日本代表は15日、2026年ワールドカップ(W杯)アジア最終予選第4節でオーストラリア代表とホーム・埼玉スタジアム2002で対戦する。豪州の監督交代による変化は? 日本代表は主将・遠藤航が不在? 両WBと2シャドーの組み合わせは?【取材・文=河治良幸】
■"完全アウェー"攻略の日本代表、4連勝目指しホーム・豪州戦へ
Getty Images"森保ジャパン"は最終予選の4連勝をかけて、10月シリーズの2試合目となるホームのオーストラリア戦に臨む。11日(日本時間)に行われたサウジアラビア戦は9月シリーズの2試合と同じ[3-4-2-1]で戦い、4バックの相手に対して[5-4-1]のブロックで構える時間と高い位置からボールを奪いに行く時間を使い分けながら、前半に鎌田大地が得点したリードを守り、終盤にはセットプレーから小川航基が豪快にヘッドで決めて突き放した。
"完全アウェー"のタフな環境を戦い抜いての3連勝。これまでになく順調なスタートを切ったが、チームの調子が良いだけでなく、選手間のビジョンの共有も含めて、チームの積み上がりを感じさせるものがある。森保監督は「サウジアラビア戦から長距離移動等々あったが、選手も、チームとしてもいい準備をしてこられている」と語りながらも、これまでの3勝がオーストラリア戦の勝利を約束するものではなく、しっかりと気を引き締めて戦うことの重要性を強調する。
■初白星を手にして日本戦を迎える新生・オーストラリア。警戒すべきポイントは?
Getty Imagesオーストラリアは最終予選でスタートに躓き、9月シリーズはバーレーンに0-1で敗れて、インドネシアには0-0の引き分け。この結果、カタールW杯から2サイクル目だったグラハム・アーノルド前監督が辞任。代わりに就任したトニー・ポポヴィッチ監督は短時間でチームに新たな活力を与えるとともに、システムを[4-2-3-1]から[3-4-2-1]に変更。ホームで中国を相手に先制点を許したが、その後はGKジョー・ガウチを中心にタフな守りを見せながら、攻めてはサイドを起点に攻勢をかける。
クレイグ・グッドウィンのFKからルイス・ミラーがヘッドで決めると、ボランチのジャクソン・アーバインの縦パスからグッドウィンがドルブルで左足のミドルシュートに持ち込んで逆転。最後は途中出場のニシャン・ヴェルピレイが勝負を決する3点目を叩き込み、3-1で最終予選初白星を手にした。基本的なプレー強度は日本が上回るようにも見えるが、局面での強さがあり、ポゼッションを引き続きベースとしながらも、アーノルド前監督の時よりも縦の鋭さを感じる。その意味でも、これまでの3試合より攻守の切り替えが鍵になるか。その意味でも生命線となるのは中盤だ。
■主将・遠藤航が前日練習を欠席…最適なチョイスは田中碧?
Yuki nagao前日会見には守田英正が森保監督と同席し、オーストラリア戦に向けて「アウェーから帰ってきて、サポーターの方々の期待がすごく高まった中でのホームゲームなのでしっかり勝ち切りたい」と語った。登壇者がキャプテンの遠藤航ではなく、守田になった理由について、その時点ではメディアにも知らされていなかったが、直後の公式練習で遠藤だけがピッチに現れず、記者陣も騒然となった。そして冒頭15分間の公開が終了すると、体調不良により不参加となったことが明かされた。
そうなると最大の注目は[3-4-2-1]と予想される中盤で、欠場が見込まれる遠藤に代わり、誰がスタメンで守田とボランチのコンビを組むのか。もうひとつは、強敵のオーストラリアに対して、キャプテン不在のチームで誰がどうリーダーシップを取っていくのか。スタメンの有力候補は田中碧だ。ボランチのスペシャリストであり、新天地のリーズではアンカーも担うなど、守備の強度や中盤の底からの配球という部分で、遠藤に近いタスクを担えるはず。それに加えて田中は「自分にしかできないものを出していくことも大事だと思う」と意欲を示す。チャンスに直結するパスやタイミングの良い飛び出しからの得点力は違いを見せられる部分だろう。
森保監督にとっては鎌田大地を2シャドーではなく、ボランチで起用するプランもあり、サウジアラビア戦ではベンチ外だった藤田譲瑠チマ、万能性の高い旗手怜央も選択肢になってくるが、オーストラリアを相手に守備の強度と安定を確保し、守田がこれまでの3試合で見せてきた流動的な攻撃の関わりを持続するには、元川崎Fの同僚でもある田中とのコンビが最適なチョイスと見られる。
遠藤に代わる、リーダーシップに関しては現在の"森保ジャパン"において、そう大きな不安要素ではないかもしれない。3バックの中央には豊富な経験と統率力を強みとする谷口彰悟がおり、中盤には守田がいる。これまでの3試合に引き続き、右センターバックでスタメンが予想される板倉滉もチームを支えるマインドが強く、ゲームコントロールに優れた一人だ。
"第二次・森保ジャパン"で遠藤が出なかった試合を振り返ると、昨年6月に行われた親善試合のエルサルバドル戦では守田がゲームキャプテンを務めた。二次予選ではミャンマー戦の2試合でピッチに立たなかったが、昨年11月のホームは今回怪我で招集外の中山雄太、今年6月のアウェーは谷口がキャプテンマークを巻いた。おそらく今回も守田か谷口のどちらかになるが、彼らのリーダーシップがよりクローズアップされる試合になりそうだ。
■バリエーション豊富な2シャドー&両WB。伊東純也が最終予選初スタメンか
(C)GOALボランチ以外のポジションはサウジアラビア戦から代わらない可能性もあるが、2シャドーはバリエーションが豊富で、良い意味で森保監督を悩ませているはず。サウジアラビア戦は南野拓実と鎌田大地でスタート、後半スタートに南野が下がり、代わりに堂安律が右ウイングバックから上がって鎌田と2シャドーを組んだ。さらに左ウイングバックから三笘薫がシャドーに上がって堂安とのコンビに。終盤には久保建英と中村敬斗が投入された。さらに旗手や初招集のFW大橋祐紀も候補として考えられるが、オーソドックスなのは中国戦と同じ久保と南野のセットか。もちろん鎌田がサウジアラビア戦に続き、スタメン起用されることも想定しておきたいが、"完全アウェー"だったサウジアラビア戦で前半のみでの交代となった南野と数分しかプレーしていない久保であれば、フレッシュに稼働してくれるだろう。
左右ウイングバックも難しいが、右ウイングバックはサウジアラビア戦で堂安律に消耗が見られたので、そろそろ復帰4戦目となる伊東純也をスタートから出してもいいだろう。最終予選の3試合続けて左右ウイングバックが途中交代しており、オーストラリア戦もおそらく、森保監督は90分のフル出場をあまり想定していないだろう。もちろん伊東をゲームチェンジャーとして残しておく効果は高いが、堂安には伊東と違った攻撃面の特長がある。
もし同点で終盤に差し掛かった場合は最低限、勝ち点1を確保するクロージングも現実的なプランになりうる。左には前田大然や中村がおり、前線で大橋を投入するケースも考えられることから、伊東をスタートから出すリスクはそう大きくはない。もちろん、ここで4連勝を決めてしまえば、11月のインドネシア、中国とのアウェー2連戦に向けても大きな前進となるが、試合の流れによって、予選突破のライバルを相手に勝ち点3を与えるリスクを冒してでも決勝点をとりに行くのか、試合をクローズするのかという判断も問われてくる。

