代ながら専らA代表で活動してきていたDF冨安健洋のような選手も五輪チームへ加わっているが、その移行がかなりスムーズに推移したのは、二つのカテゴリを垣根なく活動させ、一人の監督に統率させるという大方針があったからこそだった。

 これは東京五輪という大会を戦うことを念頭に置いた枠組みではあるのだが、もう一つの意味付けがある。延期以前の日程から五輪直後にW杯最終予選が始まるという流れは既定路線だった。五輪に向けてのチーム強化を行いながら、五輪世代の選手たちをA代表へと引き上げて高いレベルの経験を積ませて上の年代に馴染ませておいたのは、この五輪から最終予選への流れを違和感なく進められるという点でも大きな意味を持つ。

■「A代表初体験」はGK谷のみ

20210806?japanU-24_kosei Tani©Getty Images

「五輪からA代表にという部分では、特にディフェンスラインはオーバーエイジでA代表の常連選手たちが五輪代表に加わってくれていた。そういった意味では五輪代表のメンバーをそのままA代表のほうに移行できる」(森保一監督)

 26日に行われたW杯最終予選に向けたメンバー発表記者会見で、森保監督はこう語っている。実際、五輪代表のレギュラー4バック、つまり酒井、吉田、冨安、そして中山雄太はそのまま選ばれており、これが先発オーダーでも特に違和感はない。大半の選手が欧州組となっている現在の日本代表は、最終予選前といえども全員が揃って戦術的な練習ができるのは多くて2回だけ。そういう意味で、五輪という修羅場を共にくぐってきた選手たちをそのまま使えるのは大きなメリットだ。

 五輪代表からは他にGK谷晃生、CBとボランチを兼務する板倉滉、オーバーエイジのボランチだった遠藤、そして二列目の看板選手である堂安律と久保建英が招集されているが、このうち「A代表初体験」なのは谷だけで、その谷にしても最終ラインの中心選手たちとは五輪で6試合の真剣勝負経験を共有しているのだから、もし出場することになっても連係面での不安はない。同じ監督なのだから戦術を理解するといった過程もすっ飛ばすことが可能であり、この移行において兼任監督のメリットが大きく出ると言えるだろう。

 一方、招集を回避した選手もいる。森保監督は具体的な名前は伏せつつ、「本人のコンディションであったり、日常のクラブでのことも考えて、それが本人のためにもなり、日本のサッカーのためにも後々なってくるし、クラブのためにもなる。そういう判断をして今回の選考につなげたところもあります」と述べたが、これは恐らく五輪代表の中心選手であったMF田中碧についての言及だろう。川崎フロンターレからドイツ2部のデュッセルドルフへと籍を移したばかりで、しかも獲得早々ながら五輪への招集も協力してくれたという借りもあり、配慮する形で招集回避となった。ただ、彼も今後リストに入ってくるはずだ。

■その中での不安要素は2つ

20210607_japan_furuhashi(C)Kenichi Arai

 一方、今回の不安要素として挙げられるのは2点ほどありそうだ。

 第一には日程面。9月7日の中国戦がコロナ禍の影響から中立地カタールでの開催となったため、移動の負荷が大きくなってしまった。2日に大阪でオマーンとの初戦を戦ってから、同日深夜の便で空路移動して中東のカタールへ。「時差もあるし、今日のカタールは40℃あると聞いている」(反町康治技術委員長)という環境面へ適応した上で戦わなければいけない。相手の中国は2日の試合もカタールで戦っているため環境適応は万全の状態と思われ、日本にとって不利な要素だ。

 第二には所属クラブでの状況が不定の選手たちがいることだ。欧州の移籍期限は8月31日まで残されており、「現段階で何人かはもしかしたら(移籍)の可能性がある」(反町技術委員長)状態にある。具体的には冨安、堂安、そして現在は無所属になっている長友といった選手たちだろうが、実戦から少し離れてしまっている選手がいる点も含め、ここはやや不安なところである。

 また移籍組ではスコットランドへ渡ったFW古橋亨梧が絶好調だが、欧州から日本へ移動して試合をするというのはまた別種の試練であるため、過去の同じようなケースを思い出すと、初めての経験となる中での調整には少し苦労するかもしれない。

「最終予選は2次予選とまるで違う」と反町技術委員長が言ったように、相手のレベルも違えば、緊張感も違う。「出て当然、勝って当然」と観られる中での戦いとなるが、少々の戦力差など試合の中でひっくり返るのがサッカーというスポーツだ。さまざまな制限のある中での心身のコンディショニングと、限られた練習時間の中でのブラッシュアップを経て、いろいろな意味で隙のない試合を続けていく必要がある。

広告
0