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サッカー日本代表モンゴル戦。韓国に圧勝後の「勝って当たり前」の中で試されるもの/予想スタメン

急速な経済発展を続けるモンゴルは、進取の精神を持ってサッカーの強化を進めている。FIFAランキングは日本が27位、モンゴルは190位とその差は歴然としているが、気迫を持って臨んだ日韓戦で圧勝した後の一戦でもある。そんな中でチームに求められるものとは何か。(文=川端暁彦/写真=高須力)

■強烈なインパクトのあった国・モンゴル

20210330-japan11-mongolia©Goal

 奇縁があり、モンゴルには過去2度行っている。

 2015年に行われたAFC U-16選手権予選で初訪問(久保建英/ヘタフェや菅原由勢/AZ、瀬古歩夢/セレッソ大阪、谷晃生/湘南ベルマーレらが参加)。そのときは「モンゴルに来るのはこれが最後だな」と思っていたものだが、2年後のAFC U-19選手権予選(田川亨介/FC東京、橋岡大樹/シントトロイデン、齊籐未月/、郷家友太/ヴィッセル神戸らが参加)で再び日本はモンゴルと同グループとなり、そしてまたしてもモンゴルが開催国となったために再訪することとなった。

 仕事柄、“アウェイ”の経験は相応に積んできたのだが、モンゴルはその中でもかなり強烈なインパクトのあった国で、街ですれ違う人の体格が男女問わず軒並み“ごんぶと”なのに驚いたし、運転の荒っぽさは間違いなく世界トップレベルで、「これがかつて世界を制した騎馬民族のドライビングスタイルか!」と恐怖したものである(タクシーが実質存在せず、道行く普通の車を止めて交渉するスタイルなのも斬新だった)。

 その意味において、A代表で“モンゴルアウェイ”が予定されていたときは、記者やサポーターの皆さんに対して多少なりとも「旅の智恵」で貢献できるかなと思っていたのだが、コロナ禍の影響を受けてモンゴルが自国での開催を断念。日本開催のモンゴルホームゲームという異例の体制で、フクダ電子アリーナを舞台に行われる形となった。

■大相撲を通じてお馴染みの強さと闘志

 1度目と訪問と2度目の訪問の間にはわずか2年しかないのだが、新しい巨大なビルが誕生していたりといったギャップがあり、急激な速度で発展している国ならではのエネルギーも強烈に感じられた。これはサッカーも同じで、急速な経済発展とともに、日本人指導者や日本人選手も数多く進出するようになっている。

 2015年に対戦したU-15モンゴル代表は、実質「ウランバートル選抜」のような構成だったし、まだまだ全国的な選手発掘システムや教育の仕組みも整ってはいなかった。ただ、当時の主将だったガンバヤルが現在ハンガリーのプスカシュ・アカデーミアでプレーしているように、あるいは外国人指導者を積極起用しているように、進取の精神をもった強化を進めている。

 実際問題として、今回のW杯予選で対戦するモンゴル代表が大きな脅威となる可能性は低いと思っているが、モンゴルサッカーのポテンシャル自体は決して低くない。彼らの足腰の強さとファイティングスピリットは大相撲を通じてお馴染みだが、技術・戦術面に関しても以前より格段の向上があるのは間違いない。それほど遠くない未来において、日本とモンゴルの対戦は、もう少し違った構図の中で行われるのではないかと思っている。

 日韓戦で3−0と圧勝した日本代表にとってみると、モンゴルとの対戦にはある種のギャップがつきまとうものになる。気の抜けたモードで試合に入れば、思わぬ事態も招きかねない。森保一監督は「大きく韓国戦からメンバーを代えようとは思っていない」「勝って当たり前と思われるチームと対戦することほど難しいものはない」と強調したのは、そうした緩みが出ることを警戒してのものでもあるだろう。

 戦術的な部分で後手に回るような展開は想像しづらいが、気迫の部分での不安要素はある。進境著しい新興国のモンゴルが、成長の手応えを掴むために、チャレンジャースピリットをもって向かってくるのだから、心理面で後手に回りかねない上に、韓国戦で得たポジティブな評価も吹き飛びかねない。

■最終予選で戦える選手かどうかの見極め

20210325-japan-korea-ogawa-wakizaka©Tsutomu Takasu「試合を見ている方に『韓国戦では魂を感じたけど、モンゴル戦ではダメだったよね』ではなく、『どんな試合でもやるべきことをやれるんだ』ということを感じてもらい、見てくださった方々が『自分のことをしっかりやって頑張ろう』と思ってもらえるような試合にしたい」

 指揮官がそうした精神面を強調する言葉を繰り返したのは、過去の経験からこの試合の難しさが痛いほど分かっているからだろう。

 ただし、である。日本代表が集まって試合をする機会というのはそうそうあるものではなく、実際に次の招集機会は予定どおりに行えたとしても3カ月も先の話となる。単に「勝つだけ」の試合にするのではなく、新たな実りも必要だ。今回で言えば、新たに呼んだ選手たちにさらなるチャンスを与える余地はあるだろう。

「モンゴル戦に向けて8人の“初代表”、10人の“初招集”選手に来てもらっている。スペシャルなもの、特長を持っているというのは練習でも見ることができた。特別な試合、プレッシャーのかかる試合で使っても大丈夫だと思わされた。プレッシャーのかかる試合を経験することで選手は成長できると思う。状況を見て経験値を上げてもらえるようにできたらと思っている」(森保監督)

 左サイドバックの佐々木翔(サンフレッチェ広島)が足の痛みを訴えていることもあり、DF小川諒也(FC東京)の初先発は濃厚なほか、その他のポジションでも新たにチャンスを得る選手が出て来そうな情勢だ。「勝って当たり前の試合は難しい」という森保監督の言葉はまさにそのとおりで、相手のモチベーションは確実に高い。しかしだからこそ、初招集の選手たちが「最終予選で起用できるかどうか」を見極める場にもなるだろう。

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