日本代表は11日、2026年ワールドカップ(W杯)アジア最終予選第3節でサウジアラビア代表とアウェイのキング・アブドゥッラー・スポーツシティ・スタジアムで対戦する。同国代表の状況、鬼門突破へのポイントは?【取材・文=林遼平】
■最高のスタートを切ったが、まだ何かを掴み取ったわけではない
Getty Images日本代表は9月に開幕したアジア最終予選で最高のスタートを切った。
開幕前は前回大会が厳しい幕開けだっただけに心配の声も上がっていたのだが、蓋を開けてみれば、中国(○7-0)、バーレーン(○5-0)との連戦はどちらも大量得点で勝利。それも、より難しい試合と考えられていた敵地でのバーレーン戦を5得点で乗り切ったことで、現在のチームの強さが如実に表れる結果となった。
このまま連勝を続けてW杯の出場権獲得へ。そう考える人も決して少なくはないだろう。実際に2試合で12得点0失点という数字は大きなインパクトがあり、今後の相手にも勝利を続けていきそうな雰囲気さえ漂っている。
だが、アジアの戦いは「そんなに甘いものではない」(堂安律)。「過去の勝利はこれからの勝利を約束してくれるものではない。これまで通り、一戦一戦勝利を目指して最善の準備をする。そしてチーム一丸となって全力で戦い抜くことをチーム全体で共有して戦いに挑みたい」とは森保一監督の言葉。連勝スタートを切ろうが、結局のところまだ何かを掴み取ったわけではない。目指すべき場所にたどり着くためにも、もう一度、気を引き締めていく必要があるだろう。
■史上初勝利なるか?サウジはマンチーニの求心力低下&怪我人続出
(C)GOAL特に今回、敵地で迎えるサウジアラビア戦はこれまで以上に警戒が必要だ。もともと日本は、サッカー史上、一度もジッダで勝利を手にすることができておらず、まさに”鬼門”と言えるスタジアムでの対戦となる。ピッチ上はすり鉢状の形状ゆえに風の通りが悪く厳しい暑さが待ち受け、それに加えてスタンドには6万人以上のホームサポーターが集結。異様な雰囲気で日本に圧力をかけてくることは間違いない。
そういう雰囲気に呑まれてしまっては相手の思うツボ。チームとしていかに落ち着いた試合運びができるかが、サウジアラビア戦のポイントになるはずだ。
「最初は自分たちのしたいことや今まで用意してきたことというよりも、本当に呑まれないこと、受け身にならないことを重視しないといけない。そこからまず試合に入るべきだと思う。僕たちがボールを仮に持ちたいとなったとしても、最初はある程度、大胆なサッカーを強いられると思うし、球際やセカンドみたいな根本的な部分、デュエルで勝っていけるかがより自分たちにとってのアドバンテージに変わっていくと思う。仮にボールを持たれても、相手の狙いをちゃんと見ることが大事だと思います」(守田英正)
ただ今回戦う選手たちからは、環境への適応に対する意見はあっても過去のデータに対する不安の声は聞こえてこない。久保建英は「そんなちっぽけなことを見ている選手はいない」と言い切り、中村敬斗も「全然関係ないと思う。選手も違うし、やってるサッカーも全然違う」と表現。選手一人ひとりが難しい環境であることを理解した上で、”今の自分たちは違う”という明確な意思を示している。
その上、サウジアラビアは近年、国内リーグに外国籍のスター選手を世界中からかき集めたため自国選手の出場機会が減少。それによるクオリティの低下が囁かれている。また、結果がなかなか伴わないことでマンチーニ監督の求心力が落ち、今回は怪我人も続出。相手がベストメンバーを揃えることができない状況を踏まえても、日本に有利な風が吹いていると言っていい。
あとはこういう状況をしっかりと生かし、勝利を手にすることができるか。今後の最終予選を考えても、ここでサウジアラビアを叩くことができればW杯出場に大きく近づくことになる。最大の警戒を持って勝利への活路を開く。敵地・サウジアラビアで、日本にとって重要な一戦が幕を開ける。

